サンキュータツオ著 角川学芸出版 (2015/3).
ヘンな事象をテーマとする13 本の論文の紹介.
カバーイラストがいくつかの論文テーマを示していて,右上から
「浮気男」の胸の内 立命館人間科学研究
「猫の癒し」効果 北翔大学北方圏学術情報センター年俸
「しりとり」はどこまで続く 情報処理学会論文誌
「おっぱいの揺れ」とブラのずれ 日本家政学会誌
「世間話」の研究 世間話研究
参考までに,上には論文が発表された学術誌も示した.各論文の著者としては,もちろんまじめな論文たちである.
全部日本語の論文なのが残念だ,しかし高校の先生と生徒との研究『「コーヒーカップの音」の科学 (物理教育)」 には,Cambridge Phylosophical Society ; Phylosophical Magazine に先行研究が発表されていたことが示されている.インスタントコーヒーに湯をそそぎかき回していくと,スプーンとカップの接触音が次第に高くなるという現象がテーマ.これがヘンな論文なら,16 トンにもかなりヘンな論文があると思うが,幸か不幸かサンキュー氏のお目にとまっていないようだ.
もっとも上記コーヒーカップのような理科的なテーマは少なく,取り上げられたのは人間研究をテーマとする論文がほとんどである.公園の斜面に座る「カップルの観察」(日本建築学会環境系論文集) では,3組の学生カップル調査に当たったが,そのうちの一組がゴールインしたという成果もあったとか.
上に挙げた以外の論文テーマは,
「あくび」はなぜうつる?,女子高生と「男子の目」,「なぞかけ」の法則,「元近鉄ファン」の生態を探れ,現役「床山」アンケート,「しりとり」はどこまで続く?「湯たんぽ」異聞
である.
著者は早稲田大学文学研究科日本語日本文化専攻博士仮定後期課程修了のお笑い芸人.
同じように論文を書いてきた立場からは,サンキュー氏が論文著者を揶揄する態度が気になる.いくつかの論文著者からのフィードバックも記述されているが,皆さんオトナであって,おちゃらけた取り上げ方に対しても,反応は Thank you for your interest から始まる.
図書館で借用し新幹線車内で読了.