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【大分地裁】:危険運転の適用に道開く「実質的危険」とは 大分194キロ事故判決、大きな先例となるか

2024-12-02 07:00:00 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・再審請求)、刑法39条】

【大分地裁】:危険運転の適用に道開く「実質的危険」とは 大分194キロ事故判決、大きな先例となるか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大分地裁】:危険運転の適用に道開く「実質的危険」とは 大分194キロ事故判決、大きな先例となるか

 大分市の一般道で令和3年、時速194キロの車が起こした死亡事故で、大分地裁は11月28日の判決で、危険運転致死罪の成立を認めた。過去の裁判では、猛スピードでも進路の逸脱がない場合、危険運転には当たらないとされてきたが、大分地裁はこれを覆し、ハードルが高すぎると批判されてきた同罪の適用に新たな視点を提供した。高速度事故を巡り、今後同様の司法判断が広がるか注目される。

花が供えられた大分死亡事故の現場周辺=11月28日午後、大分市

 ◆「制御困難」の意義

 裁判での主要な争点は被告の元少年(23)=事故当時(19)=の運転が、同罪の要件である「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」に該当するか否かだった。

 猛スピードだったとはいえ、被告の車は直線道路をそれることなく進み、右折車と衝突。このため弁護側は「車線に沿って直進できていた」として制御困難にはあたらないと主張し、過失致死罪にとどまると訴えた。

 過去の裁判で、同じく進路逸脱の有無が焦点となったのが、津市の直線道路で平成30年、時速146キロの車がタクシーに衝突して5人が死傷した事故だ。

 名古屋高裁は令和3年、制御困難とは「自車を進路から逸脱させたことを意味する」と判示。事故を起こした車が進路を逸脱していなかったことを理由に、1審に続いて危険運転致死傷罪ではなく過失致死傷罪を適用していた。

 ◆進路逸脱なしでも可

 これに対し今回の大分地裁判決は、制御困難の意義について、ハンドルやブレーキ操作のわずかなミスで進路を逸脱して事故を起こす「実質的危険性」がある高速度での走行を指すとし、実際に逸脱がない場合も、制御困難に含まれるとの判断を示した。

 

 そのうえで、現場道路は15年以上改修舗装されておらず「わだち割れ」(路面の凹凸)が生じていた▽一般に速度が速くなれば揺れが大きくなり、ハンドル操作の回数も増えるところ、被告は法定速度の3倍以上の高速度で走行した▽夜間運転は視力低下や視野狭窄(きょうさく)を招くが、事故の時間は夜間で、付近も暗かった-といった事情を挙げ、実質的危険性を認めた。

 弁護側は過去にも一般道を170~180キロで複数回走り「操作に支障が生じたことはなかった」とも訴えたが、実際に進路逸脱がなくても、実質的危険性が認められれば制御困難にあたるとし、過去の「結果」は「評価を左右しない」と重視しなかった。

 ◆東京高裁の判断枠組みを応用

 一方、こうした大分地裁判決は令和4年の東京高裁判決を参照する形で示された。

 車がカーブを曲がり切れず、対向車線にはみ出した事故で、物理的にカーブを曲がることが不可能な「限界旋回速度」以下でも、危険運転を適用できるかが争点に。東京高裁は限界旋回速度以下でも制御困難に当たりうると認定し、危険運転を適用した。今回の大分地裁判決は、この東京高裁の判断枠組みを直線道路の事故に取り入れた形だ。

 東京都立大の星周一郎教授(刑事法)は大分地裁判決について「法解釈上、蛇行やスピンが生じる『直前の状態』でも危険運転の適用は可能といわれてきたが、実際に適用されたのは知る限り初めて。現場が完全な直線道路で認めたのは一歩踏み込んだ判断といえる」と分析する。

 ◆「非常に画期的」

 「制御困難な高速度」を巡っては、津市のケース以外でも100キロを超える死亡事故で「過失」と判断された事例があり、かねて一般感覚との乖離(かいり)が指摘されてきた。

 危険運転致死傷罪の要件の在り方を議論する法務省の有識者検討会は11月下旬、高速度の数値基準の設定などを盛り込んだ報告書をまとめ、法改正に向けた動きが本格化している。

 宇都宮市の国道で令和5年、時速160キロ超の車がバイクに追突した事故も今後、危険運転致死罪で審理される。遺族の代理人を務める高橋正人弁護士(第二東京弁護士会)は大分地裁判決を「非常に画期的で大きな先例。直線道路での追突、(右折車と直進車の)『右直事故』で同罪が成立しやすくなる」と評価した。 

 ◆大分194キロ死亡事故

事故で亡くなった小柳憲さん(遺族提供)

 大分市の一般道で令和3年2月9日午後11時ごろ、当時19歳だった元少年(23)が運転する乗用車が法定速度の3倍を超える時速194キロで交差点に進入し、右折車と衝突。会社員の小柳憲さん=当時(50)=が死亡した。大分地検はいったん自動車運転処罰法違反の過失致死罪で男を在宅起訴。遺族が同法違反の危険運転致死罪の適用を求めて署名活動を行い、その後同罪への訴因変更が認められた。大分地裁は11月28日、同罪の成立を認め、懲役8年(求刑懲役12年)を言い渡した。

 ■地裁判決で認められた「194キロは危険」…だが遺族は問う「懲役8年で抑止できるか」

 元稿:産経新聞社 主要ニュース 社会 【裁判・大分地裁・大分市の一般道で令和3年、時速194キロの車が起こした死亡事故】  2024年12月02日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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