【社説・01.16】:韓国大統領拘束/民主主義破壊を猛省せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.16】:韓国大統領拘束/民主主義破壊を猛省せよ
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領がきのう、「非常戒厳」の宣言を巡る内乱容疑などで拘束された。
高官犯罪捜査庁(高捜庁)と警察などの合同捜査本部は3日に続き2回目となる拘束令状の執行に乗り出し、現職の大統領が初めて拘束されるに至った。逮捕は避けられまい。
昨年12月の戒厳令以降、韓国政治は混乱を極め、安定化への道筋は全く見えない。尹氏は国会で弾劾訴追され、職務停止中だ。大統領権限を代行した韓悳洙(ハンドクス)首相も、弾劾訴追されて職務停止になった。現在は崔相穆(チェサンモク)経済副首相が代行を務めるが、野党が反発を強めている。
政局を反映し、国民の間でも尹氏支持の保守層と野党支持の革新層の対立が激しくなっており、深く憂慮する。大統領公邸前ではきのうも尹氏の支持者と逮捕を求める人たちが大勢集まり、気勢を上げた。
社会の分断をあおった尹氏の責任は極めて重い。検事総長まで務めながら、「法の支配」に真っ向から抵抗し続けている。異常事態と言うほかない。捜査当局の出頭要請に一切応じず、大統領警護庁を使って一度は拘束を阻止した。
自らを正当化する姿勢は変わらない。尹氏は拘束前に撮影した映像メッセージで「流血の事態を防ぐため、不法捜査だが出頭に応じることにした」と述べた。高捜庁は本来内乱罪の捜査権を持たない、との指摘があることなどを踏まえ、「この国では法が全て崩壊した」と捜査当局を批判している。
しかし尹氏は、異論を封じるため戒厳令を発令し、軍隊を動員して権力を守ろうとした点を猛省しなければならない。民主主義を破壊する行為であり、国際社会における韓国の信用を大きく傷つけた。大統領を辞任するのが筋である。
検察によると、国会議員による戒厳令の解除要求決議を妨げるため、尹氏は軍や警察の幹部らに直接指示した疑いが持たれている。尹氏側は完全否定しているが、軍や警察の幹部は容疑を裏付ける供述をしており、取り調べに応じる責任がある。
憲法裁判所では、尹氏の罷免の是非を判断する弾劾審判が始まった。ここでも自らの正当性を主張するとみられる。結論が出るのは早くても3月ごろの見込みといい、外交の停滞が懸念される。
折しも今年は日韓国交正常化60周年の節目にあたる。13日にはソウルで両国の外相が会談したばかりだ。国際情勢の先行き不透明感が強まる中、東アジアの安定へ日韓が協力、連携する重要性は一層高まっている。韓国は政情の安定化に全力を注ぐとともに、両国政府は関係維持に努力を重ねなければならない。
元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月16日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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