【社説・01.15】:ASEAN外交 アジア安定へ連携強化を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.15】:ASEAN外交 アジア安定へ連携強化を
アジアの平和と安定を維持するために、日本は米国と東南アジアをつなぐ役割が期待されている。積極的に貢献していきたい。
石破茂首相がマレーシアとインドネシアを訪問し、両国首脳と会談した。昨年10月に就任した首相にとって、国際会議を除いて初となる2国間外交だ。
日本は近年、中国が影響力を強める東南アジアとの連携強化に注力している。
安倍晋三(第2次内閣)、菅義偉、岸田文雄各氏も首相になって最初の2国間会談の訪問先として、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国を選んだ。
マレーシアは今年のASEAN議長国を務める。インドネシアはASEAN最大の約2億8千万の人口と経済規模を有しており、今後も成長が見込まれる。
今回の訪問は、シーレーン(海上交通路)の要衝に位置する両国と安全保障分野で結束を強めるとともに、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国への関与を強める狙いがあった。
マレーシアのアンワル首相との会談では、東・南シナ海で覇権主義的行動を強める中国を念頭に、法の支配に基づく国際秩序の維持に向けた連携拡大を確認した。
インドネシアのプラボウォ大統領との会談ではさらに踏み込み、日本からの高速警備艇の無償供与を含む安保協力の推進で一致した。
警備艇の供与は、日本が防衛装備品などを無償で提供する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を活用する。供与額は10億円だ。
インドネシアとは外務・防衛閣僚会合(2プラス2)の年内開催にも合意した。
石破首相の2カ国訪問は、米国で2期目のトランプ政権が20日に発足することを多分に意識している。
トランプ氏は第1次政権でASEANと日米中ロなどが参加する東アジアサミットを繰り返し欠席し、ASEANの不信を招いた。
多国間協調に後ろ向きなトランプ政権の再始動により、ASEANと米国との関係が弱まる恐れがある。対照的に経済力を背景とした中国への傾斜が強まりかねない。
こうした情勢から、石破首相はASEANを引き付けようと、2カ国に安全保障や経済分野で協力する姿勢を強調した。日本は引き続き、ASEAN各国との連携を強化すべきだ。
同時に日本に求められるのは、アジアにおける米国の影響力を維持する役割だ。石破首相は2月にトランプ氏と会談する方向で調整している。アジアに関与する重要性を直接説いてほしい。
留意しなければならないのは、対米協調一辺倒にならないように、中国と対話する道を広げることだ。アジアの安定のため、日本はバランスの取れた外交を展開する必要がある。
元稿:西日本新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月15日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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