Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

森進一のソノグラム : 「女のためいき」

2015-03-14 08:07:49 | 新音律


「楽器の音・ヒトの声」にあるのは,森山直太郎さん歌唱のソノグラムだが,もっと個性的な歌手のデータはないのかというコメントをいただいた.Youtube の動画ではたいてい伴奏が邪魔で解析が難しい.

これは森進一さんのデビュー曲「女のためいき」.静止画ではなく本人歌唱の動画も Youtube に存在したが,ダウンロード禁止らしかった.
1分08-11秒「夜が夜が泣いてる 女の ためいき」の「ためい」の部分で一瞬バックがなくなる.以下この部分について記述するが,無伴奏部分という偏ったデータに基づいてことを承知していただきたい.
まずソノグラムである.FFT サイズは 1024,Blackman window



「ためいき」の「た」は話すようにに入り,「め」の後半で音程を徐々に上げ,「いー」と伸ばす.この部分は高域まで整数倍音が顕著.この後 0.2 秒ほど間があって「きー」と続く出だしにも整数倍音が見られるが,すぐに伴奏がかぶる.

音の高さを音名と,対応する平均律での周波数で示すと
 た (Ab) 207Hz
 め (Bb) 233Hz
 ー(Db) 277Hz
 い (Eb) 311Hz
 き(Db) 277Hz
最初の4音を1音ずつサンプルしてスペクトルを見た.周波数分解能を上げるために FFT サイズを 4096 とした.Hamming window,対数目盛り.



ためいきの「た」は雑音ばかりのようで,会話とよく似たソノグラムである.
しかし目盛りを線形に変えると山が3つ見える.
ピークとなるべき周波数は楽譜では Ab だが,ここではその下の F の方が大きい.

つぎの「め」では Bb の整数倍音が出ている.
拡大して注目いただきたいのは,その 1.5 倍上の F の整数倍音.
ひとりデュエットである.
ただしソノグラムで「め」と書き入れたあたりの 0.1 秒ほどしか続かない.

「めー」と伸ばした先の Db と,「い」の Eb は整数倍音が見られ,特に「い」では,ソノグラムで見るように高域まで続いている.まるで声明みたいだ.
「た」を除き音程は正確で,平均律で計算した周波数とぴったりである.

森氏の場合は話すような唱法,整数倍音が10kHz域まで伸びる唱法と,整数倍音が低域にとどまるかわり 10kHz 域までを雑音 ? で満たす唱法を使い分けているようだ.いろいろな音を混ぜるところはジュウシマツ風である.

主旋律に短3度 (た) あるいは完全5度 (い) 離れた音が寄り添うあたりは,超絶技法かも !?
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真面目にふざけた お別れセッション

2015-03-12 08:20:54 | ジャズ
ひとまわり (12年?) 前のジャズ研会長が長崎に移住すると言うので,去る日曜日に,懐かしいボックスでセッション後,イタリアン・レストランへ.

セッションには 3 歳から 73 歳までが参加.めずらしく (しかし当然のことながら) ボーカル中心で,旧会長の個性も相俟っておもしろかった.
Softly とか I'll Remember April とか,普段は楽器だけの曲にもボーカルが入った,季節外れの White Christmas も.Tenessee Waltz をセッションしたのも初めて.「いい日旅立ち」はラテンで,ここでコーラスを重ねて,とか太田和孝さんがいろいろ考えていたので,そのうちライブで聴けるかも.陽水の曲は旧会長とベーシスト氏以外は知らなかったので,スリリングかつ珍妙に展開.ベーシスト氏は失礼ながら,意外に喉がいい! 昔のスラム・スチュワートみたいに,歌いながら弾かれたらいかがだろうか.
主賓は最後はご自分で「贈る言葉」を歌って出て行ったのでした.

アルコールもなしで騒いだ後下見のアマーレで宴会.この代の会員は卒業時点では 4 人だったらしいが,この4人全員を含め,十何人となった.現役大学生のピアニスト氏は「ずいぶん集まったな.人望だなー」と感心していた.
花束贈呈はシナリオでは若い女性が行うはずだったが,「いやっ」と逃げて行ってしまったので,お父さん (写真左) から...となりました.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳥の歌の倍音

2015-03-10 08:19:45 | 新音律


ヒトの歌声は整数倍音を持っている.鳥の声ではどうだろうか?
このウグイスは見ているだけで楽しい.12-15 秒あたりのホーホケキョのソノグラムがこれ.声が高すぎで高域部分はわからないが,整数倍音はみごとである.奇数次しか存在しない!



しかしどの鳥でも,というわけではない.ウグイス (nightingale) をもてはやすのは,ヒトは整数倍音構造を持つと良い声だと,勝手に評価しているだけなんだろう.

次の図は http://youtu.be/SUAN-n719So からいただいたカッコーで,二度鳴いている.単一周波数しかないと言いたいくらいで,整数倍音は存在するけれどかなり弱い.



野鳥ではなく,ペットとして飼われている鳥ではどうだろうか.岡ノ谷一夫「小鳥の歌からヒトの言葉へ」岩波科学ライブラリー (2003/06) によれば,ジュウシマツは成長とともに歌が「上手くなる」という (この本は増補改定版が出ている).数十日おきに採られたソノグラムが掲載されていて,上達の過程がよくわかる.歌が上手くなると整数倍音が現れる.



この動画の Youtube 動画 の6-9 秒から取ったソノグラムには,0.6 秒と 0.8 秒あたりには低音の整数倍音構造, 1.6-21秒にかけては高音の整数倍音構造が見られる.



岡ノ谷先生によれば,ジュウシマツはコシジロキンパラという野生種をペット化したものとのことである.ペットになれば生存競争から解放され,もっぱら異性を引きつけるために声に磨きをかければよい,倍音構造はその成果らしい.もともと自然界でも,歌えば天敵に見付かりやすいし,歌うための神経回路も必要だ.そうしたハンディキャップをものともしない個体は生存力が強い個体だから,メスを惹きつけ,結果として子孫も歌が上手くなる.「ハンディキャップの原理」と「性淘汰のメカニズム」である.
このページにはジュウシマツとコシジロキンパラのソノグラムが並んで載っているが,コシジロキンバイの声には倍音構造はない.野生種が倍音なんか出したら捕食されてしまうのだろう.

文鳥,カナリアなどの声も整数倍音構造を持っているようだ.

ちなみに岡ノ谷先生のご研究の目的は 0.1 秒単位の小鳥の音色の変化のパターンにヒトの言語の起源を探ることである.ジュウシマツは倍音を持つ声を,持たない声と対比させることで,一種の「語彙」として使っているらしい.




疑問その1
Youtube からサンプルした雲雀,カナリヤのソノグラムを取ろうとしたが,録音の帯域が狭すぎるようだ.整数倍音は持っているらしい.
小鳥の大きさを考えれば音が高いのはうなづけるのだが,逆にカッコーの声が低すぎるように思う.

その2
ウグイスを聞いていると,春先は鳴き方が下手くそだが,だんだん上達する.ジュウシマツのようにスペクトルも変化するのだろうか.

その3
ウグイスの喉だけ閉管構造?

同好の士をウェブで探したら
http://www.fssbirding.org.uk/costadelaluz2012trip.htm
に野鳥のソノグラムを2例発見.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

楽器の音 / ヒトの声

2015-03-08 08:18:04 | 新音律
弦楽器・管楽器のスペクトルは整数倍音で構成される.ヒトの声ではどうか? 「倍音」という本もあるのだが,データが豊富とは言えないので,Youtube の音声を測定してみた.



森山直太朗さん歌う「さくら」である.オペラチックではない,すなおな歌い方だ.出だしの「ぼくらは きっと待ってる」の部分のソノグラムすなわちスペクトルの時間変化が下の図であって,整数倍音がきれいに出ている.



違うジャンルのデータも欲しいと思ったら,天台声明 (御懺法講、声明例時から) 大懺悔というのがあった.



下は 10 秒から 21 秒までのソノグラム.



この2例の整数倍音構造は,ヒトの声道も管であって,管楽器と同等であるから生じるのだろう.フォルマントという術語は現代ではもっぱら音声科学でのみ用いられているが,もともとは管楽器の音色を表していたらしい.

ただし倍音構造は,構えて歌うときだけで (歌では母音を引っ張るため?),普通に話すときには現れないらしい.

[

上の会見ビデオの 2-6 秒「後藤謙次さんを殺害したとみられる」の部分のソノグラムはこのようになる.弱い非整数倍音らしきものは見られるが,整数倍音は存在しない.
標本として適当ではないかもしれませんが,他意はありません.



この項続きます.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーケストラの音楽史

2015-03-06 08:35:42 | 新音律
パウル ベッカー著, 松村 哲哉訳「オーケストラの音楽史: 大作曲家が追い求めた理想の音楽」白水社 (2013/4).

図書館で借用.ずいぶん厚い本だなぁと思ったが,意外に進んだ.ページの一枚一枚が厚い紙だったせいかもしれない.
1936 年に書かれた本だが,読んでいて古い本という感じは持たなかった.「今や音楽界全体が過去の遺産だけを頼りに活動いているようにみえる」という結論 ? は,2005 年に出版された「西洋音楽史-「クラシック」の黄昏」とほとんど同じだ.クラシックは戦前からずっと黄昏状態にあり,しかも今だに夜を迎えないらしい.

最初の登場人物はハイドンで最後はストラヴィンスキー.ストラヴィンスキーはハーモニーよりもリズムを重視し,弦楽器を放逐したことがあるというくだりで,アメリカの「ダンス音楽」が出てくる.ジャズという言葉は当時はなかったのだろうか ?

原題は単に the Orchestra.各章のタイトルが内容をよく表しているので,目次をコピペすると...

1 前奏曲: オーケストラの楽器の系譜
2 古典派のオーケストラ: ハイドン
3 オペラのオーケストラ: モーツァルト
4 ダイナミックなオーケストラ: ベートーヴェン
5 ロマンティックな幻想のオーケストラ: ウェーバー、シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン
6 ヴィルトゥオーゾ・オーケストラ: ベルリオーズ、マイヤーベーア、リスト
7 宇宙のように壮大なオーケストラ: ワーグナー
8 世紀末のオーケストラ: ブラームス、ブルックナー、マーラー
9 国民的オーケストラ: ヴェルディ、ビゼー、スメタナ、チャイコフスキー、シベリウス
10 「芸術のための芸術」としてのオーケストラ: シュトラウス、ドビュッシー、プッチーニ
11 メカニズムとしてのオーケストラ: シェーンベルク、ストラヴィンスキーと現代

交響曲対オペラのための管弦楽曲,弦楽器対管楽器あるいは金管楽器対木管楽器,ドイツ対フランス,感情的音楽対理性的な音楽,複雑なハーモニー対簡潔なハーモニーといった対立概念が次々に現れる.何人かの作曲家に対して「彼が...をやらなかったのは,技量がなかったためではなく,単に必要を感じなかったからだ」という弁護が書いてある.主張は断定的で,どこを開いてもなかなかの名文が並んでいる.クラシック音楽の本はあまり読まないので,この本に書いてあることを鵜呑みにしてしまいそうだ.

訳がいい.しかし「主題労作」とか「デュナーミク」とかいう語は,音楽の世界では定着しているのだろうが,読んでして抵抗を感じる.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

猫の手

2015-03-04 08:28:53 | お絵かき
坂東寛司「猫の手」ネスコ (1998/12).

「猫の手貸して上げましょう」とうたった小さな写真集.図書館で借りたが,本からポーズも借りて,CD ケースに内側からアクリル絵具で2枚.
もとの写真をみたい方,中古本がアマゾンで1円です.

「眠り猫」
J 子はキモチ悪いと言うが,猫はよく見れば気持ち悪い生き物ではある.



「猫パンチ」
なぜか,戦前の漫画・のらくろを思い出したが,よく考えたらのらくろは犬だった.
写真を良くみたらパンチの間から爪がのぞいていたが,絵では描かなかった.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

倍音の一致で協和を説明する

2015-03-02 08:15:59 | 新音律


図に弦楽器あるいは管楽器でドを弾いたとき・ソを弾いたときのそれぞれの倍音を上下に並べて示した.純正律では,ソの基本波 (1倍波と言ってもよい) の周波数はドの基本波の周波数の 3/2=1.5 倍である .そこで赤線で囲んだ,ドの3倍音とソの2倍音,ドの 6 倍音とソの 4 倍音,ドの 9 倍音とソの 6 倍音,等は同じ周波数・同じ音になる.このように,同じ高さの低次の倍音を持つ二音は協和する.

ふたつの純音 (単一周波数音) が協和するのは周波数が一致するとき,すなわち同じ高さの音のときだけである,という事実がある.同じ高さの音だけではハーモニーなんか成り立たないじゃないか,と言いたいところだが,とにかくこれを楽音のような合成音に当てはめると倍音同士が一致すれば協和度が高くなるということになる.


ドソの場合をドレミ...シの7音に拡張してみよう.グラフの横軸は倍音の周波数.縦軸はドレミ...の周波数.どちらも「ド」の基本波に対する周波数比で目盛ってある.右側の階名ドレミファ…に対応する分数 9/8, 5/4, 4/3...はこれらの基本波のドの基本波に対する周波数比を分数で書いた.水平方向の等間隔の点列は倍音で,ドレミ...と音が高くなるほど間隔が広がる.ドレミ…それぞれの基音,2倍音,3倍音などを結ぶと,それぞれが固有の傾きを持つ直線になる.

同じ高さの低次の倍音を持つ二つの音は協和する.図でドの倍音と同じ高さの倍音同士を赤線で結んでみると (ドとソの場合は除いた)

- ドの4倍音とファの3倍音は同じだから,ドとファは協和する.
- ドの5倍音とミの4倍音は同じだから,ドとミは協和する.
- ドの5倍音とラの3倍音は同じだから,ドとラは協和する.など.

このように同じ高さになるのは,ドの周波数を1としたとき,ミ,ファ,ソ,ラの周波数はそれぞれ 5/4.4/3.3/2,5/3 であるためであり,逆にこのように簡単な整数比で書ける分数を周波数比として1と2の間に並べたのがドレミ...であると言える.9/8 のレと,15/8 のシを補うと,ドレミファソラシドが揃う.このドレミ..という音階の特徴は協和する音が選べることであり,この図は,ドとソ,ドとファ,ドとミなどが協和することを示しているに他ならない.

この図には他にもいろいろ面白いことが埋まっている.下の図ではレと協和しそうな音,ミと協和する音を示した.よく見るとレの 3/6/9 倍音とラの 2/4/6 倍音を結んだ点線はやや傾いている,すなわち高さが微妙に異なる.純正律ではレとラの組み合わせは「ウルフ」と呼ばれ,協和しない.ただし,平均律では不協和度はあまり目立たない.その他にも例えば3つの音の協和,すなわち和音を考えてると,次のことが言える.



- ドとミ,ドとファは協和するが,ミとファは協和しない.ドミファは協和しない.
- ミとソは協和する.ドとソも協和するから,ドミソは協和する.
- ドの 5(10) 倍波・ミの 4(8) 倍波・ラ 3(6) 倍波は同じ高さだから,ドミラは協和する.など.

ピアノの調律の本で見たグラフの紹介でした. ただし整理が悪く出典不明.ご存知の方は教えてください.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg