3月に亡くなった大西巨人の小説が何かあったはずと,探して
「迷宮」光文社文庫(2000/2)
を発掘.内容を全く記憶していなかったが,読み返したら身につまされるものがあった.著者 79 歳の作品.読む側の年齢が書いた側に追いつきつつあるということだろうか.
「BOOK」データベースより*****
元作家・皆木旅人が謎の死を遂げた。皆木は、寡作ながら作家として高い評価を得ていたが、二十余年前、突如文壇を去っていた。皆木の遠戚・春田大三は、海外旅行から帰国後、初めてその死を知った。遺書が残されてはいたが、どうしても皆木の死が自殺とは思えない春田は、その死の謎を追いはじめた。人類普遍のテーマに挑む、文学ミステリー、現代人必読の書。******
ミステリと思って読みはじめても,全然ミステリらしくない.古今東西の文献 (映画の批評等もある) の引用と,それに対する登場人物の見解が披露されるだけである.読み難いかと言われるとそうでもない.文体に独特のリズムがあるせいだろう.へんてこな読み方をさせる人名がおもしろい.伊阿胡右(これおかひさあき) とか,宜前市也 (よしさきまちや) とかには,モデルがいるのだろう.
叙の章,第1章,第2章,... ときて最後が跋の章.ここでやっとミステリっぽくなる.
以下,ミステリならネタばれになるが,この小説はネタばれの影響は受けそうもないから良いことにする.ボケてもそのことが本人には分からない.このことを恐怖と感じる元作家が,妻に頼んだ嘱託殺人ないし承諾殺人だったという結末.実際のボケ場面が出てこないから,ぜんぜん観念的.その頭でっかちぶりに感心すべき なんだろう.時計のトリックとか,不器用な恋愛小説的な味付けは読者へのサービスだろうか.
ボケることは死ぬための準備,夫婦間ではボケたもの勝ちなどと,気楽に構えている人種には無縁の小説.
知らなかったが,大西巨人氏は晩年 原発容認発言で話題になったそうだ.ウェブで見た限りでは,禅問答的な発言でよくわからない.
「迷宮」光文社文庫(2000/2)
を発掘.内容を全く記憶していなかったが,読み返したら身につまされるものがあった.著者 79 歳の作品.読む側の年齢が書いた側に追いつきつつあるということだろうか.
「BOOK」データベースより*****
元作家・皆木旅人が謎の死を遂げた。皆木は、寡作ながら作家として高い評価を得ていたが、二十余年前、突如文壇を去っていた。皆木の遠戚・春田大三は、海外旅行から帰国後、初めてその死を知った。遺書が残されてはいたが、どうしても皆木の死が自殺とは思えない春田は、その死の謎を追いはじめた。人類普遍のテーマに挑む、文学ミステリー、現代人必読の書。******
ミステリと思って読みはじめても,全然ミステリらしくない.古今東西の文献 (映画の批評等もある) の引用と,それに対する登場人物の見解が披露されるだけである.読み難いかと言われるとそうでもない.文体に独特のリズムがあるせいだろう.へんてこな読み方をさせる人名がおもしろい.伊阿胡右(これおかひさあき) とか,宜前市也 (よしさきまちや) とかには,モデルがいるのだろう.
叙の章,第1章,第2章,... ときて最後が跋の章.ここでやっとミステリっぽくなる.
以下,ミステリならネタばれになるが,この小説はネタばれの影響は受けそうもないから良いことにする.ボケてもそのことが本人には分からない.このことを恐怖と感じる元作家が,妻に頼んだ嘱託殺人ないし承諾殺人だったという結末.実際のボケ場面が出てこないから,ぜんぜん観念的.その頭でっかちぶりに感心すべき なんだろう.時計のトリックとか,不器用な恋愛小説的な味付けは読者へのサービスだろうか.
ボケることは死ぬための準備,夫婦間ではボケたもの勝ちなどと,気楽に構えている人種には無縁の小説.
知らなかったが,大西巨人氏は晩年 原発容認発言で話題になったそうだ.ウェブで見た限りでは,禅問答的な発言でよくわからない.