小泉武夫,新潮社 (2018/12).
Amazon の内容紹介*****築地の有名マグロ解体人だった五郎が満を持して開店したのは、日本唯一の粗料理専門店。鰤大根、烏賊の腸煮(わたに)、鱶鰭の姿煮……四十年の魚河岸人生で磨かれた名物料理の数々は、訪れる人々の舌を“残すとこなく”口福で満たしていく。粗の魅力に取りつかれた著者が渾身の愛を込めて綴る、涙腺ならぬ「唾液腺崩壊」の人情小説。*****
全6章だが,第1章はイントロ,第6章はアウトロ,3-5章はエピソード集で,ストーリーとしては第2章まで,小説としては起伏がない.登場人物は男性の善人ばかり,主人公の店はまったく順風満帆.女性は,はじめに離婚した相手がラストに登場する程度.
3つのエピソードは,築地移転賛成派と反対派 合同の祭り,粗神様の伝承,そして店の常連の身内流しによるオリジナル・オッペケペ節.
というわけで,メインは小泉センセーの「粗=あら」に関するうんちく.開店前に準備した主人公の備忘録なるレシピ集には368品がリストされていたことになっている.ただやせいくらでも増えそうではある.例えば,肝臓料理として22品とあるが,魚の3種類「皮剥」・「鮟鱇」・「鯛」x 3調理法「和え」・「煮付け」・「焼き」の組み合わせだけでも9種類だ.これに野菜も登場する.
しかし,全部が全部作って美味しいのだろうか.ミステリーのトリックは実現不可能でも,もっともらしければ良いのだが,グルメ小説の場合はどうなんだろう.
「蚊の目玉のスープ」もあります!
後半,せっかく西洋料理の料理長を雇うのだがら,フレンチやイタリアンの粗料理も登場させれば良いのに...
ぼく的には,「粗」という字から「蛆」を連想しがち.星3つ半.
図書館本.