路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【卓上四季】:私の杯で

2020-09-13 05:05:10 | 【社会保障施策・年金(国民、老齢、共済、障害)・医療、介護保険・生活保護・

【卓上四季】:私の杯で

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:私の杯で

 森鴎外の作品に「杯」という短編がある。7人の少女たちがそれぞれに大きな銀の杯を持って、湧き水を飲みに出かける。遅れて一人の娘がやってくる。杯を持ってはいるが小さくて黒っぽい▼先に着いていた少女たちは口々に「お前さんの杯は妙な杯ね」「変にくすんだ色だこと」などと言って、自分たちの銀の杯を使うよう迫る。だがその娘は「わたくしはわたくしの杯でいただきます」と毅然(きぜん)と断るのだ。束縛を嫌い、孤高を貫く鴎外の姿が重なる▼自らの意志を通すのは容易ではない。どうしても社会の風潮に流され、多数に同調してしまいがちだ▼そんな精神が蔓延(まんえん)し、子どもに影響しているのか。国連児童基金(ユニセフ)によると、日本の子どもは幸福度が世界最低レベルという。学校でのいじめや家庭の不和が理由に挙がる▼コロナ禍で深刻さが増していないか心配になる。生活が厳しくなり、教育を学校任せにする傾向が強まれば、親子の距離は遠のく。大人の目が学校に届きにくくなる▼そうでなくても、子どもはさまざまな評価にさらされ、不安を強める。そこから逃れようと、身近に異質な者を無理やり見いだし、仲間とともに孤立へと追いやる。特定の者を排除する現象は、大人の集団形成の過程でも必ず見られる、と哲学者鷲田清一さんはいう。子どもの世界はまさに社会を映す鏡であろう。大人の責任はあまりに重い。2020・9・13

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2020年09月13日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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