【社説①・01.14】:再審の法制度 欠陥直視し速やかに改正を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.14】:再審の法制度 欠陥直視し速やかに改正を
司法の公正と人権を損なっている制度の欠陥は明らかである。速やかに改めるべきだ。
刑事裁判をやり直す再審制度の見直しを、法務省が今春にも法制審議会に諮問するという。
近年相次いだ再審無罪判決は、刑事司法と再審制度に放置できない問題があることをあらためて浮き彫りにした。
捜査機関が証拠をほぼ独占し、開示手続きの定めがないことや、再審開始決定が出ても検察の不服申し立てにより、やり直し裁判まで極めて長期に及ぶことなどである。
確定判決の誤りを正すことを妨げ、えん罪救済を遠のかせる重大な問題にほかならない。
静岡県一家4人殺害事件で死刑判決を受けた袴田巌さんは2014年に再審開始決定が出たにもかかわらず、検察の抗告で再審までに9年を要し、昨年10月の再審無罪の確定までに58年を費やした。
1986年の福井市中3女子生徒殺害事件は、検察の証拠開示で有罪立証の誤りが発覚し、再審開始が決まった。
高まる批判の世論に押されて再検討する姿勢を見せたといえよう。
一方で、えん罪問題に取り組んできた弁護士や当事者、家族などからは法務省の動きへの疑念の声が上がっている。
超党派の国会議員でつくる「再審法改正を早期に実現する議員連盟」による法案提出との関係からだ。
議員連盟は昨年3月に設立され、昨年11月の総選挙を経て現在は過半数を超える361人の与野党議員が参加している。
法務省の方針転換には議連から法改正の主導権を奪う狙いがあるのではないか。
そう指摘されているのは、これまでかたくなに後ろ向きの対応だったからだ。
1980年代に免田、財田川、松山、島田の4事件で死刑判決を受けた人たちが相次いで再審無罪となって以来、法改正の機運が度々高まった。しかし、法務省が主導した協議は中途半端な形で放置されたままになっている。
2022年には刑事司法の在り方を検討する協議会を設けたものの、初の会合は設置から1年以上が経過してからで、計3回しか開かれていない。
その同省が委員の人選も含めて主導する審議会が、証拠開示の制度化や検察官による不服申し立ての制限などに正面から切り込めるのか。骨抜きにならないか。法務省は十分に情報を公開し、説明責任を果たさねばならない。
この審議会は法改正の必要性から議論するため、先送りや結論をまとめるまでに時間を要する懸念も拭えない。
えん罪の防止は喫緊の課題である。議員立法と並行して議論を加速させ、法の不備を正す必要がある。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月14日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。