OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

不良になった加山雄三!?

2009-08-13 14:54:55 | 歌謡曲

夜空の星 / 加山雄三 (東芝)

既に何度か書きましたが、昭和40(1965)年の我国は、まさにロック元年というか、アストロノウツベンチャーズが爆発させたエレキブーム、そしていよいよ本格的に猛威をふるい始めたビートルズ台風によって、日本中がシビレていました。

もちろんそれは若者中心の文化ではありますが、社会現象としても、例えばエレキギターの量産、洋楽レコード売上の急増等々、確実に高度成長経済の一翼を担っていたと思います。

ただしエレキという「騒音」を「反体制」として快く思わない大人達は、「エレキは不良」の大合唱! 地域や学校によっては、エレキギターを完全に禁止する条例や校則が出来ていたほどです。

そしてそんな騒動に敢然と立ち向かったのが、加山雄三の主演映画「エレキの若大将」だったのも、象徴的でした。

ご存じのように加山雄三は名優・上原謙のご子息でありますから、育ちもルックスも、また自然体の演技に加え歌も作曲も素晴らしいという東宝の若手スタアで、そのデビューにあたっては、日活の石原裕次郎や小林旭の魅力だった不良性を徹底的に否定する芸風が与えられました。もちろん、その代表作が「若大将シリーズ」における明朗闊達な物語です。

ところが「エレキの若大将」はタイトルどおり、当時は「不良」と烙印を押されていた「エレキ」を真正面から扱ったのですから、たまりません。

物語は京南大学で学ぶ加山雄三が、酒酔い運転で人身事故をやった青大将・田中邦衛の身がわりを引き受けたものの、そんなこんなで保険の適用が受けられなかったのでしょうか、被害弁済に窮し、ついに勝ち抜きエレキ合戦で賞金を稼ぐためにバンドを作るというのが大筋です。ちなみに件の被害者が澄ちゃん=星由里子というのも「お約束」です。

そして順調に勝ち抜き、いよいよ決勝戦! しかし相手は強敵のシャークスで、リーダーのジェリー藤尾は「電気うなぎ」と称されるほどの名手であり、しかも銀行頭取のドラ息子とあって、田中邦衛は手抜きを強要されるのですが……。

こうして本番、加山雄三のバンドが演じるのが、本日ご紹介のシングル曲「夜空の星」というわけです。

前半はインストでビリビリにシビレる演奏が快調にスタート、しかし途中で弱気の虫が出た田中邦衛が、アンプの電源コンセントを外すというバカをやって、バンドは失速! しかしそれをドラムスのブレイクで切り抜け、痛快なブリッジから加山雄三が「僕のゆくぅ~、とこ~ろへ~、ついてぇ~、おいでよぉぉ~~♪」と歌い出す瞬間のエキサイト感度は、もう映画館が揺れ動くほどでした。

ちなみにバンドメンバーには、あの寺内タケシが入っているのですから、演奏が最高なのは当たり前なんですが、映画全体を通しても、ここが前半のクライマックスになっています。

いや~~、実に興奮させられましたねぇ~~♪

まさにカッコイイ! としか言えません!

そしてもちろん、その映画館の帰り道に買ったのが、本日ご紹介のシングル盤というわけですが、ちなみにA面曲の「君といつまでも」は説明不要でしょう。しかし、あえて言えば、この歌は映画の後半で、加山雄三が星由里子に愛の告白をする場面の、もうこれ以上は無いというほどの名曲名唱になっていますから、レコードが売れまくったのもムペなるかな! 

映画そのものも、併映が東宝特撮のひとつの頂点とされる「怪獣大戦争」だったこともあり、劇場作品が斜陽になっていた当時としては驚異的な大ヒットで、本当にお客さんが入れないほど集まりした。なにしろ封切られた12月には「入れ替え制」があったほどで、サイケおやじにしても、今日までにそれを体験したのは、この時以外にありません。

さて、肝心の「夜空の星」ですが、もちろん作曲は加山雄三で、作詞は岩谷時子というゴールデンコンビ♪ 当然ながら映画でのフィルムバージョンとは異なるのが、このシングル盤のテイクです。

いきなりテンションの高いエレキのコード弾きと炸裂するロックのビートをイントロに、爽快にしてノリが素晴らしい加山雄三のボーカル! バックのエレキサウンドも申し分なく、寺内タケシのリードギターもハナからケツまで炸裂しまくっています。特に間奏でのツインリードから後半の本家「Terry-sh」なフレーズの大サービスは、もう最高ですよっ♪♪~♪ またボーカルのバックで執拗に絡んでいく乱れ撃ちのフレーズも本当に凄くて、歌よりエレキっ♪♪~♪

ということで、これはエレキ歌謡の代表的なヒット曲です。一説によれば、このレコードはA面の魅力もあって、当時だけで三百万枚以上売れたとか!?! これで「エレキは不良」だったら、加山雄三は大不良ってことになりますよねぇ。

その所為か否か、翌年のレコード大賞は決定的と言われた「君といつまでも」が、結局は特別賞扱いとなったのも、なんだかなぁ……。

しかし世の中は急速にロック化して行ったというか、このあたりをきっかけにしてグループサウンズのブームがジワジワと広がり、ついにはビートルズの来日があって、完全な昭和元禄へと流れていくのです。

その意味で、「夜空の星」が今もってエレキのスタンダードになっているのも、ご理解願えると思います。もちろんカバーバージョンもベンチャーズを筆頭に多数、発売されているんですよ。

そしてシングル盤も素晴らしいのですが、映画「エレキの若大将」も、ぜひ、ご覧下さいませ。この曲以外にも、「ブラック・サンド・ビーチ」や「ランニング・ドンキー」といった、加山雄三謹製のオリジナルエレキインストに、それこそビリビリにシビレますよ♪♪~♪

コメント (6)
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