【社説・01.16】:韓国大統領拘束 アジアの不安定化を懸念
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.16】:韓国大統領拘束 アジアの不安定化を懸念
韓国政治の混迷がさらに深まれば、影響はアジアの安定にも及ぶ。異常事態が長期化しないことを望む。
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が、高官犯罪捜査庁(高捜庁)や警察などの合同捜査本部に拘束された。昨年12月の非常戒厳宣言で、内乱を首謀した疑いなどが持たれている。
現職大統領の拘束は初めてだ。尹氏は既に国会で弾劾訴追され、職務は停止されている。国政がさらに停滞することは避けられないだろう。
尹氏側は「内乱罪に当たらず捜査は違法」と主張し、捜査当局の出頭要請に一切応じなかった。大統領警護庁を動員し、一度は拘束令状の執行を阻止した。
憲法裁判所で始まった罷免の是非を判断する弾劾裁判にも出廷していない。
「弾劾にも捜査にも堂々と立ち向かう」と述べていた尹氏だが、とても堂々たる態度とは思えない。
非常戒厳後の言動を見る限り、大統領の強大な権限を保身のために使ったと批判されても仕方あるまい。
元検事総長でありながら、法治への抵抗を繰り返し、国民の対立を激化させた責任は免れない。拘束に際して発表した談話で、国民への謝罪を欠いたのは残念だ。
大統領公邸周辺には、拘束に賛同する国民、尹氏の支持者がそれぞれ集結して騒ぎになった。与党・保守派と野党・革新派の溝がさらに深まることを憂慮する。
尹氏の拘束に保守派は強く反発している。高捜庁には内乱罪の捜査権はないと指摘する声も上がる。弾劾訴追されてもなお、尹氏の支持層は崩れていない。
非常戒厳を発端とする混乱は1カ月半近く続いている。その影響は国民生活のみならず、緊張が高まる東アジア情勢にまで広がる。
週明けには米国で、多国間協調に後ろ向きなトランプ政権が再始動する。バイデン政権下で強固になった日米韓の連携体制に米国をつなぎとめるため、韓国が果たす役割は大きい。
ロシアと事実上の軍事同盟を結んだ北朝鮮は、韓国への敵対姿勢を強めている。ミサイル発射などの挑発行為をエスカレートさせており、日米韓連携の揺らぎを見て核実験に踏み切る恐れもある。
覇権主義的行動を強める中国の出方も気がかりだ。
岩屋毅外相は先日、韓国を訪問して趙兌烈(チョテヨル)外相と会談した。昨今の状況を鑑み、両国関係の重要性を確認するためである。
リーダー不在の韓国政治と外交に長く空白が生じれば、国際的な信頼を損なう恐れもある。日本などの関係国は、安定を取り戻すまで支援を惜しんではならない。
韓国内では、まず平静を保ちたい。野党は大統領拘束に乗じて対立をあおり、国民の分断を広げる行為を慎むべきだ。国民は事態を冷静に受け止めてほしい。
元稿:西日本新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月16日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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