Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

美味しんぼとICRP 基準 : 放射線と鼻血

2014-05-21 07:50:50 | 科学


ビッグコミック スピリッツ (以下 BS と省略) 最新号を買った.研究所と大学では,この手の週刊誌は誰か学生が買って来てくれるという,思えば恵まれた環境だった.
残念ながら,この号の「美味しんぼ」の中身はエピローグ.カットはウェブで拾った先週号の一場面.しばらく見ないうちに山岡と雄山は仲良くなったらしい.

マンガに続いて異例の,10 ページの小さい字ばっかりの「ご批判とご意見」のページ.放射線と鼻血の関係を拾ってみると...

行政や原発賛成派が関係を否定するのは当然だろうが,反対派の安斎育郎氏は鼻血は「後づけバイアス」によるもの,「美味しんぼ」で取り上げた内容は的外れ,とにべもない.原発反対なら取り組むべきはもっと大きい問題とおっしゃる.小出浩章氏は鼻血の可能性がないとは言えないという程度.崎山比早子氏は「わかりません」だが,その後には低戦量リスクについての健全な政府・専門家批判が続く.
谷ヶ崎克馬氏によれば,放射線の健康被害論は ICRP・IAEA 派が大勢を占めているが,事実をありのままに率直に見つめればそうではないと言う.一般論として,鼻血と放射線は因果関係があるとの立場.

ICRP (国際放射線防護委員会) は人体への放射線の影響に基づき,許容線量の基準を決める組織.小生も ICRP 基準に従って教育されて来たし,大学でも講義ではこれを紹介してきた.
BS とは離れるが,かって NHK で ICRP 基準を批判する内容の放送があった.2011年12月28日放映の追跡!真相ファイル「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」である.再放送を! と言いたいが,昨今の情勢では見るなら削除されないうち.金科玉条としてきた基準が,実は御用学者たちが制定したものという,ショッキングな内容だ.内部被曝こそ有害という北海道がんセンター・西尾正道氏の意見もこの延長線上にある.

過去には自民党の議員が当時の民主党政権に,鼻血と放射線との関係をネタに噛み付いたという事実がネットに散見される.

これも BS と離れるが,ネットを漁ったら福島県双葉町で鼻血「有意に多い」調査
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140516-00000005-jct-soci&p=1

という記事に遭遇した.ここにある「学術雑誌」は中地重晴によるもので,一部がhttp://saigaijyouhou.com/blog-entry-2570.htmlに転載されている.居住地と鼻血との関係をオッズ比で判定して有意としているのだが,母集団に対するデータが明らかにされていない.これでは理工系の学術雑誌とは言えない.

記事によれば,調査は岡山大学・津田敏秀氏との共同研究らしい.その津田氏の意見は BS にも登場している.ここで氏は調査についてはひとことも言及していない.マンガと違って軽々しいことは言えないというお立場なんだろう.
ウェブ記事では,双葉町がデータ公開に難色を示しているようにも取れるが.是非ちゃんとした形で調査結果を公開していただきたい.

その津田氏は BS でマンガ中の「福島に住んではいけない」という表現に対し,福島県全域と取られる, 場所を具体化すべきと言っているが,もっともな指摘だ.
16 トンとしては放射線と鼻血は関係がありそうだが,ぽっと福島を訪問した山岡 (あるいはマンガの作者雁屋氏) の鼻血はべつものと思う.カットのマンガのラジカル云々説も一般論としてはあり得るが,山岡には当てはまらないだろう.出ちゃったものは仕方が無いが,やはり後づけバイアスかな.
マンガはちょっと読んだだけで大きなことは言えないが,力作と言えどもピントがぼける音が聞こえるような... しかし,話題になったのは悪いことではあるまい.
コメント (2)
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