【余禄】:「知らないことを自覚している」という…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:「知らないことを自覚している」という…
「知らないことを自覚している」という「無知の知」で著名な古代ギリシャの哲学者、ソクラテスによる弁明は裁判で行われた。神を冒とくし、若者を堕落させたと告発されたソクラテスは、自ら無罪の論証を迫られた。熱弁を経てアテナイ市民は有罪と死刑を決するが、その判断に従う
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▲さて、裏金問題を巡り行われた政治倫理審査会における、岸田文雄首相ら自民党議員による弁明である。完全公開となり、首相自ら進んで出席しての15年ぶりの開催だった。どんな踏み込んだ弁舌をふるうのかと思ったが、おおむね従来説明の繰り返しに終わった
▲総額6億円を超す自民党ぐるみの醜聞である。安倍、二階派の事務総長や経験者らは裏金システム作りに関与しておらず、できた経緯も不明だと口をそろえた
▲西村康稔前経済産業相は、安倍派事務総長時代に安倍晋三元首相の意向でいったん現金還流は廃止されることになったと明かした。安倍氏亡き後、なぜ覆ったのか。詳細が不明なまま済む問題ではない
▲そもそも首相は何のために出てきたのか。政倫審をよそに自民は来年度予算案の強引な採決に動き出し、与野党対立のあおりで国会は混乱している。これでは解明ではなく、日程消化を進めるため悪用したのかと勘ぐりたくなる
▲「無知の知」とは大違いの「知らない」という無知ばかりを連発されても、国民のいらだちは増すばかりだ。やはり証人喚問など国会の責任ある場での究明が必要だ。そう痛感させた、政倫審の弁明である。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2024年03月02日 02:06:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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