【12月28日の日報抄】:ことし目にしたニュースの中で忘れられないシーンがある。
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【12月28日の日報抄】:ことし目にしたニュースの中で忘れられないシーンがある。
ことし目にしたニュースの中で忘れられないシーンがある。ノーベル平和賞の授賞式で、日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳(てるみ)さんが演説に立ち、声を振り絞っていた
▼「3キロ余り先の港まで、黒く焼き尽くされた廃虚が広がっていました」。長崎への原爆投下から3日後、田中さんは小高い山の上から街を見てがくぜんとしたと振り返っていた
▼そんな場面を追体験したような心持ちになったことがある。数年前に訪れた、広島の平和記念資料館でのことだ。入り口からまもなく、湾曲した壁一面に原爆投下から2~3カ月後の街を撮った巨大な写真が掲げてあった。米軍が撮影したものだという
▼少し離れた位置に立ち、写真全体を眺めてみた。目の前の街は、空襲でじゅうたん爆撃を受けたかのようだった。視界全体に、がれきだらけの廃虚がどこまでも広がっていた。たった1発、一瞬で、ここまでとは。足がすくみ、しばらく動けなかった
▼この1年も、ウクライナ侵攻や中東での戦闘で爆撃された街のニュース映像が繰り返し流された。夜空に赤い閃光(せんこう)が走り、ミサイルが打ち込まれた街から黒い煙が立ち上った。残酷な光景ばかりだった。しかし、1発で「3キロ余り先」までを廃虚にしたような映像は記憶にない
▼世界には、約1万2千発の核弾頭があると推計されている。それらが1発でも使われたら、どうなるか。「想像してみてください」と田中さんは投げかけていた。想像すれば、核廃絶へ動かずにはいられなくなる。
元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【日報抄】 2024年12月28日 06:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
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