【社説・01.03】:【年初に 経済】生活底上げし成長軌道へ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.03】:【年初に 経済】生活底上げし成長軌道へ
長期停滞を脱却して本格的な成長軌道に乗れるか。日本経済は重い課題を抱えて新年を迎えた。
政府は2025年度の実質国内総生産(GDP)成長率を1・2%増と見込む。日銀も景気は緩やかに回復しているとする。とはいえ、世論調査では約8割が景気悪化の認識を示す。生活実感との隔たりはなお大きい。
世界に目を向ければ、米国で自国主義のトランプ政権が発足する。国際情勢をにらみつつ、足元の産業基盤を強固にし、国民生活をいっそう底上げする必要がある。
最大の課題は長引く物価高に負けない賃金の定着だ。
24年春闘は一昨年に続き、高水準の賃上げを実現した。連合は25年の賃上げ目標を「5%以上」、中小企業については「6%以上」にする方針だ。経営側も一定の理解を示している。だが、人手不足が深刻化する中、人材確保に前向きな企業がある一方、余力に乏しい企業も多い。
高知県内でも昨年の春闘の平均賃上げ率は3・90%と、記録が残る08年以降では最高を更新。ただ調査では、正社員の賃上げを実施した企業は過去最高だった前年から減り、賃上げの予定がない企業は増えた。
原材料などの高騰分を価格転嫁できない企業もあり、格差は広がる。雇用の7割を占める中小企業に波及させられるかが鍵となる。
日銀も春闘の賃上げ動向を見極める姿勢を示す。賃上げの流れが続けば、賃金と物価がともに上昇する好循環が進み、さらなる利上げへの環境が整うとされる。
昨春、日銀は大規模な金融緩和を解除して利上げに動いた。金利のない世界は過度な円安を招き、輸入物価の上昇につながった。岸田前政権から利上げを求める声が相次ぐ中、7月には再び利上げを決めた。
利下げに転じた欧米の金融政策とは正反対の方向に動く。金融・為替市場は不安定な値動きも予想される。影響を注視する必要がある。
不安定要素が多い中、石破茂首相に求められるのは実効性のある取り組みだ。だが、政府が決定した経済対策は、低所得世帯向け給付金や燃料費高対策といった歴代政権の政策の復活や延長が目立つ。
物価高に苦しむ国民の生活を支える施策は必要だ。しかし給付や補助を繰り返す発想では、政権が目指す高付加価値で成長型の経済には結び付かないのではないか。必要性や効果の精査が欠かせない。
世界経済は大国による保護主義の拡大が進む。トランプ次期米大統領は中国やカナダ、メキシコに対して関税引き上げを表明した。日本にとって中国は最大の貿易相手国で、メキシコには日本の自動車メーカーが米国などへの輸出向けに生産拠点を構えている。日本の輸出関連企業の業績悪化も懸念される。
一方、中国とは先の首脳会談で「戦略的互恵関係」の推進を確認した。日本産水産物の輸入停止措置など、両国間に山積する課題の解決へつなげなければならない。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月03日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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