加藤秀俊「九十歳のラブレター」新潮社 (2021/6 文庫 2023/12).
図書館でハードカバーを借用.
*****ある朝、あなたは突然逝った――。小学校の同級生であったあなたと結婚して六十余年、戦争体験、戦後間もなくのアメリカでの新婚生活、京都での家作り、世界中への旅、お互いの老化……たくさんの〈人生の物語〉を共有してきたあなたの死で、ぼくの人生は根底から変わってしまった。老碩学が慟哭を抑えて綴る愛惜の賦。*****
ぼく = 著者 1930-2023 から,あなた = 亡き妻 1930-2019 への手紙という体裁.逝去を発見した朝に始まり,お互いに動員された血のメーデーでの巡り合いから,小学校時代に遡り,あとは時代を下って,「旅路の果て」に至る.
初恋の相手と結ばれるというのは,周りを見渡しても意外に稀有なケース.良妻賢母を絵に描いたようなパートナー.「空襲・戦災・焼死体」が原体験で,そこから脱出したいという願望が,著者がみるところの彼女の人生の主旋律であった.ぼくは 10 近く歳下だがわかるような気がする.
最後の 10 年が,明日は我 (等) が身?
病気がちになり,アクセルとブレーキを間違えて事故を起こしたり.お墓への執着にはちょっと違和感.晩年は妻がややニンチ気味だったように書いてあるが,彼女に言わせれば違うかもしれないな...
こども達のことはほとんど書かれていないが,プライバシーを重んじてだろう.そもそも,こうした本はどこまで包み隠さず書くものだろう.
カバーの陶板はおふたりが,北欧の町の小さな骨董店だかで,あら おもしろい あたしたちみたいじゃない と買ったもの.ずっと食堂の壁にかけてあるのだそうだ.
今 16 トンが住んでいる団地の老人会 (のようなもの) では,J 子のお仲間は J 子より歳下で未亡人で,みな生き生きとしている.この本のように,男性だけが残るのは辛そうだ.
著者の専門は社会学.新書「社会学 - わたしと世間」を読んでみようか.
大学教養では松島静雄先生の講義を受けた.意外におもしろかったという印象はあるが,内容はと言われても,マックス・ウェーバーの名前くらいしか思い浮かばない.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます