路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【独自スクープ・後編】:齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは…

2024-11-16 06:35:20 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【独自スクープ・後編】:齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは…齋藤氏辞職までの「全内幕」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【独自スクープ・後編】:齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは…齋藤氏辞職までの「全内幕」

 

 パワハラや贈答品の「おねだり」に関する内部告発で失職した、齋藤元彦前兵庫県知事(46歳)。「職員を自殺に追い込んだ」と非難されても仏頂面を貫き、11月17日の出直し選に再出馬を表明している。


 だがここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。

 なぜ齋藤氏は諦めないのか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する。

 
 
 ◆県庁職員を敵に回して

 兵庫県庁の職員の間で「反齋藤」の気運が高まった背景には、2021年12月、齋藤氏が兵庫県庁舎の建て直し中止を表明したことがあった。

 齋藤氏は建て直し中止で「1000億円の予算削減」を行い、前編記事でも解説した「井戸県政の隠れ負債」返済に充てることを狙った。

 だが、コンパクトな庁舎に計画を変更し、在宅勤務普及の流れに合わせてコスト削減を目指したところ、「リモートワークを職員定数の削減につなげるつもりか」と兵庫県職員労組が反発。さらに、土木系のOB職員の天下りを受け入れているゼネコンも、「巨額の庁舎建設が凍結されてしまうなら、何のために県庁OBを受け入れてきたのか」と不満を募らせた。

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 齋藤氏が進めようとした改革は、方針としては井戸県政の既得権益にメスを入れるものであり、多くの県民の意に沿っていたと言えるだろう。ただ、保守的風土の兵庫県で20年かけて築かれた権益に切り込むには、「権力基盤が固まっていない1期目なのに、改革のスピード、量ともにあまりに性急すぎた」(前出の県幹部)印象が否めない。

 ◆「西播磨県民局長」告発の深層

 今回、一気に齋藤氏への逆風が強まったのは、西播磨県民局長だった県庁幹部のA氏が2024年7月7日に自殺したことがきっかけだ。

 そもそも一連の騒動の発端は今年3月、このA氏が告発文をメディアや県議に送付したことだった。問題の深層を知るには、A氏の人物像、そしてなぜ告発、自殺に至ったのかにも目を向ける必要がある。 

 京都大学を1987年に卒業したA氏は、エリートコースとされる人事部門で順調に出世していった。

 井戸氏からの信頼は厚く、2021年7月の兵庫県知事選の直前、同年3月の人事では、県の人事政策トップの管理局長として采配を振った。その年の4月に西播磨県民局長に異動したのも「大仕事を成し遂げて、井戸さんからの『お礼』的な人事」(県職員)だったという。

 井戸県政においては、西播磨県民局長は井戸氏の出身地たつの市を管轄する重要ポストだった。「A氏は定年までに県庁に戻って特別職の人事委員長に就き、キャリアを終えるつもりでいたようだ」(前出の県職員)という。

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 しかし程なく、「栄転」のはずの県民局長就任が、A氏にとって「左遷」に変わる。齋藤氏が当選したのだ。

 「井戸さんの後継である金沢候補が勝つ前提でいたA氏にとっては、驚天動地の事態だったのではないか。なにしろ管理局長として仕切った人事も、井戸さんに『金沢が仕事をしやすい配置にしてくれ』とお願いされてやったものだったから」(同前)

 ◆齋藤前知事とA氏の関係

 県庁職員などの証言を総合すると、A氏と齋藤氏の関係は決して悪くはなかった。「知事と人事系職員の会食にも出席していたし、携帯電話の番号も交換するような間柄でした」(別の県職員)。とはいえ、前知事の井戸氏の意向を色濃く反映した人事政策を実施した身としては、肩身が狭かったはずだ。

 さらに、齋藤県政ではA氏自身の先行きが不透明になっていった。

 齋藤氏は就任後、自身に近い改革派の幹部職員を集めて「新県政推進室」を発足させた。A氏もじきに本庁へ呼び戻され、これに加わるとみられていたが、大方の予想に反して西播磨県民局長に残留することになったのである。 

 A氏は定年を間近に控えていた。前出の県職員はこう話す。

 「定年時の人事が決まる昨年後半以降、Aさんから人事課に『自分の人事はどうなりそうか』と問い合わせが来ていたようです。

 人事畑のエースを自任していた彼からすれば、定年時には本庁で勤務したいと考えていたようですが、県民局長として県庁生活を終えることになった。彼はしばしば『今の人事を仕切っている奴らは低学歴集団だ』といった不満を漏らすようになりました」

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 A氏が告発文を各所に送ったのは今年3月、県民局長として定年を迎えると決まった直後のことだった。

 当初、文書には送り主が書かれていなかった。調査を経て、それがA氏だと特定されると、A氏は4月4日に公益通報窓口に届け出て、この問題が広く世間に知られることになった。

 その後、A氏は今年7月、県の百条委員会に証人として喚問される直前に自殺し、帰らぬ人となった。もうひとつ、世間でほとんど報じられていないのが、この百条委員会とA氏の自殺との関連についてである。

 ◆拙速すぎた「百条委員会」

 A氏は勤め先で使用していた業務用パソコンで告発文を作成したことが明らかになっている。じつはその中には、A氏の私的な「倫理上問題のある記録」のデータも保存されており、百条委員会からパソコンの提出を求められたA氏は、そのデータの公開を避けて欲しいと委員会側に嘆願していたという。

 A氏の真意はわからないにしても、こうした経緯が強いストレスになっていたことは間違いなさそうだ。

 そもそも、今回の百条委員会の設置については、県議会でも一部議員から「拙速ではないか」と批判が上がっていた。あるベテラン県議が言う。

 「告発文の中身や事実関係を精査する第三者委員会の調査結果が出る前に、百条委員会が設置された。議論の土台がなく、『ゴールポスト(議論の落としどころ)が動く』ような状態になってしまった」

 実際、百条委員会では当初、齋藤氏のパワハラ疑惑を調査することが目的とされていたが、職員アンケートの結果は伝聞が大半を占め、証拠として弱かった。その後、論点は齋藤氏の資質や、公益通報への初動対応の問題に二転三転している。

 「もし弁護士による第三者委員会で事実関係が冷静に精査されていれば、A氏の死は避けられた可能性が高い」(同前)

 ◆「齋藤辞職」のシナリオ

 A氏の告発をめぐっては、単なる一県職員の内部告発とは異なる政治力学が動いていた形跡もある。

 県関係者への取材によると、A氏が公益通報を行った4月4日から間もない4月上旬、兵庫県総合庁舎内の一室に、A氏と反齋藤派の自民党県議、井戸派の県OBらが集まった。

 その席でA氏は「この件は早く終わらせたい」と訴えたが、自民党県議と県OBが「何を言うとるんや。齋藤をとことん追い詰めるチャンスやないか」などとすごんだというのだ。

 ある県OBは、こうも指摘する。

 「Aさんは不遇な人事をきっかけに告発文を書いたが、それを利用して反齋藤の『ヒーロー』に仕立て上げ、不信任案提出、さらには齋藤知事の辞職までつなげるシナリオを描いた勢力がいるのではないか」 

 ◆「再選」はあり得るのか

 齋藤氏の失職に伴い、10月31日告示、11月17日投開票で実施される兵庫県知事選は、7人もの候補者が現れる混戦となっている。実質的には、齋藤前知事、稲村和美前尼崎市長、維新を離党し無所属で出馬した元アナウンサーの清水貴之参議院議員の三つ巴の情勢だ。

 選挙事情に詳しい地元関係者が解説する。

 「齋藤前知事は県内の若手経営者が主な支持層で、抜群の知名度もあり、今回の騒動を経ても一定の支持を集めている。稲村氏は泉房穂前明石市長が応援の構えを見せているが、左派の『緑の党』と関係が深く、支持が限定される可能性が高い。

 維新を離れた清水氏は、自民党支持者を取り込めるかが勝負。菅義偉元総理の弟が役員を務めていた神戸の外車ディーラー『ジーライオン』グループ創業者の娘と結婚しているため、資金力も潤沢で経済界の受けはいい」

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 一方、齋藤氏の失職後も自民党は候補者を一本化できずにいる。擁立を断念すれば、自主投票となる自民票と公明票の行方が最大の焦点となる。

 ◆「政治ショー」がもたらしたもの

 この騒動で、兵庫県政は半年にわたって機能停止した。齋藤氏によるハラスメントの事実関係については今後、9月に設置された第三者委員会の報告を待つ必要がある。

 齋藤氏に「改革」を進めるうえで不可欠な、部下・各関係先への配慮が足りなかったことは事実だろう。また少なからぬ県関係者が、齋藤氏の「ハラスメント気質」を指摘していることも事実だ。

 その一方で、齋藤氏が、これほど大掛かりな「政治ショー」の末に権力の座を追われる必要があったのかという点には、少なからず疑問も残る。

 兵庫県民は3年前、「井戸県政からの脱却」を望んで齋藤氏を選んだ。地方政治改革の流れに、本件はどう影を落とすのか。来月の県民の判断が注目される。

 ■「週刊現代」2024年10月26日・11月2日合併号より

  元稿:講談社 主要出版物 現代ビジネス 社会 【話題・地方自治・兵庫県・パワハラや贈答品の「おねだり」に関する内部告発で失職した、齋藤元彦前兵庫県知事】  2024年10月23日  06:35:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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