Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ニューオーリンズのラフカディオ・ハーン

2022-03-21 09:09:30 | 読書
アックスマンのジャズ」は 1919 年,人種差別が当然のニューオーリンズを舞台とするミステリ.
その一場面で,元刑事ルカが話を聞く老いた黒人が,ラフカディオ・ハーン Lafcadio Hearn 1850-1904 によるルイジアナを讃える語句を引用するのが意外だった.あの「耳なし芳一」の小泉八雲である.ハーンは日本でだけ それももっぱら高校あたりの英文解釈に登場するだけと思っていた.
Wikipedia によれば,ギリシャ生まれのハーンは日本に落ち着く前にアイルランド・フランス・アメリカ合衆国・西インド諸島を転々とした.オハイオ州シンシナティでは州法を犯してまで混血黒人と結婚した.結婚は2年で破綻し,彼はメンフィスを経由してニューオーリンズの新聞社に職を得て,1970-80 年代をここで過ごす.界隈の黒人の間では彼は有名人だったのだろうか.確かなのは「アックスマンのジャズ」の著者レイ・セレスティン Ray Celestin がハーンを認識していること,くらいである.

ハーンは最終的には日本人の小泉セツと家庭を持った.彼が東京帝大講師を辞した後任が,夏目漱石だそうだ.
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「アックスマンのジャズ」

2022-03-20 09:41:55 | 読書
レイ・セレスティン, 北野 寿美枝 訳,早川書房 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 2016/5).

出版社の紹介*****1919年のニューオーリンズで、斧を使って殺人を繰り返す、アックスマンと呼ばれる犯人。 新聞社に予告状を送りつけ「ジャズを聞いていない者は殺す」と宣言するこの殺人鬼を懸命に追う男女がいた。人種差別の強い街で、黒人の妻がいることを隠して困難な捜査を進めるタルボット警部補。ある事情から犯人を捕えるようマフィアに依頼された元刑事のルカ。ジャズマンとともに事件の解明に挑む探偵志願の若い女性アイダ。彼らの執念で明かされる衝撃の真相とは? 実際に起きた未解決事件をもとに大胆な設定で描く英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞作。*****

原題 The Axeman's Jazz.
冒頭に運用される予告状はほんものだし,実際の被害者の氏名も使われているが,ストーリーは創作.
結末では,探偵役の3組がそれぞれ真相に 1/3 くらいずつ迫る.全貌を掴むのは読者だけ,というのが優越感を感じさせる.最後にタルボット警部補とアイダはシカゴのピンカートン探偵社に就職し,そこで初対面.この実在する探偵社は,ホームズもの「恐怖の谷」にも登場する.

アイダの相棒のぽっちゃりした黒人の若者が,Louis Armstrong ならぬ Lewis Armstrong (文中ではルイス) である.このアイダの父親ピーター・ディヴィスが「黒人浮浪児養護施設吹奏楽団」でコルネットを教えてくれたルイ(ス)の恩人という設定.娘はフィクションかもしれないが,父親は知る人ぞ知る実在人で,Youtube でもお姿を拝むことができる
若き日のサッチモが事件に関わったと言うのは嘘だが,彼も新聞の予告くらいは呼んだかもしれない.この本にある諸々の彼のエピソードは,アックスマンに関わるもの以外はほんとうらしい.タイトルにある「ジャズ」は BGM に過ぎないが,ルイ (ス) が大化けして神がかり的な演奏すの場面がある.

イギリス人のミステリの舞台がニューオーリンズだが,日本でも欧米を舞台に小説を書く人は多いな.

ポケミス (新書版2段組) 470ページと長尺.登場人物が多く,事件そのものも複雑で,ぼくにとっては体力を使う小説だった.
図書館で借用.
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広島錦 @ あじろや

2022-03-19 09:31:13 | エトセト等
高からずの 回らない寿司屋に行った.
清酒リスト トップの聞いたことのない「広島錦」を注文.女子店員はどこの酒か答えられなかったが,板前? 職人? (区別がわからない) がカウンターから「賀茂鶴です」.彼は飲食店でしか味わえないと言ったが,Amazonで買うことはできる.
賀茂鶴の CM によれば,幻の酒米と称される「広島錦」の栽培を復活させ,その「広島錦」を原料米に,賀茂鶴蔵から分離された伝統ある酵母を使ったオール広島産,とのことである.
...ふつうに良いお酒.

あじろや 広島駅新幹線口店は,ふつうに良い寿司屋.
カウンターにタブレットが置いてあるが,開店寿司店のようにメンテされていない.カウンターに言った方が早い.
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G 線をジャズで

2022-03-18 09:32:34 | 新音律
G 線上のアリアをライブで演ることを画策中.
自分のブログをひっくり返したら,2006 年にカルテットでチャレンジしていた.お付き合いいただいた3人サマは今では家庭人である.

このときのリードシートが左で,出典は CLASSICAL 1001,日音(1975) らしい.原曲に近いのが右の楽譜で,リードシートでは小節が2分されている.ハ長調だが,これはその昔バイオリンの G 線で弾くために転調された結果かな.

バッハの曲はジャズ化しやすいので,下のようにお手本多数.
形式的にふたつめ,MJQ - Swingle Singers 版に従うことにする.メロディに乗るととアドリブがしぜんに対位法的になる.Percy Heath のベースがオリジナルの通奏低音をなぞっているので,我らがベース氏にも そうしていただいたら,気持ち良く合わせることができた.


Jacques Loussier
1959 年のアルバム Play Bach No.2 で演奏しているが,動画は 1988 年,André Arpino(ds), Vincent Charbonnier (b)
リードシートのリハーサルマークで表すと,AAB でおしまい..


MJQ and the Swingle Singers (1966)
AABB を A1A2B1B1 と書くと,A1A2 は vib,B1B2 は p で,A1 B1 はメロデイ,A2 B2 はアドリブ.A2 B2 に Swingle Singers が原曲に近い形で加わる.


the Classic Jazz Quartet (2002)
Kenny Barron (p), Ron Carter (b), Stefon Harris (vib & marimba), Lewis Nash (ds)
Bob Belden (arr), AA と B の 1/3 を繰り返す.始めからストレートにスイングする.
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コーヒーバネットの朝

2022-03-17 09:01:40 | お絵かき
コーヒーパネットはドリップコーヒー用濾紙ホルターの商品名.一桁安い中国模造製を百均で買ってみたが,まったく具合が悪かった.

熊谷守一の油彩画「朝のはぢまり」連想するので,自分の絵のタイトルにも「朝」を加えた.
泡がこのような同心円を作るように淹れるのは難しいことではないが,コーヒーが美味しくなるわけではない.

CD ケースに内側からアクリル絵具.
絵としては,泡に浮かんで点々と黒く見えるコーヒーの粉が画一的で表情がないのが不満.
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おばあさん猫

2022-03-16 08:40:16 | お絵かき
寝てばかりいる上品な おばあさん猫 と思いこんで描いたが,もしかしたらおじいさんだったかもしれない.

CD ケースに内側からアクリル絵具.バックは絨毯屋さんのカタログから借用した.
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「ロザムンドおばさんのお茶の時間」

2022-03-15 08:51:35 | 読書
ロザムンド・ピルチャー,中村妙子 訳,朔北社 (2021/11).カバー銅版画は城野由美子.
1994/3 晶文社 刊行の新装版.
訳者が著者の複数の短編集から編集したもので,「ロザムンドおばさんの贈り物」 (2013/6) に次いで,7年目の2冊目だそうだ.

出版社の内容紹介*****
人の弱さ、そして強さとは?日常にあるかけがえのない時間。人との繋がり、信頼…。
ロザムンド・ピルチャーが描く、イギリス田園風景と魅力的な人々。描かれる人々は誰かと似ている―—。あなたはどの物語に共感するだろうか?自分のことのように心を痛めるだろうか?*****

著者はイギリスのベストセラー作家だそうだが,このジャンルを1冊まるごと読むのは,日本・海外を通じて初めて.原文は英語の勉強によさそう.

全6篇.最初の「雨上がりの花」を読んだ直後は,なんだか続きがありそう,連作ものだろうかと思ったが,次の「湖に風を呼んだら」のストーリーは独立していた.しかしこれは最後の「再会」と同工異曲.しかし「雨上がりの花」と「再会」の舞台設定は似ている.
「丘の上へ」「父のいない午後」ではティーンエイジャーがお産に立ち合いそうになる.
似たような作品が多いが,それだから安心して読めるとも言えそう.

残る「気がかりな不在」はいちぱん小説的.ぼくは O・ヘンリーを連想したが,あとがきによれば訳者には P.G. ウッドハウス を思わせると言うことだ.しかし彼の「ジーヴズの事件簿」の諸篇よりはこちらの方がていねいで出来がいい.

すぐに読めて,どれもハッピーエンドで,たまにはこういうのもいいかな と思った..
図書館で借用.
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一場洋次郎絵画展 - 蒸気機関車に魅せられて -

2022-03-14 08:33:24 | お絵かき
一場画伯は二紀会準会員
父君が国鉄マンだったとのこと.機関車を描いた作品は もと理工ボーイのこころに響く.部分をアップした作品が多いが,トップ画像は三角形の構図に,蒸気機関車の全体をとらえている.
まだ会期が残っているので,個展に行きたいと思う.
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暗色コメディ

2022-03-13 09:17:32 | 読書
65 才で亡くなった連城三紀彦 1948-2013 の作品が次々と文庫化されている.

処女長編「暗色コメディ」は 1979 年 幻影城から出版された.書棚からこれを探し出して再読.イラスト 山本博通.ストーリーはまったく覚えていなかった.同じ本を何度も読めて,健忘症は経済的 !!

幻影城は (ミステリではなく) 探偵小説の雑誌およびその出版社で,「暗色コメディ」が刊行されたとたんにつぶれた.My 蔵書の「暗色...」の他.泡坂妻夫「亜愛一郎の狼狽」狩久「不必要な犯罪」などはこのときゾッキ本として買ったものである.ちなみに「不必要な...」はアンカット本であった.

「暗色...」には,夫と逢引をする自分自身を目撃した主婦、トラックに轢かれたはずがトラックそのものが消失した画家、妻に幽霊と思われている葬儀屋、妻が別人にすり替わっていることに気付いた外科医,と,不可思議な体験から精神を疑われる人たちが次々に登場.しかし最後は合理的に解決される.8割がた読んだところで (残りのページ数から) 犯人の見当はついてしまう.でも,おもしろく満腹した.

トップ画像のように少なくとも「暗色...」は4回は違う出版社から再刊されている.双葉社の HP によれば,著者はどこかの時点で文庫化に際して一部のトリックを書き直したと言うことだ.文庫を図書館で借りて比較してみようか.

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「終の棲」

2022-03-12 08:49:56 | 読書
北沢美代「終の棲 - ホームの日々」 芸術新聞社 (2021/3).

*****自分の老後を考えはじめた時、私は家族の介護ではなく老人ホームを選んでいた。それで、 取り寄せたカタログを読み、見学し、説明を 受け、自分で決めて入所した。*****

入居者の目線で見たホームの日々.著者は 1941 年生まれ,すなわち自分とまったく同年齢ということもあって,図書館で借りた.夫は実社会で暮らしているらしく,子どももいるらしい.
かなり高額・高級なホームらしい.すなわち,著者は裕福らしい.
正月・ひな祭りなど折に触れ (触れなくても定期的に) スペシャルなお膳が供され,そのお品書きがすごい.しかし餅はなく,おこわも喉にひっかかるかもしれないから餅米ではない.何があっても流動食の人も多い.

著者は入居者の中ではいちばん若い部類で,日常生活には不自由がなく近場への外出もできる.上げ膳据え膳・掃除洗濯なし の毎日を物足りなく感じることもある.入居者は女性が圧倒的に多いが,会話が成り立つ人は限られる.夫婦で別々の部屋に入居し,妻は夫が亡くなったと信じているケースなど,シュールである.
スタッフにも入居者にも頼りにされる.優等生的に出しゃばるので,他の入居者との軋轢を生む場面もある.

戦争体験が描かれている.16 トンの場合,どこまでが体験で,どこまでが後で周囲のおとなに刷り込まれた疑似体験か,判断できない部分が大きい.同年齢の著者が描く鮮やかな体験から,案外自分の記憶も実体験に基づいているのかなと思った.

ところどころ,同じページに,多少表現が変わる場合もあるが同じことが述べられることがある.おばあさんの言うことと思えばご愛嬌だが,編集者の目が届かなかったのだろうか.

今年1月に同じ著者・出版社により「終の棲 II 老いと共に歩む」が刊行されている.
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