Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

プリンストン高等研究所物語

2014-04-18 08:21:37 | 読書
ジョン・カスティ,寺嶋 英志 訳 (2004/11).

これも古書市でゲットした.小生にとって古書を買うのは読むためであって,蒐集するためではない.最近は新本は書店に出現したかと思うとすぐ消えてしまうのが困る...とは言え,古書が安いのはありがたい.この場合,新本 2310 円のところが 700 円だった.

主な登場人物は,フォン・ノイマン,アインシュタイン,ゲーデル,オッペンハイマー,ストラウス.最後のストラウスは元銀行家で,原子力行政の方向を決めた.タカ派で学者たちとの間に軋轢がある.他にもパウリ,ベーテ,ウィグナー,ボームなど.詩人の T・S・エリオットもちょっと登場.すべて実在の人物だが,そこは小説 (著者によれば novel ではなく fiction) だから,実際のできごとが起こった時間を全部 1946 年春に寄せ集め,話をおもしろくしている.

路上でゲーデルがアインシュタインに教授昇進のために口をきいてくれと口説く場面から始まる.この昇進問題と,ノイマンのコンピュータを研究所に作るか,というふたつの現実的な問題が縦糸だが, 横糸はお茶を飲みながら,あるいはパーティでの物理学者・数学者たちの,知識の限界に関する高邁な哲学 ? 談義.教授昇進の布石としてオッペンハイマーがゲーデルに行わせる一般向け講義,研究所評議会でノイマンがPRの為に語るシミュレーションの可能性等,いかにも実況中継みたいな描写である.
量子論の不確定性を感覚的生理的に受け入れることができないアインシュタインの悩み.物理学者の核兵器への対応,さらにはオッペンハイマー夫人までネタにされている.

訳文は意図的にかもしれないが生硬で,原文を読んでいる気分に浸れる.
原題は The One True Platonic Heaven. この邦題はつまらない.
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