【社説①】:道内で新型肺炎 情報発信をしっかりと
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:道内で新型肺炎 情報発信をしっかりと
道はきのう、道内入りした中国湖北省武漢市在住の40代女性が新型コロナウイルスに感染し、肺炎を発症したと発表した。
道内の病院に入院中で、容体は安定しているという。
道外でも、武漢市からのツアー客を乗せた奈良県在住のバス運転手の60代男性の感染が確認された。国内で初めての人から人への感染例となっている。
感染者は中国から世界へと拡大し、2012年の中東呼吸器症候群(MERS)を上回った。
国内ではネットなどを通して不正確な情報も広がっている。
厚生労働省や保健所など関係機関は、正しい情報の迅速な発信に努める必要がある。医療体制を整え、感染拡大を抑えるよう全力を挙げてもらいたい。
道によると、女性は22日から道内観光をし、26日夜にせきや発熱の症状を訴え、27日に医療機関を受診し肺炎と診断された。
自覚症状のない潜伏期間は長くて14日間あり、空港など水際で阻止するのは困難なのが実情だ。
発症前でもせきやくしゃみなどでウイルスは広まる。うつし、うつされたりを防ぐため、マスクの着用や手洗いが欠かせない。
札幌市内では31日から雪まつりが始まり、外国人観光客も訪れる。宿泊施設や飲食店などは接触感染を防ぐための消毒も必要だ。
医療機関は感染者の受け入れを想定した対応も求められよう。
感染が疑われる場合、事前に医療機関に連絡した上で、マスクを着けて受診するよう心掛けたい。
問題なのは、全国83カ所の地方衛生研究所の検査体制が十分ではないことだ。
道内には道や札幌市、函館市に3カ所あるが、結果の確定に必要なウイルスの遺伝子サンプルがなく、国立感染研での確認検査が必要なため、時間がかかる。
厚労省は検査体制を整備するとともに、簡易に検査できるキットの開発を急がねばならない。
政府は、交通網が封鎖された武漢滞在の邦人を帰国させるチャーター機を派遣した。
新型肺炎を感染症法上の「指定感染症」とすることも閣議決定した。患者の強制入院や就業制限が可能になる。
ただ、現時点ではMERSや重症急性呼吸器症候群(SARS)ほど致死率は高くない。感染力もインフルエンザよりやや高いものの、はしかや風疹より低い。
あらぬ差別を生まぬよう、冷静な対応が求められよう。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年01月29日 05:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。