Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ミステリ・トリックの瑕疵を指摘する文庫解説

2007-07-07 10:14:36 | 読書
大倉崇裕「三人目の幽霊」創元推理文庫 (2007/6)
カバー (こころ美保子) が好みで,駅で予備知識ゼロで買った.意外なひろいもの.

年四回発行の落語専門誌「季刊落語」の編集部の落語に免疫のない新米編集者・間宮緑がワトソン役.この道三十年のベテラン編集長・牧大路がホームズ役.ホームズ役がオールマイティでやや興ざめ.

この設定だから,最初と最後のふたつは寄席を舞台にしている.落語界ってこんなに人間関係が恐ろしいところなの? と思わせるストーリー.まんなかの「三鶯荘奇譚」も落語のネタをうまく消化している.
有名落語のストーリーもその都度簡潔かつ丁寧に紹介している.

もっとも,著者はこの設定をややもてあまし気味らしく,5 つのうち残り 2 つは落語と関係ないミステリ.このうち「崩壊する喫茶店」が,ミステリとしてはいちばん面白かった.これについて,「解説噺」と題する解説 (佳多山大地) が,ネタをばらすばかりか,トリックの瑕疵 (きず) まで指摘している.ただ貶しているのではなく,もっと深読みすれば,もっと優れたミステリだとわかる...と言いたいらしいが,著者も思いつかない拡大解釈だな.
この作に限らず,深く考えればほとんどの作に,特に人間がらみの動機に破綻がある.しかし読み流すだけなら十分楽しめる.

加えてこの手の小説で楽しめるのが,落語家の名前のつけ方に関する著者の苦心.三遊亭とか桂とかは使えないと見えて,ここでは,三鶯亭,松の家,鈴の家などが登場する.
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