路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説①】:米・イラン対立 報復の連鎖を断ち切れ

2020-01-07 06:10:56 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】

【社説①】:米・イラン対立 報復の連鎖を断ち切れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:米・イラン対立 報復の連鎖を断ち切れ 

イランが、米軍が駐留するイラク国内の基地二カ所をミサイル攻撃した。革命防衛隊司令官の殺害に対する報復だが、事態をこれ以上悪化させてはならない。米国、イラン双方に自制を促したい。

 日本時間のきのう朝、現地時間八日未明だった。イランがイラク中西部アンバル州のアサド空軍基地と北部アルビルの基地を十数発のミサイルで攻撃した。いずれも米軍が駐留する基地である。

 トランプ米大統領が、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の殺害を米軍に命じ、実行したことに対する報復である。

 トランプ大統領は、イランが報復すれば大規模な反撃を警告してきた。しかし、米軍が反撃すれば全面衝突に発展しかねない。中東の不安定化に拍車をかけ、世界経済への影響も計り知れない。報復の連鎖を断ち切り、反撃をとどまるべきではないか。

 そもそも、ことの発端をつくったのは、トランプ米政権がイランとの核合意から一方的に離脱し、その上、司令官を殺害したことにある。これ以上、一方的な振る舞いが許されるはずはない。

 米国、イランとも事態の深刻化は望んでいないという。ならば軍事的手段ではなく、対話を通じて事態を打開すべきだ。

 日本は、米国とは安全保障条約を結ぶ「同盟国」であり、イランとも伝統的な友好関係にある。今こそ、そうした外交的資産を中東の緊張緩和に生かすべきだ。

 安倍内閣は、中東地域に自衛隊を「調査・研究」の名目で派遣することを閣議決定した。米国提唱の有志連合と一線を画すものの、米軍と連携した活動にほかならない。自衛隊派遣がイランとの友好関係を損ねないか、心配だ。

 派遣の前提は、緊張は高まっているものの、日本関係船舶を直ちに防護しなければならないような緊迫した情勢ではないとの認識だったはずだ。

 米軍による司令官殺害とイランの報復攻撃で前提が崩れた以上、自衛隊派遣をいったん、白紙に戻すべきではないか。

 圧倒的な軍事力を持つ米国と、地域の大国であるイランが大規模な戦闘に突入すれば、世界大戦の再来になりかねない。

 これ以上、人類史に悲劇を刻み込んではならない。当事者はもとより、国連や関係各国が、報復の連鎖を断ち切るために、知恵を絞らねばならない。人類の叡智(えいち)が試されている。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年01月09日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:首相年頭会見 改憲は国民の声なのか

2020-01-07 06:10:52 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【社説②】:首相年頭会見 改憲は国民の声なのか

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:首相年頭会見 改憲は国民の声なのか 

安倍晋三首相が年頭記者会見で、憲法改正への意欲を重ねて強調した。改憲論議を前に進めよという国民意識の高まりを国会議員として無視できないとの理由だが、改憲は本当に国民の声なのか。

 首相はきのう、三重県伊勢市の伊勢神宮を十人の閣僚とともに参拝した。恒例の行事であり、その後の年頭記者会見は、今年一年、どう政治をかじ取りするのか、国民に伝える機会でもある。

 首相は、内政では全世代型社会保障の実現を「内閣最大のチャレンジ」と位置付ける一方、外交では中東の緊張緩和と情勢安定を呼び掛け、日本政府も粘り強い外交を展開すると強調した。

 見過ごせないのは、質問に答える形で言及した改憲問題である。

 首相は「(一月二十日召集予定の)通常国会で、与野党を超えた活発な議論を通じて、国民投票法の改正はもとより、改憲原案の策定を加速させたい」と述べた。

 また「改憲スケジュールは期限ありきではない」としつつも「私自身の手でなし遂げていく考えは全く揺らぎはない」と、二〇二一年九月までの党総裁任期中の改憲実現を目指す考えを示した。

 自民党は改憲を一九五五年の結党以来の「党是」としている。首相が党総裁の立場から改憲への意欲を示すことまでは否定しない。

 しかし、首相は「参院選や世論調査を見ても国民の声は改憲議論を前に進めよということだ。国会議員として改憲への国民意識の高まりを無視できない。その責任を果たしていかねばならない」とも述べた。これは誤った認識だ。

 昨年七月の参院選で自民党は第一党を維持したものの、議席を減らし、参院の「改憲勢力」は発議に必要な三分の二を割った。

 共同通信社が昨年十二月中旬に行った全国電話世論調査では、安倍首相の下での改憲に反対と答えた人は54・4%に上り、賛成は31・7%にとどまる。

 参院選や世論調査のこうした結果にもかかわらず、改憲論議の進展がなぜ国民の声と言えるのか。国民はむしろ拙速な改憲論議を戒めているのではないか。

 「桜を見る会」の問題について首相は「国民の批判は承知している。謙虚に受け止め、丁寧に対応していく」と述べたが、これまでの対応を見ると、謙虚に受け止めているとはとても思えない。

 社会保障改革や中東情勢の安定化は政権の重要課題だが、改憲は喫緊の政治課題ではない。優先すべきは政治への信頼回復である。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年01月07日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗】:病の床にあった正岡子規は、門下の歌人から七草を

2020-01-07 06:10:48 | 【事件・未解決事件・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・旧統一教会を巡る事件他】

【筆洗】:病の床にあった正岡子規は、門下の歌人から七草を植えたかごを正月七日に贈られた。

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:病の床にあった正岡子規は、門下の歌人から七草を植えたかごを正月七日に贈られた。

 気遣いにくわえ、素朴でやさしく、生命の勢いもたたえる七草の姿が、大病の身には好ましく映ったのだろう。随筆『墨汁一滴』に喜びを書いて、歌を詠んでいる。<あら玉の年のはじめの七くさを籠に植えて来(こ)し病めるわがため>▼きょうは七草である。例年に比べ長かった年末からの休みを終えたばかりの人も多いだろう。ごちそうで胃腸が、いつもにも増してお疲れという方には、体にやさしく栄養もある七草のおかゆが好ましく思えているかもしれない▼栄養と薬効への期待にくわえ、七草には邪気を払う願いも込められている。吉海直人さんの『古典歳時記』によると、昔の人はスズシロに「汚れなき清白」、セリに「競り勝つ」、ナズナに「なでてけがれをのぞく」などの意味を重ねてきたのだという▼<せりなずなごぎょうはこべらほとけのざ…>のあの歌は、すでに江戸期にあったそうだが、なにやらありがたいおまじないのようでもある▼振り返れば、ゴーン被告の逃走に統合型リゾート施設をめぐる汚職、米国とイランの緊張…と年末から新聞の一面を飾ってきたニュースは、どこに向かって進むのか、みえにくいものが多かった▼消化できず、心にもたれているようでもある。病める世の中も、邪気払いをと願いたくなる。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2020年01月07日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【首相の一日】:1月6日(月)

2020-01-07 06:10:44 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【首相の一日】:1月6日(月)

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【首相の一日】:1月6日(月) 

 【午前】8時52分、JR東京駅。10時41分、のぞみ213号でJR名古屋駅。西村明宏、岡田直樹両官房副長官ら同行。45分、近鉄名古屋駅。

 【午後】0時13分、近鉄特急で近鉄宇治山田駅。鈴木英敬三重県知事ら出迎え。21分、三重県伊勢市の伊勢神宮外宮。参拝客らと握手。萩生田光一文部科学相、加藤勝信厚生労働相らと参拝。53分、伊勢神宮内宮。参拝客らと握手。参拝。1時31分、神楽殿で神楽奉納。2時2分、神宮司庁前でボーイスカウト日本連盟伊勢第7団、ガールスカウト日本連盟三重県第1団から花束贈呈。記念撮影。20分、神宮司庁で年頭記者会見。59分、近鉄宇治山田駅。鈴木知事ら見送り。4時36分、近鉄特急で近鉄名古屋駅。39分、JR名古屋駅。大村秀章愛知県知事、葛西敬之JR東海名誉会長ら見送り。6時43分、のぞみ240号でJR東京駅。7時26分、東京・阿佐谷南の焼き肉店「SATOブリアン本店」。谷内正太郎前国家安全保障局長、辻慎吾森ビル社長と会食。9時40分、東京・富ケ谷の私邸。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・首相の一日】  2020年01月07日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:年のはじめに考える 米国は再び輝けるか

2020-01-07 06:10:40 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】

【社説①】:年のはじめに考える 米国は再び輝けるか

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:年のはじめに考える 米国は再び輝けるか 

 米国が米国らしさを取り戻し、再び輝くことができるでしょうか。十一月三日の米大統領選には世界中が注目しています。

 ◇    ◇ 

 四年間のトランプ政治に審判が下されます。トランプ氏は二〇一六年の前回大統領選で、白人労働者層の支持を集めました。グローバル化の恩恵にあずかるどころかそのしわ寄せを受けて、失業といった辛酸をなめた人々です。

 顧みられることの少なかったこの人たちに光を当てたのはトランプ氏の功績でした。

◆トランプ政治に審判

 半面、国境の壁の建設といった反移民色の濃い政策は、少数者への差別・偏見意識を解き放ち、社会の分断を深めました。

 米国は民主主義、人権、法の支配という国家原理に加え、自分とは違う他者を認める寛容性が持ち味です。自由と平等をうたった独立宣言に代表される建国の精神と理念が多民族国家の米国を束ねてきました。

 おせっかいで独善的な面もある米国ですが、こうした美点が世界の人々を引きつける訴求力になってきました。

 ところが、トランプ氏は建国の精神を軽んじる言動を続けています。束ねを失えば国民の結束力は弱まります。

 外交でもおよそ生産的ではありません。米国主導の国際秩序を自ら壊し、同盟国・友好国との関係を損ねる。国益を考えているとは思えない行動を連発しています。

 トランプ氏の弾劾訴追に発展したウクライナ疑惑では、外交の私物化があらわになりましたが、下院公聴会で証言に立った国家安全保障会議(NSC)の元高官は、外交スタッフが置かれた深刻な状況を明かしました。

 多くの高官やスタッフが誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)や脅しを受け、身の危険を感じて辞めていくというのです。この元高官の自宅にも殺害すると脅迫電話がかかってきたり、自宅玄関のドアを何者かがハンマーでたたいていった、と隣人から聞いたそうです。

 政権から有為な人材が去っていき、大統領のイエスマンばかりが幅を利かせるようになったら、米外交はガタガタになります。

 トランプ氏が第一に優先してきたのは、支持層に受ける政策です。万人のための政治ではなく、お得意さま向けの政治です。それは、ひとえに再選のため。統治よりも選挙キャンペーンを続けてきたと言った方がいいでしょう。

 そのおかげなのかトランプ氏の支持率は四割ほどでほとんど変動しません。米国の景気が良いことが強みになっていますが、それにしても盤石の支持基盤です。

◆結束がカギ握る民主党

 再選戦略は前回選挙の再現。東部から中西部に広がる「ラストベルト」(さびついた工業地帯)がトランプ氏の主戦場です。前回、ここを制して当選をたぐり寄せました。

 対する民主党の候補者選びは混戦です。二月三日の指名争い正式スタートまで一カ月。最近の支持率によると、バイデン前副大統領(77)がトップを走り、サンダース上院議員(78)、ウォーレン上院議員(70)の二人がこれに続き、インディアナ州サウスベンド市のブティジェッジ前市長(37)が先行の三人を追いかけています。

 党内では穏健派のバイデン氏は白人労働者層に人気があり、トランプ氏の支持層と重なります。ウクライナ疑惑でトランプ氏がバイデン氏の捜査をウクライナ政府に要求したのは、そんな事情も計算に入れてのことでしょう。

 サンダース、ウォーレン両氏はともに左派です。民主社会主義者を自称するサンダース氏と、大企業や富裕層への大増税を打ち出したウォーレン氏の急進的な主張に穏健派はついていけません。

 政権奪還を目指す民主党にとって、左派と穏健派の融和を図って結束しないと勝算はありません。

 前回、候補者指名争いでサンダース氏はクリントン氏に敗れはしたものの、予想外の健闘をみせました。ところが、サンダース氏を支えた若者たちを、クリントン氏は取り込めなかった。これも本選挙でトランプ氏に後れを取った大きな要因でした。

◆米国民が下す重い選択

 自分の足らざるところを補う人材を副大統領候補に据えて、幅広い支持を取り付けようという動きが出てくるでしょう。例えば、バイデン氏が指名されれば、リベラルで若者に人気のある女性のハリス上院議員(55)を副大統領候補に指名するというような。

 国際舞台で後退を続けるのか、それともリーダーの座復帰を目指すのか。

 米社会の分断を深化させるのか、それとも修復に動くのか。

 米国民はとても重い選択を迫られることになります。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年01月06日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗】:実り多い年になるように、静かに「一年の計」を考えながら過ごす。

2020-01-07 06:10:36 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】

【筆洗】:実り多い年になるように、静かに「一年の計」を考えながら過ごす。

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:実り多い年になるように、静かに「一年の計」を考えながら過ごす。

 それが、わが国旧来の年初の心の持ちようであろう。言わずもがなではあるが、そんなことを気にしない国もある。米軍が年明け早々、トランプ大統領の命令に基づいて、イラクでイランの革命防衛隊司令官を殺害した▼米国旗を破る人々、数万人の追悼。イランから入ってくる画像は怒りに満ちている。二〇二〇年の世界は近年にないような緊張の中で始まることになった▼挑発のような言葉の応酬がすでに始まっている。ここで止まったとしても、中東で複雑に絡み合った導火線のどこかに火が付かないか。懸念は膨らむ▼トランプ氏の「計」は少し前に定まっていたのだろう。イランが支援する組織の攻撃を受け、先制攻撃も辞さないと国防長官が警告していた。米国は自衛のためと主張するが、要人殺害は事態を大きく進めてしまった▼幻だった大量破壊兵器を理由に先制攻撃したイラク戦争も思い出す。今回も米軍攻撃の計画があったとしながら、詳しい説明はないようだ▼国際社会が危機回避に動くべきだろうが、以前に増して一国主義の道を行く米国は、他国の目を気にしていないようにみえる。今年は十一月に大統領選がある。反イランの米国民の動向が重要という。再選のための「今年の計」を実行しているのであろうか。不穏な年の始まりだ。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2020年01月06日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【私設・論説室から】:3アウトチェンジ法案

2020-01-07 06:10:32 | 【事件・未解決事件・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・旧統一教会を巡る事件他】

【私設・論説室から】:3アウトチェンジ法案

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【私設・論説室から】:3アウトチェンジ法案 

 松の内のざれ言と、お許しいただきたい。

 自分が国会議員なら、首相に閣僚らの任命責任を厳しく取らせる法案を国会に提出したい。国務大臣の任命責任等に関する法律案、名付けて「3アウトチェンジ法案」。

 それでは提案理由説明をお聞きください。

 「安倍内閣では公職選挙法違反が疑われる行為などを理由に閣僚辞任が相次ぎました。昨年十月には一週間に二人の大臣が辞任する異常事態です。安倍晋三総理は、任命責任は私にあると言いながら、責任を具体的に取ろうとはしません。これを放置すれば、日本の民主主義は大きく損なわれます。よってこの法律案を提出し、首相の任命責任を明確にして、政治の道義を確立するものであります」

 具体的には首相が閣僚の任命責任を取ると言いながら何もしなかったら「1アウト」。「2アウト」までは我慢するけれど、三回繰り返したら「3アウト」でチェンジ。つまり内閣は総辞職しなければならないと定める内容だ。憲法との関係が気になるが、そこは安倍内閣お得意の憲法解釈の変更で何とか。

 第二次安倍内閣以降の七年間で閣僚辞任は十人。この法律が最初からあれば首相は三回退陣しなければならない計算だが、そもそも与党議員の反対多数で成立するわけないか。そこで方針変更。内閣の意に沿わない法律の成立を拒んではならないという法案を、先に出します。その提案理由は…。(豊田洋一)

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【私設・論説室から】  2020年01月06日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【首相の一日】:1月5日(日)

2020-01-07 06:10:28 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【首相の一日】:1月5日(日)

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【首相の一日】:1月5日(日)

 終日、東京・富ケ谷の私邸で過ごす。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・首相の一日】  2020年01月06日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:年のはじめに考える 海に吹く風つかまえて

2020-01-07 06:10:24 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【社説①】:年のはじめに考える 海に吹く風つかまえて

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:年のはじめに考える 海に吹く風つかまえて 

 東京電力福島第一原発廃炉への長い道。政府は工程表の見直しを去年の暮れに正式決定し、例えば使用済み燃料の搬出が最大五年、遅れることになりました。つくづく困難な道のりだと、あらためて実感させられます。

 それ以外にも大きな課題が二つ。一つは燃料デブリについて。メルトダウン(炉心溶融)した核燃料が、原子炉格納容器の底まで溶け落ち、冷えて、さまざまな形状に固まったもの。その取り出しは、四十年がかりという廃炉作業の最難関だとされています。

 政府と東京電力は、周辺の放射線量が1、3号機に比べて低く、比較的アプローチしやすい2号機から、来年中に搬出を始めることを決めていました。

 ◆1グラムからの遠い道のり

 ではどうやって取り出すか。検討内容の一部が明らかにされました。ロボットアームを使って、まずは一グラム程度を試験的に数回取り出してみたあと、徐々に量を増やしていくという方針です。

 デブリの量は2号機だけで約二百四十トン。1~3号機で約九百トンに上ると推定されています。一グラムから一歩ずつ。本当に気が遠くなるような道程ではないですか。

 短時間で人を死に至らしめる高線量のままの格納容器内、作業はすべて遠隔操作のロボット頼み、文字どおり手探りで進んでいくしかありません。

 昨年二月、未知の惑星の赤く荒れ果てた大地のような、2号機格納容器の底部。ロボットアームが初めて燃料デブリとみられる小石状の塊に触れ、わずかに持ち上げることができました。

 「八年かけて、やっとデブリに触れることができました。感慨深いものがある」

 原子炉メーカーの技術者のその時の感激ぶりが忘れられません。ほとんど触れただけなのに。

 もう一つは、汚染水。政府は、原発構内のタンクに今もたまり続けている、放射性トリチウムを含む汚染水の処理方法を、そのまま海に流すか、蒸発させて大気中に放出するか、その両方か、三案を提示しました。

 いずれにしても苦肉の策。風評被害を恐れる漁業者の猛反発は必至です。しかし、汚染水の処理が進まなければ、廃炉はさらに長引きます。廃炉費用だけで八兆円。工期の遅れなどがあれば、その程度では、収まりそうにありません。これほどやっかいで、お金もかかる原発に、なぜ日本政府はこだわり続けているのでしょうか。

 ◆もうお話にもならない

 「世界レベルでは原発なんて、もうお話にもなりません」。自然エネルギー財団事業局長の大林ミカさんは断言します。

 フクシマの衝撃で安全費用もかさみ、原発は急速にコスト競争力を失いました。一方、再生可能エネルギーは、風力や太陽光を中心に競争力を高めています。太陽の光も風も安全な上にただだから。

 中でも大林さんが特に注目するのが洋上風力発電です。海上に風車を立て、海風でそれを回して電気をつくります。

 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は世界の洋上風力の導入量は、二〇五〇年までに千ギガワット(大型原発千基分)に達すると予測しています。

 長い海岸線を持つ島国日本は、英国やデンマーク同様、洋上風力の潜在力が豊かな国。温暖化への危機感も募ってか、大手電力会社や外資が参入を進めています。

 東北電力は、青森県つがる市沖で出力四十八万キロワット、東電は洋上風力最大手のデンマーク・オーステッド社と共同で、千葉県銚子沖で三十七万キロワットの計画を進めています。北欧最大のエネルギー企業、ノルウェーのエクイノール社も日本オフィスを開設し、営業活動に乗り出しました。

 電力会社だけではありません。昨年清水建設は、五百億円を投じて高性能クレーンを備えた世界最大級の洋上風力発電施設の建造専用船(自航式SEP船)を発注し、話題になりました。

 ところが政府の導入目標は三〇年までにわずか〇・八ギガワット。原発一基分にもなりません。二〇年までに八~十五ギガワットという中国や二五年までに五・五ギガワットという台湾にも見劣りします。

 ◆原子力の呪縛を解けば

 この期に及んで原発(三〇年度に電源構成比20~22%)や、石炭火力(26%)を重視する国のエネルギー基本計画が、頭を抑えているからです。

 大林さんは指摘します。

 「これを外せば、民間の動きはさらに活発になり、海外からの投資も加速して、日本の洋上風力発電は一気に伸びる。温暖化対策も進みます」

 来年はエネルギー基本計画見直しの年に当たります。見直し作業は今年から。原発と石炭の呪縛を解いて、海風を呼び込まなければなりません。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年01月05日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【首相の一日】:1月4日(土)

2020-01-07 06:10:16 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【首相の一日】:1月4日(土)

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【首相の一日】:1月4日(土) 

 【午前】8時24分、千葉県袖ケ浦市のゴルフ場「カメリアヒルズカントリークラブ」。籔本雅巳錦秀会グループ最高経営責任者(CEO)、松崎勲森永商事社長らとゴルフ。

 【午後】4時49分、東京・富ケ谷の私邸。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・首相の一日】  2020年01月05日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:<多様性の時代に>(5)働く外国人と共生の道を

2020-01-07 05:05:50 | 【移民・難民・亡命・密入国・入管・在留資格・日本語学校・偽装結婚・技能実習生他】

【社説①】:<多様性の時代に>(5)働く外国人と共生の道を

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:<多様性の時代に>(5)働く外国人と共生の道を

 年が明け、「おめでとう」のあいさつを日本語以外で交わす職場もあるのではないか。

 北海道に住む外国人は年々増え今や4万人近い。生産年齢人口が減少し、人手不足が深刻さを増す中、外国人労働者は頼みの綱だ。

 政府は昨年4月、特定技能という在留資格を創設した。

 しかしこの資格で来日した外国人は全国で約2千人にすぎない。初年度だけで最大約4万7千人、5年間で最大約34万5千人を見込んでいたが、大きく当てが外れた。

 法務省出入国在留管理庁によると、認定に必要な試験が一部で行われていないなど国内外で準備が整わないのが原因だという。制度設計の不備は明らかだ。

 一昨年末の入管難民法改正から制度開始まで4カ月しかなく、見切り発車の影響を露呈した。

 ただ政府の無策を嘆くだけでは共生社会の実現は望めない。

 国籍、人種、宗教など多様な背景を持つ人たちが既に隣人として暮らしている。共に助け合い、豊かな地域社会をつくる。道内からそんな実例を増やしていきたい。
「労働者の前に人間」

 雪に覆われた丘の上に並ぶ羊舎。サフォーク種の羊が鳴き声を上げ、駆け寄る。餌の入ったバケツを手にするのはベトナム人のライ・チョンさん(26)だ。

 チョンさんは昨秋、士別市の「しずお農場」に特定技能の在留資格で来た。婚約者のキム・ゴックさん(23)も同じ特定技能の資格で農場のレストランに勤める。

 ゴックさんは3年間、ここで技能実習生として働いた経験がある。「結婚して子どもをつくって、ずっと住みたい。士別が好きです」。2人は笑顔で言った。

 農場や建設会社を持つしずおグループの今井裕会長(68)はベトナム人の受け入れを支援する事業協同組合の代表理事も務める。

 取引先はグループ企業にとどまらず、道内各地の建設業者、水産加工業者に広がる。余計な手数料は取らず、その分を外国人の給料に回してもらう。人権侵害、法令違反がないよう指導も徹底する。

 5年前、農場で初めて技能実習生を採用し、その過酷な実態を知った。来日前に借金をして約100万円を払わなくてはならない。現地で数年分の給料に相当する。

 違法残業、賃金未払い、パワハラなどの人権侵害、そしてこらえきれずに失踪…。国内外でさまざまな利権が絡み、実習生が中間搾取される仕組みもある。

 「労働者である前に人間です、というベトナム人の言葉が忘れられない」と今井さんは言う。
問題ある実習生制度

 新しい在留資格ができても外国人労働者の置かれた状況に大きな変化はない。今井さんのような取り組みは例外的だ。

 特定技能が低調な一方、技能実習生は全国で増え続ける。昨年6月末時点で36万7千人と半年間で3万9千人も増加した。

 北海道は在留外国人の3割が技能実習生で、その割合が大きい。

 劣悪な環境に置かれても実習生は転職できない。外国人を安くて使い勝手のいい労働力として軽視する傾向が企業の側に見られる。

 日立製作所や三菱自動車など大手企業でも相次いで不正が発覚した。問題は根深い。

 特定技能にも懸念はある。転職は可能だが、実際には外国人が自分に合った会社を選ぶのは容易ではない。在留期間は5年と長いのに、家族の帯同が許されない。

 技能実習生として3年働けば、無試験で特定技能の資格が得られる。問題だらけの実習制度を前提にしていることがおかしい。

 技術移転による「国際貢献」など名ばかりの技能実習制度は廃止すべきだ。そこから議論を再スタートする必要がある。
入管見直しが急務だ

 それぞれの違いを理解した上で多様性を認め、自分たちと同じ権利を保障する。

 そうした共通認識が私たちの社会に定着していない。

 「外国人だから安く使っていいんだ、これくらいやっていいんだという気持ちが雇用する側のどこかにあるのではないか」

 札幌で長く、外国人の人権擁護に携わるカトリック札幌司教区難民移住移動者委員会の西千津さん(55)は言う。

 根底にアジアの人々への差別意識、貧しい国々への蔑視はないだろうか。そうであればどんな制度ができても共生は難しい。

 日本の入管行政は難民認定の極端な少なさ、外国人の長期収容についても国内外から厳しい批判を浴びている。昨年、収容中にハンガーストライキで餓死する外国人が出た。看過できない事態だ。

 入国管理の現場で外国人の人権が脅かされている。外国人就労のみならず、入管行政全体の抜本的見直しが急務である。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年01月07日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:<多様性の時代に>(4)表現の自由考える対話を

2020-01-07 05:05:40 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説①】:<多様性の時代に>(4)表現の自由考える対話を

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:<多様性の時代に>(4)表現の自由考える対話を 

 憲法は国民の基本的人権を幅広く保障している。信教、職業選択、学問などの自由は「侵すことのできない永久の権利」である。

 中でも表現の自由は、個人の人格形成だけでなく、国民が政治的な意思決定に関与する意義もあり「とりわけ重要な権利」(「憲法 第四版」芦部信喜)とされる。

 それが揺らいでいる。昨年の国際芸術祭、あいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」の展示中止に端的に表れた。

 原因は、相いれない表現を排除しようとする多数の抗議だ。その分断に乗じて、政治家が一方に肩入れする形で介入した。

 社会の中で一方が他方の権利を力ずくで奪ったり、政治家が異論を排除して物事を進めるようでは、民主主義は成り立たない。

 国民が主役の社会であるためにも、価値の多様性を認め合い、表現の自由を確保する必要がある。

 ■地域住民の満足とは

 あいちトリエンナーレ後、あるイベントが注目された。広島県尾道市の離島、百島(ももしま)から現代アートを発信するNPO法人アートベース百島の「百代(ひゃくだい)の過客(かきゃく)」だ。

 憲法と芸術、プロパガンダを巡る表現者や研究者の連続対話を軸に、関連する作品を展示した。

 参加予定の作品と作者が「不自由展」で攻撃されたため、騒ぎが飛び火して、連続対話の最終回は島に街宣車が来る事態となった。

 だが、実際のところ混乱はなかった。警備や警察の巡回もあるが「対話」という場の力だろう。

 語気荒く作者に詰め寄った人が最後に「作品は許せないが、考えは分かった。話せて良かった」と握手を求める場面もあった。

 スタッフは会期中、抗議に耳を傾け積極的に来場を呼びかけた。「相いれないがこういう作家もいるんだな、と認めてもらうことが出発点になる」と手応えを語る。

 一方、行政の立場は微妙だ。

 尾道市は近年、現代アートによる地域振興に取り組んできた。広島県が今年、県東部で初めて開く国際芸術祭の舞台でもある。

 「百代の過客」は、補助を受けていないがそのプレイベントでもあり、市や県は電話やメールによる猛烈な抗議「電凸(でんとつ)」に加え、議会対応にも追われた。

 尾道市は「検閲はできない。一方で、行政としては地域住民の満足度向上につながるものをやるのが仕事だ」と苦衷を隠さない。

 問題は、支持より抗議の方が「大きな声」をもちやすいことだ。

 ■危うい政治家の発言

 あいちトリエンナーレでは、芸術祭実行委の会長代行でもある河村たかし名古屋市長らが「公金を投じて」「公的施設で」行うことを繰り返し批判した。

 公平公正に税金を使うことは必要だとしても、文化芸術に関しては思想統制を招く恐れがある。

 愛知県の検証委員会が、施設や資金の提供は行政が内容を支持したり裏書きすることにはならない、とくぎを刺したのは当然だ。

 河村氏は、展示が「日本人の心を踏みにじる」と座り込みまで行った。私的な思想を公共性に優先したと見られても仕方ない。

 「不自由展」への抗議が暴力的な力を持ったのは、ネット社会によるところが大きい。拡散力の強い会員制交流サイトで抗議があおられ、電凸が浴びせられた。

 自分の表現の手段が、他人の表現の自由を脅かす道具になり得ることに留意する必要がある。

 深刻なのは、政府がこうした抗議を結果的に是認したことだ。

 菅義偉官房長官は、開幕直後から芸術祭への補助金について「精査する」と言明し、文化庁は手続き上の不備を口実に外部委員を入れずに全額不交付を決定した。

 いったん交付を決めておきながら後から事実上の懲罰を科すような手法は表現活動を萎縮させる。

 同じ頃、独立行政法人日本芸術文化振興会は、出演者に不祥事があった映画への助成金交付を取り消した。「公益性の観点」で取り消せるよう要綱改定を行った。

 「公益性」の意味は不明確だ。恣意(しい)的運用が懸念される。

 こうした不当な圧力に対し、粘り強く撤回を求めねばならない。

 ■あきらめない覚悟で

 公権力による不当な介入を排除するには、ネットで拡散する「大声」に流されず、地域で表現の自由を考え、共通認識を積み上げる努力が行政や市民に求められる。

 川崎市の「KAWASAKIしんゆり映画祭」は、慰安婦問題を扱った映画の上映をいったん見送ったが、事務局や映画人、ファンが激論を交わし、実行委の背を押して、最終日の上映を実現した。

 道内でもさまざまな発信が行われている。次の冬には3年に1度の札幌国際芸術祭も開かれる。

 積み残された課題と向き合い、社会の豊かさをどう守るか、私たちの知恵と覚悟が問われている。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年01月06日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:<多様性の時代に>(3)スポーツが世界を変える

2020-01-07 05:05:30 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説①】:<多様性の時代に>(3)スポーツが世界を変える

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:<多様性の時代に>(3)スポーツが世界を変える 

 「スポーツには世界を変える力がある。人々を鼓舞し、団結させる力がある」

 人種隔離政策(アパルトヘイト)撤廃後の南アフリカで大統領となり、国民融和を進めたネルソン・マンデラ氏の言葉だ。

 人種、民族、宗教、性別、世代、政治、そして障害の有無。違いを乗り越えることは容易なことではない。

 だが、昨年日本で開かれたラグビーのワールドカップで、世界は多様性が持つ力を目の当たりにしたはずだ。

 7カ国の出身者が集った日本代表は初のトップ8入りを果たし、異なる力が一つとなる「ONE TEAM」の可能性を証明した。

 栄冠を手にしたのも、黒人として初めて主将を務めたコリシ選手率いる南アフリカだった。

 黒人初の大統領誕生から、四半世紀の節目に示した共生の力。そこにスポーツの可能性がある。

 ■問われる理念の実行

 世界が注目するスポーツの祭典、五輪とパラリンピックが今夏、東京で開かれる。56年ぶりの開催となる大会は多様性と調和の実現を基本理念の一つに掲げる。

 異なる文化との出会いを通じ、さまざまな価値観が共存する文化の礎を築く機会としたい。

 東京大会のメイン会場となる国立競技場が昨年、東京都の神宮外苑の杜(もり)の中に完成した。

 すべての人が快適に利用できるスタジアムをコンセプトに、世界最高水準のユニバーサルデザイン(UD)を標榜(ひょうぼう)する。

 設計段階から、障害者や育児グループ、選手などの団体から計70回のヒアリングを重ねた。トイレのボタンなどの位置をミリ単位で修正し、体調不良時に気持ちを落ち着かせる休憩室も設けた。

 少数者でも快適に過ごせる施設は、誰もが利用しやすい場所となる。

 器は整った。問われるのは理念の実行だ。

 後利用の形態が定まらず、民営化計画策定が1年先送りされた。負の遺産となるようなことがあってはならない。

 先進的なUDが全国の施設のモデルとなるよう、法令整備や行政的支援を含めて知恵を絞りたい。 

 ■「心の壁」を壊すもの

 違いを相互に受け入れ、認め合うことは社会の進歩に欠かせない。いかに多様性の調和を図るか。

 東京五輪・パラリンピックで、「先導的共生社会ホストタウン」に認定された浜松市の取り組みが参考になる。

 自治体と大会参加国・地域が、交流を通じて地域活性化を図るホストタウン。パラリンピアンを受け入れる共生社会ホストタウンで、より先進的と認められた。

 1990年の入管難民法改正後、市内の工場で働く日系ブラジル人が急増した浜松市。文化や生活習慣の違いから生じる摩擦や課題を克服してきた歴史は長い。

 行政の情報発信の多言語化、支援拠点施設の開設、不就学児ゼロを目指す教育支援など、行政と民間が共同で取り組む共生施策は、その手厚さに驚かされる。

 官民ともに共通するのが、外国人をともに地域社会をつくる一員と考える意識だ。多文化共生社会の実現に欠かせない条件だろう。

 浜松市では、ブラジルの五輪とパラリンピック代表が合宿などを行うが、共生社会の実現に向けた取り組みの一里塚にすぎない。

 日本で初めてUD条例を設置した浜松市が今目指すのは、心のUDの定着だという。外国人との共生やバリアフリーの推進から、一歩先を見据えた理念は明快だ。

 ともすれば、ホストタウン事業は、行事や施設整備、経済効果に目を奪われがちになる。東京大会の開催を通じて何を残すのか。ビジョンを見失ってはならない。

 ■次代につなげる重み

 世界を見渡せば、スポーツ界も楽観できる状況にはない。

 宗教や性別、政治に翻弄(ほんろう)される選手は絶えない。

 五輪開催経費の膨張は立候補都市の偏りを招き、多様な地域での開催を困難にしている。

 国連総会は昨年、大会期間中の国際紛争の休戦決議を採択したが、支援が必要とされる難民は7千万人を超える。

 東京大会では難民選手団も参加するが、誰もが競技に専念できる環境とは言いがたい。

 しかしながら、スポーツは無力ではない。銃弾を止めることはできないが、引き金に指をかける人の心に訴えることはできる。

 五輪のマラソンと競歩が行われる札幌市は、2030年の冬季五輪の招致も目指す。東京大会がもたらすものを受け継ぎ、考え、改善していくことは、北海道の役割ではないか。

 それは招致活動の成否を問わず、次代につながる財産となる。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年01月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:<多様性の時代に>(2)アイヌ文化を学ぶ大切さ

2020-01-07 05:05:20 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説①】:<多様性の時代に>(2)アイヌ文化を学ぶ大切さ

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:<多様性の時代に>(2)アイヌ文化を学ぶ大切さ 

 先住民族のアイヌ民族とあとから移り住んだ和人が数多く暮らす北海道は、日本における多文化共生社会の先進地となり得る。

 北海道や千島列島、樺太(サハリン)で生まれ、育まれたアイヌ文化が根付き、和人の文化と多くの接点を持っているからだ。

 国連の先住民族の権利に関する宣言は「先住民族の知識、文化および伝統的慣行の尊重は、持続可能で衡平な発展と環境の適切な管理に寄与する」としている。

 こうした理念を日本が国際社会の一員として実現する上で、北海道は重要な役割を果たすだろう。

 昨年5月施行のアイヌ施策推進法は、アイヌ民族を法律で初めて先住民族と位置づけた。今年4月には、アイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が胆振管内白老町に開設される。

 これを機に多文化共生社会づくりへの機運を高め、北海道の豊かな未来に向けて歩みを進めたい。

 ■互いを認め尊重する

 アイヌ民族の学生と和人の学生が共にメンバーとなってアイヌ文化の担い手を育てる札幌大のウレシパクラブは先月、米アラスカ州の先住民族との交流会を開いた。

 アラスカ州の参加者が「アイヌ民族でない人はなぜクラブに入ろうと思ったのか」と尋ねた。

 「小さい時に阿寒でアイヌの方々の踊りを見て感銘を受けたから」と答えたのは埼玉県出身の男子学生。将来はアイヌ文化を発信する仕事に就きたいという。

 クラブの1期生で卒業後は札幌大職員としてサポート役を担う岡田勇樹さんは強調する。

 「和人の学生はアイヌの学生を、アイヌの学生も和人の学生を見て学び、互いのアイデンティティーが確立されていく。北海道の未来、日本の未来は、認めて尊重し合う多文化共生なしに語れない」

 こうした理念や活動に共感の輪が広がり、クラブを支援する企業や個人の会員も増えている。6期生まで約30人が卒業し、ウポポイで働く人もいる。

 厳しくも豊かな北海道の自然に根差し、悠久の時を刻んできたアイヌ民族の文化や歴史に学ぶことが北海道の真の姿を知る上で欠かせない。

 ■言語復興が欠かせぬ

 「わが国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たちは厳粛に受け止めなければならない」

 衆参両院は2008年「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を全会一致で採択した。

 それを基盤に設置が決まったウポポイは、「(おおぜいで)歌うこと」というアイヌ語だ。

 「存立の危機にあるアイヌ文化を復興・発展させる拠点」であり、「先住民族の尊厳を尊重し、差別のない多様で豊かな文化を持つ活力ある社会を築くための象徴」と位置づけられる。

 力を入れるのは言語の復興だ。

 施設の展示解説や案内板はアイヌ語を第1言語として表記し、音声ガイドにもアイヌ語を採用するという。

 明治以降の政府の同化政策でアイヌ語は衰退し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が消滅の危機にあると認定している。この150年の間に失われた言葉を少しずつ取り戻したい。

 ウポポイの今後の運営にも課題はある。その一つが敷地内に設置される「慰霊施設」だ。

 全国の大学で保管されていたアイヌ民族の遺骨はこの施設に集約されるが、出土地域への返還を求める声もある。各地のアイヌ民族が求める要望を実現してこそ、実効性ある政策と言えよう。

 ■権利の回復は道半ば

 昨年のラグビーワールドカップで話題になったニュージーランド代表のハカは、先住民族マオリの舞踊として名高い。

 マオリ語は消滅の危機にあったが、1970年代から復興運動を始め、マオリ語による幼児教育を行い、87年に公用語になった。

 幼稚園から大学まで学習環境が整えられ、日常会話を話せる人も増えている。土地の返還や補償など権利回復も進んだ。

 米国では自治権や居留地での狩猟や漁労が認められ、フィンランドには先住民族の議会がある。カナダでは、政府が先住民族と交渉し、多くの土地が返還された。

 道内では昨年、サケの捕獲を先住民族の権利だとするアイヌ民族と、許可のない捕獲は法律違反だとする道が対立する事例が論議を呼んだ。アイヌ民族の権利回復はまだまだ遅れている。

 国連宣言は、文明や文化の多様性や豊かさが「人類の共同遺産を成す」とうたっている。国民一人一人が理解を深め、多文化共生への取り組みを前進させなければならない。
 ※「ウレシパクラブ」の「シ」は小さい字

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年01月04日  10:39:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:<多様性の時代に>(1)相互理解と協調への礎を

2020-01-07 05:05:10 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説①】:<多様性の時代に>(1)相互理解と協調への礎を

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:<多様性の時代に>(1)相互理解と協調への礎を 

 各国が自己都合を優先した行動を強めている。世界はどこへ向かうのか、先が見えない。

 今年75周年の国連は、その憲法である国連憲章や1948年に採択した世界人権宣言で、すべての人は人種、性別、宗教などで差別されてはならないとした。多様性を尊重し人権を保障するものだ。

 その理想がかすんで見える。

 「自国第一主義」を掲げる米国のトランプ政権は、人種差別を助長する発言を繰り返している。欧州には排他的なポピュリズムがまん延し、中国は香港などで自由を求める民衆を抑圧している。

 日本では民主主義の土台である表現の自由を巡り対立が先鋭化した。先住民族や外国人など異なる文化や価値観を持つ人たちとどう共生していくかも大きな課題だ。

 自分に近い人とだけ同調するのではなく、多様性を理解し協調を図る。そのような意識と行動が、国にも個人にも求められている。

 ■瀬戸際の多国間主義

 米国は今秋、大統領選を迎える。現職のトランプ大統領が再選するかが焦点だ。

 トランプ政権は冷戦後の米国が重視してきた多国間主義に背を向けている。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明し、北大西洋条約機構(NATO)などの同盟にも懐疑的だ。

 自国第一を継続するのか、転換するのか。世界を左右する米国民の選択に注目したい。

 身勝手な振る舞いは各国に広がっている。

 英国は自らの主権に固執し、今月中に欧州連合(EU)からの離脱を決める。国際協調をけん引するEUは加盟国の結束に腐心し、域内課題に専念する懸念がある。

 覇権主義的な振る舞いが目立つ中国には各国が警戒感を強める。

 米中対立は「新冷戦」とも呼ばれる。先進7カ国(G7)首脳会議や20カ国・地域(G20)首脳会合は結束からほど遠く、米中両国の経済摩擦による世界経済の動揺を抑えられない。

 破滅的な結果を招く対立を乗り越え、協調の道に戻る糸口を何とか見いだす必要があろう。

 ■難題にどう対処する

 イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は近著「21 Lessons」で警告する。

 「人類はグローバルな協力を通してしか解決のしようがないような、三つの共通の難題に直面している」。難題とは核戦争、気候変動、生物工学などの技術革命だ。

 いずれも「世界を滅亡に導きかねない」差し迫った課題であることは明らかだろう。

 世界の核兵器の9割を保有する米ロの関係は険悪さが漂う。昨年、中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効した。来年が期限の新戦略兵器削減条約(新START)の延長も危ぶまれる。

 北朝鮮は国際社会の非難を無視し、核開発継続の構えを見せる。核兵器の力を誇示して外交を有利に運ぼうとする発想は危険だ。

 発効50年を迎える核拡散防止条約(NPT)は今年の再検討会議で不拡散体制を再建してほしい。

 豪雨など異常気象の要因とされる温室効果ガスへの対応も鈍い。

 パリ協定離脱を表明した米国のほか、中国やインドなども削減目標の上積みに消極的だ。日本は批判が強い石炭火力発電に固執する。異変に危機感を持つべきだ。

 技術革命を巡っては人工知能(AI)や遺伝子操作などが人類に与える影響が懸念される。新しい問題に、国境を越えて対策を講じなければならない。

 ■行動始めた若者たち

 目先の自己利益ばかりを追い、他国との協調に後ろ向きなリーダーたちには、もう任せておけない。そんな意識が世界中の若い世代に広がっている。

 「気候は変えずに自分が変わろう 雪を守ろう、自然を残そう」

 12月下旬、氷点下の札幌中心部の交差点で、高校生たちが呼びかけた。北星学園女子高の3年生らが始めた、温暖化対策の運動だ。

 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)が取り組む学校ストライキ「未来のための金曜日」に触発され、毎週金曜日の放課後に街頭に立つ。

 中心メンバーのマット光さん(17)は「温暖化は全員の未来にかかわる問題。まずは自分たちができることから始めなければと思った」と強調する。6人で始めた活動には今、20人以上が集まる。

 現実から目を背け続けて手遅れになれば、影響を受けるのは今の若者や将来の世代だ。危機感を共有し、相互理解に根差した社会づくりに一人一人が関わっていくことが、未来への一歩につながる。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年01月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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