《社説①》:参院の選挙制度改革 今度も間に合わなかった
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:参院の選挙制度改革 今度も間に合わなかった
夏の参院選は、想定される公示まで約2カ月に迫った。選挙区の「1票の格差」を是正するための選挙制度改革は、間に合わないまま選挙戦に突入しそうだ。
参院の「1票の格差」は2021年9月の選挙人名簿をもとに計算すると最大3・019倍だ。悠長に構えてはいられない状態だ。
この問題では最高裁が、1992年の参院選を「違憲状態」と初めて判断したが、その後は4~5倍の格差でも「合憲」としてきた。だが、衆参「ねじれ国会」で参院の力が強くなると、厳しい判断を示すようになり、10年と13年の参院選では「違憲状態」の判決を出した。
そこで格差を是正するため、16年参院選から、二つの県を一つの選挙区にする「合区」が導入され、前回の19年参院選からは埼玉選挙区の定数を増やし、合区導入で出馬できなくなる人を比例代表で救済する特定枠が設けられた。
最大格差が3・00倍となった前回の参院選について、最高裁は「合憲」と判断したが、格差是正について「立法府における取り組みが大きな進展を見せているとはいえない」と苦言も呈している。
都道府県を選挙区の単位とする仕組みのままでは1票の格差はさらに拡大し、再び「違憲状態」になりかねない。しかし、合区にはすでに弊害が出ている。前回参院選では「鳥取・島根」「徳島・高知」の2合区4県のうち、高知を除く3県で投票率が過去最低となった。選挙区が隣接県に広がり、候補者を浸透させるのが難しかったことや、有権者の関心の低下を招いたためとされる。これ以上、合区を重ねるのは限界だ。
多くの県をあわせたブロック制にする案もある。ただ沖縄など特殊な課題を抱える地域を他県同様に扱っていいのか検討が必要だ。
参院の選挙制度は、2院制のもとで参院のあり方をどう考えるのかという、国の根幹に関わる問題だ。自民党は憲法改正で、参院の合区を解消し、各都道府県から1人以上選出できるようにするよう主張するが、理解は広がらない。 参院の各会派でつくる協議会で改革への話し合いが続いているが、今回間に合わなかったのは怠慢と批判されても仕方ない。抜本改革の議論を怠ってはならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月25日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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