【余禄】:これまでに最も著者数の多い学術論文は…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:これまでに最も著者数の多い学術論文は…
これまでに最も著者数の多い学術論文は2015年に物理学専門誌に発表されたヒッグス粒子の質量測定の論文という。何と5154人の研究者が名を連ね、33ページの論文中24ページが著者と所属先のリストだった▲著者数が多くなるのは大規模な共同実験のためで、国際的な共同研究が進む今日では執筆者が1000人を超す論文は珍しくないという。たとえ研究不正を行った人がまぎれていても見つけようがない(黒木登志夫(くろき・としお)著「研究不正」)▲逆に著者1人の論文は社会科学、数学などに多く、前者は38%、後者は31%がそうだという。さてネットには小学生の作文から会社員の退職まで支援・代行サービスのある時代だから、学術研究のサポート業者がいても驚きはしない▲ネットのスキル(技能)マーケットでは、大学教員や企業の研究者らが有料で学術論文の執筆支援などを行う「研究スキル売買」が広がっているという。小紙の調べでは、国内最大級のサイトで約120人がスキル販売を行っていた▲売買は仲介業者を介し匿名で行われ、執筆支援やデータの解析など研究の核心部分の指導も行われる。ある販売者の1論文当たり報酬は25万~50万円で、別の国立大教員は研究費稼ぎのためだと売り手側の切実な事情ももらしている▲サイト側は研究の代行のないようチェックしているというが、著者の「研究能力偽装」を問題視する声もある。影響力のある論文は減り、「影の著者」ばかりが増えてゆく日本の学術の未来はどうなるのか。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2021年09月14日 02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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