【天風録・11.19】:歌い舞う猫界隈
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・11.19】:歌い舞う猫界隈
今年の新語・流行語大賞の候補に古めかしい言葉が入った。「界隈(かいわい)」。従来はその辺り一帯を指す言葉が今、同じ趣味や行動にいそしむ人々の意味でSNSをにぎわす
▲はやりに乗って呼ぶなら「歌い舞う猫界隈」だろう。広島で先週始まった劇団四季の看板ミュージカル「キャッツ」だと両方の意味を兼ねるとみた。劇場に入れば一帯が別世界。巨大なごみの山に囲まれ、猫目線からまばゆい満月を見上げる。ここでしか出合えない光景が広がる
▲ステージの一体感も格別だ。色とりどりの衣装、メークで猫となった俳優たちの一糸乱れぬダンスと歌声。目も耳も心も奪われ、気付けば周囲ですすり泣きが響いている。1400人の観衆が同じ感動を分かち合っていた
▲歌舞伎とは「歌、舞、演技」による劇であり、相通ずるミュージカルも日本人は好むはず―。劇団創設者の浅利慶太さんがかつて本紙に語っていた。歌い舞う猫たちが、40年以上も愛される背景に文化の下地を感じる
▲来年2月までのロングランだ。2時間40分の上演時間では、個性的な27匹全てを追いかけ切れぬと再訪する人も多かろう。「推し猫」が多い人は特に。この界隈はすぐに恋しくなる。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2024年11月19日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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