OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

凄すぎた青山ミチ

2009-08-26 12:17:00 | 歌謡曲

ミッチー音頭 / 青山ミチ (ポリドール)

昭和歌謡曲の世界で一時、弘田三枝子のライバル的な存在だったのが、R&B歌謡曲の開拓者と私が密かに思っている青山ミチです。

彼女は日米ハーフで、父親が黒人だった所為でしょうか、本当に粘っこいビートと抜群のリズム感、さらにグッとソウルフルな歌声が最高の魅力でした。

なにしろ昭和37(1962)年にデビューした時から既に「奇跡の13歳」と言われるほど、素晴らしすぎる歌唱力を披露していたのです。もちろんオリジナルの歌謡ヒットと並行して当時の流行だったカパーポップスも十八番で、特に弘田三枝子と競作になった「バケイション」は、甲乙つけがたいほどの強い印象を残しています。

それは持って生まれた資質があってこその快唱なのは言わずもがな! そして本日ご紹介のシングル曲は、そうした魅力が全開となった昭和38(1963)年の大ヒットです。

まず驚くのが、曲タイトルとは完全に遊離している、ゴスペル系ロックンロールなノリの良さでしょう。「音頭」なんて、何処の国の音楽!?! と居直りすら感じさせるグイノリの黒人歌謡グルーヴが強烈です。

もちろんそれは制作者側の思惑どおり、「そ~だ、そ~だよぉ」というコール&レスボスンの調子良さ! エグミの強い青山ミチの「コブシ」の素晴らしさ、さらにパックのブギウギソウルなジャズバンドを強引に引っ張って行くボーカルの勢いに収斂していくのです。

リアルタイムでは小学生だったサイケおやじには、おそらくこれがR&B歌謡の初体験だったはずで、連日のように「そ~だ、そ~だよぉ」と口ずさんでいた日々が確かにありました。

ちなみにそうした黒いフィーリングを彩っているのが、バックの演奏に顕著なジャズロック的なグルーヴで、歴史的には有名なリー・モーガンの「The Sidewinder」がレコーディングされる以前でありながら、間奏のトランペットのアドリブが一瞬ながらリー・モーガン十八番のフレーズを吹いているあたりに、なかなか深いものを感じます。

いゃ~、それが実に快感なんですよっ!

そうだっ! これはジャズロック歌謡なんでしょうねぇ~♪

まさに初期青山ミチの魅力が全開した名曲名唱だと思います。

そして彼女はこの他にも多くの素晴らしい歌を残していますが、洒落た洋楽ムードの弘田三枝子と決定的に違うのは、演歌フィーリングをR&Bのグルーヴで堂々と演じきれるところかもしれません。それは正統派歌謡の「情熱の波止場」や「叱らないで」といった泣き節メロディとせつない歌詞の大ヒット曲を聴けば尚更に顕著だと思います。

自然体のぶる~す衝動が、もう最高♪♪~♪

しかし、それほど素晴らしい歌手でありながら、彼女は残念ながら失踪事件を繰返す等の問題行動でスキャンダラスな話題ばかりが先行し、また彼女自身の素晴らしい肉体美の方ばかりが注目されるという現実の前に、歌手としての活動が鈍りがちになって行きます。

それでも昭和45(1970)年秋には昭和歌謡曲畢生の傑作「雨の夜の恋は終わった」で見事な復帰を飾るのですが……。その後も窃盗、悪いクスリ、失踪……等々の事件を繰り返し、結局フェードアウトして行きました。

そういう破滅型の天才歌手と言ってしまえば、それはあまりにもせつなくなるほど、青山ミチの歌は凄すぎ!! 現在の彼女は罪の償いも終えられたようで、全盛期のレコーディングの幾つかがCD復刻されているのは幸いです。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする