【社説①】:台湾の地震 被災地へ可能な限りの支援を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:台湾の地震 被災地へ可能な限りの支援を
台湾をまた大きな地震が襲った。日本は、被災体験を共有する隣人として、官民挙げて、できる限りの支援をしたい。
台湾東部の花蓮沖を震源とする地震が3日に発生し、最大震度6強を観測した。複数の死者が出たほか、1000人以上が負傷している。日本の気象庁は、地震の規模をマグニチュード(M)7・7と推定している。
台湾は地震の多発地帯で、M7前後の地震が過去にも起きている。今回の地震は、2400人以上が死亡した1999年の台湾大地震以来、最大規模だという。
最も揺れが強かった花蓮では、建物の倒壊や落石が相次ぎ、道路が寸断された。大勢の人が山間部のホテルなどに取り残され、連絡が取れない人も多数いるという。被害の広がりが心配される。
大きな余震にも警戒が必要だ。当局は、被災者の一刻も早い救助に力を尽くしてもらいたい。
台湾では1階部分を駐車場などにする建物も多く、かねて耐震性への懸念が指摘されてきた。台湾大地震後に耐震基準が強化されたが、東部は西部と比べて都市整備が遅れ、古い建物が目立つ。
そうした事情が重なり、被害を大きくした可能性がある。今後改めて検証を進め、災害に強い街づくりに生かしてほしい。
台湾に集積する半導体メーカーの工場も被災し、稼働を一時停止するなどの影響が出た。
ハイテク機器に使われる最先端半導体の生産は、世界の9割を台湾に依存している。供給網が1か所に集中するリスクが、改めて浮き彫りになったと言えよう。
これまで台湾からは、日本が困難に見舞われた際、いち早く支援の手が差しのべられてきた。
東日本大震災では世界最大規模となる200億円以上の義援金が寄せられた。元日の能登半島地震でも25億円が早々に集まった。コロナ禍では、日本へ200万枚のマスクが贈られたこともある。
台湾大地震の際、日本から政府の援助隊やボランティアらが現地入りし、阪神大震災の経験を生かして救助や仮設住宅の提供に奔走した。こうした支援を台湾の人は記憶してくれているのだろう。
今回の地震を受け、岸田首相は「隣人である台湾の困難に際し、日本は必要な支援を行う用意がある」と表明した。必要があれば、すぐに申し出てほしい。
互いの恩返しは日台関係の深さの象徴だ。政府は今後の復興も含め、迅速に支援に動けるよう、万全の態勢を整える必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月05日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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