【卓上四季】:変わらぬ怖さ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:変わらぬ怖さ
米カリフォルニア州にある原子力発電所を、地元テレビ局の女性キャスターらが取材に訪れる。その時、地震が発生し、原子炉は緊急停止。炉心の冷却水が漏れた。そのうえシステムが誤作動し、水位計は下がらず、事態の把握が遅れる。炉心溶融一歩手前の状況が迫った▼米映画「チャイナ・シンドローム」の冒頭場面だ。米国での公開は1979年3月だった。その直後、ペンシルベニア州のスリーマイル島原発で、映画に似た事故が起こる。42年前のきょうのことだ。映画は予言と言われ、注目を集めた▼10年前の東京電力福島第1原発事故の数日後、この原発周辺を取材した。当時駐在していた首都ワシントンから車で2時間ほど。状況が全く分からないまま避難させられ、「今でも恐怖が蘇(よみがえ)る」と話した被災者を思い起こす▼わが国では今も、多くの人たちが地元福島に戻れずにいる。一方で核のごみの最終処分も見通せないまま、政府は原発再稼働へ動きを強める▼東電柏崎刈羽原発ではテロ対策に重大な不備が見つかった。原子力規制委員会による抜き打ち検査の結果だ。放置するつもりだったのか。そんな危うさを感じる▼映画で「大衆は事故の際、危険にさらされたのか」と原子炉管理責任者が問われる場面がある。答えは「原発では起こりうる事故はすべて考慮されている。あれは事故ではない」。今も変わらぬ体質に身が凍る。2021・3・28
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2021年03月28日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。