Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

宮部みゆき「名もなき毒」

2011-12-18 08:25:59 | 読書
当地をふくむいくつかの地方紙の連載小説の (単行本を経ての) 文庫化.新聞小説らしく,小出しにストーリーが進み,あまりあくどい場面も出てこない.クライマックスの解決が少々あっけない.

最初に殺人事件があり,次に語り手の会社のアルバイト嬢がトラブルメーカーの本性を現す.バイトさんが殺人事件の犯人かと思うと裏切られる.彼女は悪意の塊みたいな人物だが,その性格は誰にでもある一面を増幅誇張したようにも受け取れる.どこにでもありそうな姓名で,全国の同名異人さんたちがかわいそう.

殺人に関しては,語り手はこのひとが毒殺犯と確信し,つぎにそうではないと説得されて納得するが,やっぱり犯人だった...というなりゆきに,あれあれと思った.

この語り手兼探偵役が「ぎゃくたま」という設定でストーリーに幅を保たせている.悪く言えば,紙数を稼いでいる.登場人物ひとりひとりの性格づくりが,純文学的に難解でなく明快だが陳腐に墜ちない.
読んでいて何度か北村薫調だなと感じる瞬間があった.いっしょに短編集を編集したりすると,影響されるのだろうか.

プロの小説家による極上のエンタメ,というのが結論.カバーイラストがいい.
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reading

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