【社説①】:GoTo拡大 感染増なら見直し必要
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:GoTo拡大 感染増なら見直し必要
政府は新型コロナウイルス対策の観光支援事業「Go To トラベル」の対象に、来月から東京発着分を追加する。
秋の行楽期に、東京への旅行や約1400万人の都民を除外したままでは、事業の効果が十分に発揮されないとの理由だ。
すでに該当する旅行商品の販売が始まった。春から苦境にあえぐ観光業界の期待は大きい。
だが、東京では先週200人超の新規感染者が出る日があった。追加されれば、地方の感染リスクが高まることは避けられまい。
緊急事態宣言の解除で人の移動が広がる中、7月の連休前に事業を前倒しで始めたことが、後の感染再拡大の一因になったとの見方がある。
政府は今月下旬の感染状況を確認した上で最終判断する。慎重に検討し、状況次第では東京追加の見直しも躊躇(ちゅうちょ)してはならない。
政府は追加の理由として、東京の新規感染者数が減少傾向にあることなどを挙げている。
だが、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は「(東京の感染状況は)完全に落ち着いたとは言えず、再燃の可能性はまだある」と注意を促している。
政府の前のめりの姿勢には危うさを感じざるを得ない。
国民が安心して旅行できる環境を整えるためにも、感染状況に応じて対象地域を臨機応変に見直すルールが必要ではないか。
分科会は感染状況が2番目に深刻な「ステージ3」以上の都道府県を除外するよう提言した。政府は専門家の知見を尊重し、分かりやすい基準を示すべきだ。
事業の効果と感染への影響を絶えず検証することも欠かせない。
政府は自治体や医師会などと協力して、十分な検査と科学的なデータの収集に努め、国民に説明してもらいたい。
これまでの利用が、割引額が大きくなる大手の高額な宿泊施設に偏っているとの指摘がある。
政府は中小向けの予算枠を確保する方針という。事業を継続していくのなら、迅速に実行することが肝要である。
東京から道内を訪れる観光客も増加が予想される。道内の宿泊施設などは、レストランや浴場の人数制限、検温などの感染防止策を緩めないよう心がけたい。
道内から東京へ出かける人も増えるだろう。人の移動が増えれば感染のリスクも高まる。手洗いの励行や少人数での旅行など、基本的な対策を守ってほしい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年09月23日 05:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。