【卓上四季】:起き上がり小法師(こぼし)
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:起き上がり小法師(こぼし)
福島県会津地方の郷土玩具「起き上がり小法師(こぼし)」は親指大の人形の底に重りがあり、倒してもすぐ起き上がる縁起物だ▼2006年、これを国会に持参したのが民主党国対委員長で会津が地元の渡部恒三氏。偽メール問題で打撃を受けた党の再起を託し同僚議員に配った▼ただ肝心の前原誠司代表のは倒れたままで、渡部氏は「転び方が悪かったかな」と苦笑い。程なく前原氏は辞任した。それでも起き上がり政権奪取を果たし、また倒れ…。以後、再起を果たせぬまま党は割れた▼その立憲民主党と国民民主党が合流し新党を結成することになり、きょう代表選が告示される。だが玉木雄一郎代表や前原氏ら国民側の主立った議員に不参加者も出て、元のさやに収まったとさえ言い難い。不運にも安倍晋三首相の後継の自民党総裁選びと重なり、埋没気味だ▼先月死去した渡部氏は自民党竹下派出身で権力の裏表を知る一方、面倒見の良さとユーモラスで素朴な会津弁の語りで「黄門様」と慕われた。政策に明るい議員は多いが一体感に欠ける党内で、貴重な存在だった▼晩年は会津若松市の自宅で囲碁を楽しむ日々。地盤を継いだ後輩議員が今の野党に必要なものは何かと尋ねると「許すこと」と答えたという。大きな目標を共有できず、路線対立を繰り返す現状への戒めだったのだろう。その遺志をくみ再び立ち上がる日はくるだろうか。2020・9・7
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2020年09月07日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。