【社説②】:自民処分決定 これで党の再生につながるか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:自民処分決定 これで党の再生につながるか
政治とカネの問題について、一定のけじめをつけた形だが、処分の基準が曖昧なために自民党内には不満がくすぶっている。党再生の道のりは平たんではない。
自民党の党紀委員会が、派閥の政治資金規正法違反事件に関係した安倍、二階両派の議員計39人の処分を決めた。
安倍派座長だった塩谷立氏と、参院安倍派会長だった世耕弘成氏については、派内で特に指導的な立場にあったとして離党勧告とした。このほか3人を党員資格停止、17人を党の役職停止、残りの17人を戒告とした。
離党勧告を受け、世耕氏は離党届を提出し、自民党は受理した。一方、塩谷氏は態度を保留している。勧告に従わない場合、原則として復党できない除名となる。
執行部は処分を一つの区切りとし、今後は規正法改正の自民党案をまとめ、与野党協議に臨む方針だ。派閥主導ではない新たな党運営のあり方も検討している。
しかし、処分によって党内には亀裂が生じている。
首相は処分の基準について、説明責任の果たし方も考慮すると述べていたが、結局、処分の対象者を還流の金額が500万円以上の議員に絞った。党内からは「金額の基準に一体何の根拠があるのか」といった反発が出ている。
自民党規律規約は、処分の前に本人が弁明する機会を与えると明記している。しかし、執行部は書類での弁明しか認めなかった。塩谷氏は弁明書で「独裁的な党運営には断固抗議する」と訴えた。
今回の事件では、首相が10年以上率いてきた岸田派も規正法違反で立件され、元会計責任者の有罪が確定している。
だが、首相は「個人として不記載はない」と述べ、自らを処分の対象外とした。これに対して、「保身が過ぎるのでは」と冷ややかに見る議員もいる。
首相は党内の不協和音をどう受け止めているのか。
政局の主軸だった安倍、二階両派を壊滅に近い状態に追い込んだことで「首相は指導力を発揮しやすくなる」と見る向きがある。
他方、国会運営などを実質的に担ってきた両派が弱体化し、党内情勢が一気に流動化して政権基盤が 脆 くなる可能性もある。
人口減少や物価高など解決すべき問題は山積している。緊迫化する国際情勢にも対応しなければならない。重要な局面をどう乗り越えるか、日本の政治は試練の時を迎えていると言えるだろう。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月05日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます