■Rock'n' Roll Music / The Beatles (Capitol)
最近はビートルズばっかりというのが、実はサイケおやじの日常です。
というのも、当然ながら9月に予定されているビートルズのリマスターCDの発売が近づいているからに他なりませんが、諸事情からストーンズ命の世界に入っている私にしても、やっぱりビートルズって、良いですねぇ~~~♪ という本音は隠せません。
さて本日ご紹介のアルバムは1976年に発売された編集盤で、アナログLP2枚組の中にはタイトルどおり、ビートルズのロックンロールな曲がテンコ盛り♪♪~♪ 元々は我国の東芝レコードが企画したものと言われていますが、それというのもアルバム「ラバーソウル」の頃から本来はオリジナル仕様に拘っていたビートルズも、1969年秋に締結されたEMIとの再契約で印税等の有利な条件を得るために、1976年以降にはレコード会社側に既発音源の自由な編集権を許可した結果だとか……!?
まあ、それはそれとして、この企画に最初に乗ったのが米国キャピトルというのが、またまた様々な奥の細道へのご案内となるのです。
ところで私は、このアルバムが出ると知って、実際に店頭に並んでいても正直、リアルタイムでは、ほとんど興味がありませんでした。だって未発表曲があるわけでもなし……。ところがそんなある日、友人から電話をもらったのです。
「おい、今度のビートルズの再発2枚組は、違うぞっ!」
「えっ?、あのロックンロールっていう、の?」
「そうだよ、とにかく聴けば吃驚だけど、ステレオのミックスから違うんだ!」
「う~ん」
「言っておくけど、アメリカ盤じゃなきゃ、ダメだかんねっ」
なんていう会話も生々しい記憶ではありますが、とにかく聴かなければ、いかんなぁ~、という気分が高揚したのは確かです。そこで早速、輸入盤屋へ行ってみると、ちょうどバーゲン価格として2枚組が1680円で売っていたのもラッキ~~♪
A-1 Twist And Shout ★▲
A-2 I Saw Her Standing There ★▲
A-3 You Can't Do That ★▲
A-4 I Wanna Be Your Man ★▲
A-5 I Call Your Name ★
A-6 Boys ★▲
A-7 Long Tall Sally ★
B-1 Rock And Roll Music ★
B-2 Slow Down ★
B-3 Kansas City ★
B-4 Money ★
B-5 Bad Boy ★
B-6 Matchbox ★
B-7 Roll Over Beethoven ★▲
C-1 Dizzy Miss Lizzy ★
C-2 Any Time At All ★
C-3 Drive My Car ★▲
C-4 Everybody's Trying To Be My Baby ★
C-5 The Night Before ★
C-6 I'm Down ★
C-7 Revolution ▲
D-1 Back In The USSR ★
D-2 Helter Skelter ★
D-3 Taxman ★
D-4 Got To Get You Into My Life ★
D-5 Hey Bulldog ▲
D-6 Birthday ★
D-7 Get Back (album version) ★
まず針を落としてハッとさせられるのが、音の良さというか、これまでに比べると切れ味鋭く、ダイナミックなロックンロールの醍醐味が尚更に強く感じられます。
しかも全曲がステレオバージョンでの収録で、左右のミックスが既発音源とは逆になっていたり、ミックスをやり直して左右からの音が中央寄りに変えられているトラックさえあるのです。
それは演目につけた「★」が左右逆ミックス、「▲」がリミックスということで、詳細は割愛ご容赦願いたいところですが、その経緯については、ビートルズの専任プロデューサーだったジョージ・マーティンの独断であったというのが、有力な説です。
おそらくリアルタイムでのミックスダウンについては、後年まで納得出来ないものが、この時点での決断に至ったのでしょう。もちろん音質の改修も、同様だと思います。
しかく英国EMIは、こうしたリマスタリングには納得せず、イギリス盤には旧オリジナル音源を使用し、これは日本盤も追従しています。
ところが1980年になって英国EMIは方針転換! 2枚組アルバムを1枚ずつバラ売りする廉価商法に乗じて、アメリカ盤と同じリマスター音源を使っているのですが、なんと我国では、この時も同じスタイルの1枚物アルバムを発売していながら、音源は旧オリジナルマスターを使用するという、実に頑なな姿勢を貫いていますから、要注意!
ということで、今となっては様々な問題を残した編集盤ではありますが、CD時代になって更なるリマスター作業が行われた結果、このアルバムで聴かれたバージョンは無かったことにされてしまいました……。
もちろん公式なCD化もありません。
しかし、これも歴史なんですよねぇ。
ジャケットのビートルズは写真ではなく、イラストが用いられ、中のレーベルもコップに入ったコーラがデザインされた、如何にもアメリカどっぷりの企画仕様が、今となってはホロ苦いような……。もちろんこれは当時、係争中だった裁判沙汰で「アップル」が使えなかった等々の事情によるものです。
銀メッキ系の印刷が施されたジャケットも以外に手に馴染みますし、何よりも音の粒立ちがアナログ盤特有のハートウォームな響きと融合し、ビートルズのパワフルなロック魂がこれほどストレートに楽しめるアルバムも無いでしょう。
選曲は初期から後期まで、一応は年代順を考慮しつつも、その曲の流れの気持良さに拘ったブログラミングも秀逸だと思います。特に「Helter Skelter」が終わって、「Taxman」へと繋がっていくところでは、サイケデリックなムードがスタジオ内で醸し出され、それがクールで熱い当時のロック最先端の凄さと相まって、ビートルズを聴く快感が見事に蘇っています♪♪~♪ ここは何度聴いても、ちょいと感動しますよ。
また初期の歌と演奏ではシャウトと強烈なロックビートの鬩ぎ合いが、メリハリの効いたリマスタリングによって、尚更に鮮やかに楽しめます。しかも中には、これまで気がつかなかったビートルズの演奏の秘密が、あれこれと表出したのも、特筆されるでしょう。
個人的にはリンゴのドラムスが、どうしてこうも気持良いのか!? その一端が感じ取れたことも収穫でした。歌いながら叩きまくる「Boys」のバタバタしたノリが、実はロックンロールのど真ん中ですよ♪♪~♪
それと演奏パートのさりげないアレンジというか、ギターのリフやリズムパターンの斬新なところは、今に至るも古びておらず、やっぱり凄いと思います。
繰り返しになりますが、今後も無かったことにされるアルバムでしょうから、今のうちにゲットしておくことをオススメ致します。
もちろんそれは日本盤ではなく、アメリカ盤ですよっ!! ぜひっ!!!