【社説・01.18】:次世代へ/継承の芽を地域で育てる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.18】:次世代へ/継承の芽を地域で育てる
阪神・淡路大震災の発生から30年のきのう、兵庫県内各地で追悼行事が開かれた。神戸・三宮の東遊園地には早朝までに昨年の倍近い1万人超が訪れ、祈りをささげた。
毎年関連行事を調査している市民団体によると、この時期に県内で催される追悼行事は58件で、過去最多だった10年前の「震災20年」と比べてほぼ半減した。主催者の高齢化や資金難などが背景にあり、新型コロナウイルス禍で中断したままの行事もあるという。
一方、今年初めて企画された催しや、会場を移すなどして復活した行事もある。年月を重ねて地域に根付いたものは簡単にはなくならない。被災地の記憶を伝える取り組みを、まちの未来を語り合う場として次の世代につないでいきたい。
震災を知らない若者に、何をどう継承するかが共通の課題となる。
27回目を数える「1・17KOBEに灯(あか)りをinながた」が開かれたJR新長田駅前広場(神戸市長田区)では、市内の複数大学の学生ボランティアが会場設営などを担った。
区社会福祉協議会や地域のNPOなどでつくる実行委員会に参加した「神戸大学ボランティアバスプロジェクト」は実行委の歩みを紹介するパネルを作った。ボラバス代表の4年生井上光起(こうき)さん(24)は「ここまで長く続いたのは地域の人のつながりがあるから。震災を知らない私たちもオープンに受け入れてくれた。一緒に活動するうちに、長田の歴史や文化をしっかり学んで、伝えたいと思うようになった」と話す。
神戸市は、3月に予定する「震災30年市民フォーラム」の企画運営を震災後生まれの実行委員に委ねた。公募に応じた10~20代の13人が復興や防災に取り組んできた団体などに取材し、プログラムを練る。担当する市危機管理室の高槻麻帆係長(45)も震災当時は中学生だった。「震災を知らない世代に関心を持ってもらうため、彼ら自身が知りたいことを出発点に自分たちに何ができるかを考えてほしい」と見守る。
兵庫県では震災後生まれが4分の1を占める。神戸市では震災を経験していない市民が半数を超える、との推計もある。彼らにとって阪神・淡路は「教科書で学ぶ災害」となり、自分ごととしてはとらえにくい。今回ボランティアに参加していた学生からも「震災30年とは知っていても、自分が関わることを想像していなかった」との声を複数聞いた。
だからこそ、被災者と直接対話し、活動する機会は貴重だ。若者同士や多世代の交流の場を増やし、若者が主役となる事業などで後押しする必要がある。継承の芽を地域ぐるみで大切に育てなければならない。
元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月18日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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