Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

オーケストラの音楽史

2015-03-06 08:35:42 | 新音律
パウル ベッカー著, 松村 哲哉訳「オーケストラの音楽史: 大作曲家が追い求めた理想の音楽」白水社 (2013/4).

図書館で借用.ずいぶん厚い本だなぁと思ったが,意外に進んだ.ページの一枚一枚が厚い紙だったせいかもしれない.
1936 年に書かれた本だが,読んでいて古い本という感じは持たなかった.「今や音楽界全体が過去の遺産だけを頼りに活動いているようにみえる」という結論 ? は,2005 年に出版された「西洋音楽史-「クラシック」の黄昏」とほとんど同じだ.クラシックは戦前からずっと黄昏状態にあり,しかも今だに夜を迎えないらしい.

最初の登場人物はハイドンで最後はストラヴィンスキー.ストラヴィンスキーはハーモニーよりもリズムを重視し,弦楽器を放逐したことがあるというくだりで,アメリカの「ダンス音楽」が出てくる.ジャズという言葉は当時はなかったのだろうか ?

原題は単に the Orchestra.各章のタイトルが内容をよく表しているので,目次をコピペすると...

1 前奏曲: オーケストラの楽器の系譜
2 古典派のオーケストラ: ハイドン
3 オペラのオーケストラ: モーツァルト
4 ダイナミックなオーケストラ: ベートーヴェン
5 ロマンティックな幻想のオーケストラ: ウェーバー、シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン
6 ヴィルトゥオーゾ・オーケストラ: ベルリオーズ、マイヤーベーア、リスト
7 宇宙のように壮大なオーケストラ: ワーグナー
8 世紀末のオーケストラ: ブラームス、ブルックナー、マーラー
9 国民的オーケストラ: ヴェルディ、ビゼー、スメタナ、チャイコフスキー、シベリウス
10 「芸術のための芸術」としてのオーケストラ: シュトラウス、ドビュッシー、プッチーニ
11 メカニズムとしてのオーケストラ: シェーンベルク、ストラヴィンスキーと現代

交響曲対オペラのための管弦楽曲,弦楽器対管楽器あるいは金管楽器対木管楽器,ドイツ対フランス,感情的音楽対理性的な音楽,複雑なハーモニー対簡潔なハーモニーといった対立概念が次々に現れる.何人かの作曲家に対して「彼が...をやらなかったのは,技量がなかったためではなく,単に必要を感じなかったからだ」という弁護が書いてある.主張は断定的で,どこを開いてもなかなかの名文が並んでいる.クラシック音楽の本はあまり読まないので,この本に書いてあることを鵜呑みにしてしまいそうだ.

訳がいい.しかし「主題労作」とか「デュナーミク」とかいう語は,音楽の世界では定着しているのだろうが,読んでして抵抗を感じる.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg