【社説①】:イラン革命45年 地域の安定乱す対外強硬姿勢
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:イラン革命45年 地域の安定乱す対外強硬姿勢
親米の王政を倒し、政教一致のイスラム体制を確立したイラン革命から45年が過ぎた。反米を掲げるイランが対外強硬姿勢を続ける限り、中東の安定は見込めない。
1979年2月11日の革命後、イランはイスラム教シーア派の宗教指導者が統治している。周辺国のレバノンやイラク、イエメンなどで同じシーア派の武装勢力に武器や資金、要員などを提供し、イランは影響力を拡大してきた。
一方、米国はサウジアラビアやバーレーン、カタールなど湾岸の友好国に米軍部隊を駐留させ、中東の安定を維持する戦略をとる。サウジをはじめとするイスラム教スンニ派の王政国家にも、イランに対する警戒感が強い。
こうした対立構造に加えて、中東はガザ紛争を機に一触即発の状態になった。最近も、親イラン武装勢力がヨルダンの米軍施設を攻撃し、米兵が死亡したことへの報復として、米軍がシリアやイラク内の武装勢力拠点を空爆した。
イランが武装勢力に米軍への攻撃を指示しているかどうかは定かでない。ただ、結果的に米軍が弱体化し、中東での米国の存在感が低下することは、イランにとっては望ましいシナリオだろう。
イランの核開発も、地域の不安定要因となっている。イランは原子力の平和利用の権利を主張しているが、核兵器の原料に転用できる高濃縮ウランを生産し、国際原子力機関(IAEA)の査察への全面協力も拒んできた。
イランが敵視するイスラエルが事実上、核兵器を保有していることに対抗し、自らも核を持とうとしているとの疑いは消えない。
イランの核開発制限と引き換えに、米欧がイラン制裁を解除するという2015年の核合意は、緊張緩和の絶好の機会だった。その後、米トランプ政権が合意を破棄し、イランもそれを口実に核開発を加速したのは遺憾である。
日本はイランとの長年の友好関係を築いてきた。米欧とイランの関係が悪化している今こそ、日本はイランに対し、現状への懸念を率直に伝え、地域の安定へ役割を果たすよう説く必要がある。
岸田首相による首脳外交も検討すべきではないか。
イラン国内では、女性の抑圧や物価高に抗議するデモが散発的に起きている。国際的孤立と制裁による経済難が続く中で、人々の 閉塞 感が増幅しているのだろう。
不満を封殺する強権政治を続けているようでは、体制の弱体化は避けられまい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月12日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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