【ファクトチェック・ニッポン!・11.02】:新聞・放送の記者は公式発言をフォローする取り組みに消極的だが…CIAの仕事の9割は首脳発言の分析
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・11.02】:新聞・放送の記者は公式発言をフォローする取り組みに消極的だが…CIAの仕事の9割は首脳発言の分析
10月11日に報じられたCNNのバイデン米大統領の独占インタビュー。「プーチン氏が何を考えているのかはわからないが、彼は(ロシア軍は)ウクライナから撤退できる。そして恐らく彼は権力の座にとどまれる。『ウクライナ侵攻の目的を達した。ロシア軍が撤退する時期だ』と宣言して」と語った。
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2018年に行われた米朝首脳会談(C)ロイター
バイデン氏の発言をフォローしている私には、それは大きな変化と感じられる。これまでのバイデン氏の発言はプーチン氏の失脚を目指していたと考えられるからだ。「Go get him(やっちまえ)」と語った一般教書演説や、「彼はそのポストに残れない」といった発言とは明らかに異なる。プーチン氏の失脚を狙わずに、ウクライナからのロシア軍の撤退を目指す方向に舵を切ったということだろう。ある意味で現実的な選択とも言える。G7のオンライン会議の直後のインタビューだけに、独仏首脳とのやりとりの中でバイデン氏が方向を修正したということだろう。
私は「国際ジャーナリスト」と紹介されることが多い。NHKの社会部で事件記者として過ごした私が、そう紹介されるきっかけはトランプ前米大統領だ。トランプ氏の言動をアメリカでフォローしていた私が最初にテレビへの出演を求められたのはトランプ氏が(北)朝鮮に対して「炎と怒りで対応する」と語った直後だった。(北)朝鮮の「専門家」が「米朝対決」とあおる中で、番組で私は、トランプ氏は金正恩氏に親近感を持っており、米朝会談もあり得ると予想した。まだ米朝会談の噂さえない2017年の8月のことだった。
また、最初の米朝会談を前にトランプ氏が金正恩氏を屈服させると力説する「専門家」を前に、「トランプ氏が朝鮮半島情勢や東アジアの安全保障に関する明確な方針を語った事実はない」と話し、それ故に会談で成果は望めないと指摘した。「専門家」から、「あなたはトランプ大統領を見誤っています」と言われたが、さて、その「専門家」はその言動をどう総括しているのか。しかし、ここでそれを書きたいわけではない。
結果的に私が言った通りになっている状況は、別にヤマをはったわけでも「逆張り」をしたわけでもない。単純に首脳の言動を追って判断しただけのことだ。トランプ氏、バイデン氏の公式な発言は確認することができる。それをフォローし、整理することで、米首脳の考えを一定程度、分析することが可能だ。
実はこれは、アメリカの大学で同僚だった元CIAの情報分析官が語ったことにヒントを得ている。その同僚によると、CIAの仕事の9割は首脳の発言の分析だったという。その発言とは、傍受するなどの非公式なものではなく、誰でも確認できる公式のものだという。
残念ながら、新聞、放送の記者は、公式発言をフォローするという取り組みに消極的だ。誰も知らない極秘情報の入手に努める傾向が強いということもあるが、成果主義で地味で根気のいる作業が敬遠される部分もある。当然、私はこの地味な作業を今後も続けていく。
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元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】 2022年11月02日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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