Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

死の黙劇: 山沢晴雄セレクション

2021-09-20 09:15:18 | 読書
戸田 和光 編集,東京創元社 (創元推理文庫 2021/7).

Amazon の紹介*****
月のない夜、一台のタクシーが崖下に転落した。運転手は一命を取り留めたが、乗客の男は即死する。死者は顔いちめんに包帯を巻きつけていたものの、その下にはなぜか傷ひとつなかったーー奇怪な謎が読者を魅了する表題作ほか、書籍未収録の犯人当て短編などを所収。生涯に亙って緻密極まりない作品を執筆、巨匠鮎川哲也も畏敬した本格推理作家、山沢晴雄。その作風を一望できる作品を精選。*****

著者の生涯は 1924-2013.1951 年のデビュー作を含む名探偵・砧順之助もの5篇.犯人当て2篇プラス 1980 年代の短編2篇.昭和の時代には電話をかけるのも大変だったことが,なつかしい.
汽車・電車の発着時刻が横溢し,登場人物多数.トリック・誤情報のうちから空間的時間的に可能な犯人を煽り出すと言う構図.人物像は詳述されず,犯行動機も途中ではわからない.編者解題にあるように,長編向きの込み入ったストーリーを,無理やり詰め込んだ短編が多いと感じた.
著者は「手品文学」を標榜していたと言う.この本で特に優れているのは犯人あて2編で,明らかに手品と種明かしという構造である.人間描写などと言う無粋なものは一切なく,著者の本領が発揮されているようだ.

加齢により読書能力が落ちたはずなのに,このようなミステリだと前のページをめくって前後関係を確かめたりしつつ,あっという間に読了してしまうのは不思議.読んだ後の自分的な評価はたいして高くもないくせに,である.

砧探偵の脇役に登場する警部の名が須潟賛四郎.富田常雄の「姿三四郎」のパクリだが,ふざけてはいないミステリの中で,ここにだけ違和感を持った.
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歳をとっても絵は描ける !

2021-09-19 10:21:04 | お絵かき
後期高齢者ともなると音楽的活動には制限が大きくなる.そこへいくと,歳をとっても絵は描けるらしい.ヒト (個人) によるのことかもしれないが,プロの画家の名作傑作には晩年のものが多い.

左の「旅の絵本 IX」の出版時,安野光雅 92 歳であった.「旅の絵本 I」の時点で既に 50 歳を超えていた.IX はこのシリーズ絵本初期のように細密画的ではないが,画面としての完成度は高くなっていると思う.
右の,熊谷守一「アゲ羽蝶」は 96 歳の絶筆.

もっとも,白内障にかかったりすると絵も影響される.東京逓信病院のサイト「白内障ではどのように見える?」にはクロード・モネの2枚の睡蓮,健康時と白内障時が並べられている.ちょっと残酷 ! でもモネの白内障は手術により回復したそうだ.
ただし最晩年の睡蓮の絵は抽象画みたい.

希少だが,歳をとっても矍鑠としていた音楽家だっていた.これはハンク・ジョーンズ 87 歳時のニューヨーク大でのセミナー.内容だけでなく話し方も明瞭.
でも長い動画ですよ.

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総裁選に核融合登場 !

2021-09-18 09:38:25 | 科学
9/17 の東京新聞 TOKYO Web の見出しに,「自民党総裁選で話題に上る「核融合」発電 言われて久しい「実現まで30年」」.「核融合発電は昔から、実現まで30年と言われたまま実現せず、「逃げ水」という批判もありました。」という文章もあった.実は 16 トンは 1960-70 年代は核融合屋のはしくれで,その頃も 30 年も経てば実現するかなとは思っていた.

当時の核融合研究のスターはプリンストン・プラズマ研 (一時 東大) の吉川庄一さんであった.氏に核融合研究費が膨大であることについて「軍事費に消えるよりはマシだ」という意味の発言があったと記憶している.高市候補は総裁当選の暁には防衛予算を核融合研究にまわすこと !

もっともこの吉川発言の根拠をウェブで探したけれど見つからなかった...オフレコだったのかな ?

以下は16トンの現在の意見.
核融合装置に限らず,原発も火力も,大きな発電設備は極力なくすべし.家庭・小規模工場などのエネルギーは 各戸で再生エネルギー源と電池でまかない,送電線も電力会社もなし が理想.採算を度外視すれば現在でも技術的には可能.

正統的な核融合へのアプローチは ITER だ.でもこの方向だとスケーリング則により,核融合装置は大型化し発電量を大きくしないと採算がとれない.いろいろな方向があり,そちらが成功する可能性もないとはいえない.それにしても,試験管の中で可能なはずの常温核融合は...どうなっちゃったんだろう?
トップ画像右のは,ネットで拾った冗談絵画 ? を加工しました.
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a taste of honey

2021-09-17 09:18:07 | ジャズ
貴重?な 日本蜜蜂の蜂蜜を舐めた.この季節だが,軽く固まっていて色は赤っぽい.J 子と顔を見合わせて 出た言葉は「昔の味 !」である.

大佛次郎「敗戦日記」に砂糖がないので蜂蜜で代用する場面があった.1950年代前半,遠足?の土産に小遣いで蜂蜜の大瓶を買って帰ったら,「こんなもの...」と,母親が機嫌を悪くした.
かっては,蜂蜜といえば日本蜜蜂のもので,安い甘味料だったらしい.
でも砂糖代用としては,ぼくにはズルチン,サッカリンの印象が強い.

A Taste of Honey はハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラスでヒットしたが,これはポール・デズモンド - ジム・ホールのカルテットによる演奏.

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日本古典の現代語訳

2021-09-16 09:45:20 | 読書
津野海太郎「最後の読書」に,「現代語訳を軽く見るなかれ」の1章がある.ここで言う「現代語訳」は古文で書かれた日本の古典の現代語訳のこと.
河出書房新社版「日本文学全集」の呼びかけ人,池澤夏樹によれば,いまは専門家による新しい研究や注釈がいくらでも見つかるのだから,それをたよりに「書く人間」としての作家がそれぞれにきたえてきたことばの力で,古典を読みこなすことから始めれば (現代語は) なんとでもなる,のだそうだ.ことばの力は持ち合わせないが,なるほどそれなら自分にも現代語訳がなんとかなりそう.

津野が挙げているのは,伊藤比呂美「新訳 説経節 - 小栗判官・しんとく丸・山椒大夫」平凡社 (2015) で,退屈な散文の原典を詩人ならではの「行かえ」のワザで突破していると称賛している.

以下津野本からは離れる.
初めて手にした古典の現代語訳は,橋本治による桃尻語訳・枕草子 (河出書房新社 1987) であった.「春って曙よ! だんだん白くなってく山の上の空が少し明るくなって…」の出だしでベストセラーになった.海外出張であちらの大学に勤めていた研究者にお土産に持って行って喜ばれた.「桃尻」なんて,今だったらセクハラとされそう.

戦前は今のように古文の敷居がたかくはなかったと思う.思いつくところでは,与謝野晶子の源氏物語.その1度目の現代語訳 (明治大正語訳) が出版されたのは 1911-1933年であったという.高校の古文の授業で源氏が出てきたときに,その後の改訳の文庫版の一冊だけを買ったのだが,ほとんど読まなかった.
改めて読んでみるなら,田辺聖子訳あたりがおもしろそう.
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最後の読書...ではなく,最後の演奏

2021-09-15 10:35:02 | ジャズ
高齢者の演奏をググると,認知症対策として楽器を始めることばかりヒットする.
でも今のぼくの関心は,若い時から続けてきた楽器演奏が加齢とともにどう衰えるかということ.昨日できたことが今日はできないことを痛感するこの頃である.いつまでこうしていられるのだろうか?

テレビで見ただけだが,1983年,ホロヴィッツ80歳で来日時の演奏を吉田秀和が「ひびの入った骨董品」と酷評したのを覚えている.

津野海太郎「最後の読書」では耳目のよわり,記憶力のおとろえが,嘆かれたり自嘲されたりしていた.
この問題は楽器演奏ではもっと深刻.もっと直接に,腕力体力のおとろえが問題になるのだ.読書はマイペースでやればいいのだが,音楽は時間芸術だから,独奏でさえ悠長にやっていては曲にならない場合が多い.他人と合わせるとなると,たいてい ついていけないという問題に遭遇する.

PTNA 全日本ピアノ指導者協会のレポート,元吉ひろみ「長寿社会に求められている音楽教育 高齢期に適したピアノ指導」http://www.piano.or.jp/report/04ess/ronbunreport/2002/04/01_8986.htmlに,加齢によるピアノ演奏能力減退のデータが多数出ていたので,いくつか転載させていただく.図は鮮明とは言えないが,アップされたのは2002年,もう20年近く前のことだから,お許しくだい.



b 視力は楽譜を見る能力に直結.ぼくの場合は読書の焦点距離では楽譜は見えない.楽譜を画像として記憶するという方法も記憶力が減退して無理みたい.まぁジャズだからごまかせる部分はある.
c 楽器演奏に2000Hz以上の音域を聴く能力は不可欠ではない.しかしヒト,特に若いヒトの言っていることが,音としては聞こえても,言葉として入ってこないことは間々ある.よくわかっている方が通訳してくださったりする.



d ビブラフォンのような打楽器ではこれが,a の骨格筋とともにものをいう.グラフには (他のグラフにもときどき) 80歳以上の目盛りがない !
e ジャズのインタープレイは他の奏者に反応することで成り立つ.これが遅くなったことは実感している.
f 元レポートでは楽譜を見て音を出すまでの時間とされていたが,あまり関係ないかも.楽譜は現在演奏中の時点より先読みするのではないだろうか.楽譜がよく見えない老視者にはもっと無関係.
g 80歳の知能は最盛時の半分以下か !?

16トンが現在音楽で遊んでいただいている年齢層は.20台と60台のふたつだが,どちらの場合も さぞご迷惑をかれていることと思う.
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日本蜜蜂の蜂蜜

2021-09-14 08:48:19 | エトセト等
日本蜜蜂は西洋蜜蜂に駆逐されつつある.市場の国産蜂蜜の 95% は西洋蜜蜂のものである,と,テレビが言っていた.

J 子のお友達が果物を送って下さったので,広島県産日本蜜蜂の蜂蜜をお送りした...とか言っちゃって,じつは広島県産があることをネットで調べて初めて知ったのだけれど.
賞味しないでプレゼント は正しい態度ではなかったが,なんせ高いのだ.
お世辞かもしれないが美味しいと言ってくださったので,うちでも舐めたくなった.小瓶を広島駅 ekie しま市場アバンセで発見・購入.

まだ封を切っていません.
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ユリイカの特集・安野光雅

2021-09-13 08:59:56 | 読書
ユリイカ 2021年7月臨時増刊号 総特集「安野光雅 1926-2020」青土社(2021/6).
芸術新潮 2021年9月号 追悼特集「はじめてであう安野光雅」新潮社(2021/8)

亡くなったのが12月24日だった.原稿を集めて編集するといまごろ出版されるんだな...
ユリイカは字が多い.芸術新潮は大判だから絵が大きい.しかしユリイカは全ページ安野だが,芸新は半分くらい,というわけでユリイカを購入.全385ページ.
寄稿者の有名どころは表紙にある.下右の自画像は裏表紙.



川口美貴さんによれば「労働法」(信山社出版 2015) の装幀の水彩画「田舎の秋」はこの本のために描かれたとのこと.下の画像左 : 書店の本棚では「労働法」の文字と,その下の小さな農家が目につくはず.農家から斜めに続く道がどこに続くだろう...と手に取ってみたくるという計算.一見労働法との関連はわからないが,実りの秋すなわち労働の成果だそうだ.安野には「文学作品の装幀や装画の場合 説明的にくっつきすぎては身もふたもなくなる」という発言がある.

本の著者の多くは川口さんのように装幀に関心がある.拙著「音律と音階の科学・新装版」の場合は若い編集さんが装幀を担当室?に丸投げし,「これにします」と言ってきたので,大いにごねたのを思い出した.現在のイラストが悪いと言うのではないが, (そんなことはありそうもないが) 新装版も旧版程度に増刷を重ねたら,カバーイラストだけ変える約束.文庫本はしょっちゅうカバーを変えるのだから,ブルーバックスも,売るためにはそうした努力はするべきと思うが..

最初の安野の絵本「ふしぎなえ」福音館書店の初版は 1968/3 だが,我が家のは第9刷 1975/10 定価380円である.30代の大人が絵本を買って喜んでいたのだ.
ユリイカでは多くの執筆者がエッシャーの絵に比べ安野のものは暖かくユーモアにあふれていると称賛している.しかしぼくの場合,エッシャーを知ったのは安野を知った後であった.エッシャーの,つき離したような画風に,これがおとなの芸術というものか! と思った.たくさんの子どもたちが,ぼくと同じ軌跡を辿ったことと思う.
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津野海太郎「最後の読書」

2021-09-12 08:50:10 | 読書
新潮文庫 (2021/9).ウェブで読める.

Amazon の紹介*****
目はよわり、記憶はおとろえ、蔵書は家を圧迫する。でも実は、老人読書はわるいことばかりではないよ――。鶴見俊輔、幸田文、須賀敦子……。長い歳月をたずさえて読む本は、豊かで新鮮なよろこびに満ちている。親しい仲間や敬愛する先達との別れを経験しながら、それでも本と出会い続けよう。本を読み、つくり、書いてきた読書人が、その楽しみを軽やかに綴る現状報告。読売文学賞受賞作! 解説・鈴木敏夫*****

全17章.「1 読みながら消えてゆく」に登場する鶴見俊輔は,脳梗塞で言語の受信は可能,発信は不可能.読めるが書けないという状態に陥るが,3年半本を読み続けて没する.「2 わたしはもうじき読めなくなる」の幸田露伴の晩年は,読めない・書けない・でも話せる,だから他人に読ませるのだが,我儘で癇癪持ち.以下「4 目のよわり」「5 記憶力のおとろえを笑う」「7 蔵書との別れ」...など.

著者は1938年生まれ,16とんより三歳年上だが,単行本刊行は 2018年11月とのことで,今の自分ともろに重なり,身につまされることばかりで,気が滅入る.

途中.(こじつけてはいるが) 老人の読書というテーマからは離れる部分もある.「百歳までの読書術」という著書もあるようだ.似たような本を何冊も書くのは大変だろう.ご苦労さまである.
しかし,須賀敦子が登場する最後の2章「16 貧乏映画からさす光」「17 柵をこえる」 では,テーマは社会性を持つ.

「である」調にときどきくだけた「ですよ・ますよ」が混じる文章.

カバー装幀はこの3月に亡くなった,平野甲賀.
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古典ジャズの黒本

2021-09-11 10:48:33 | 新音律
黒本にない曲をセッションする Syncroom を毎週開いている.曲目は Facebook にアナウンスし,楽譜も同時にアップしている.しかし,FB のアクセス数に比べ,Syncroom に来室される方は限られている.FB から楽譜をダウンロードすることを目的にされている方が居られるようだ.

黒本には,古典ジャズ,デキシー・スイング系の曲が少ないし,そういう編集方針と理解している.ちなみに,今週の Syncroom セッション曲で黒本にないのは,Jitterbug Waltz, All God's Chullen Got Rhythm, After You've Gone.

それなら,古典ジャズ専門の黒本を作ったらどうかな.ありがたいことに,たいていの曲は著作権が切れている !
たいていの楽譜はウェブで拾えるので,弾いてみて,1段4小節に書き直して,ダウンロード フリーにして...
どなたかやってくださいませんか !?

マイルズあたりからか,モダンジャズは深刻ぶって演るのが常識みたいだが,古典ジャズはひたすら楽しめばいいらしい.サッチモは,シャンソンのセ・シ・ボンとか,ロシア民謡の黒い瞳とか,何でもやっていた.動画の A Fool Such As I (おバカな私) を僕はウェスタンと思っているが,違うかもしれない.

Youtube で見ると,たいていの (未来の古典の) 黒本曲の演奏はこの New Orleans Jazz Hounds によりアップされているようだ.
ちなみにたいていのモダンの黒本曲は,ビブラフォン演奏版なら大井貴司さんによりアップされている.



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reading

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