【社説①・12.23】:教員の性暴力 根絶に向け対策強化を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.23】:教員の性暴力 根絶に向け対策強化を
性犯罪・性暴力などで処分された公立学校の教職員は昨年度、320人で過去最多だったことが文部科学省の調査で分かった。被害者が勤務校の児童生徒だった事例は5割を占めた。
性暴力は「魂の殺人」と呼ばれる。被害者は傷つき生涯苦しめられる。決して許されない。
教員は児童生徒の信頼を得て成長を支える立場にある。上下関係に乗じて尊厳を奪う行為は言語道断だ。一部の教員によるものとは言え、学校教育全体の信用も失われかねない。
国や教育委員会は教職員への研修強化などの施策を講じてきたが、被害はやまない。事態は深刻だ。児童生徒への性暴力を根絶する強い決意を持ち、対策の実効性を高める必要がある。
道内の教職員の内訳は15人で前年度を9人上回った。事実認定に複数年を要した例もあり全てが昨年度起きたわけではないが、増加傾向は看過できない。
2022年に「教員による児童生徒性暴力防止法」が施行され、政府も指針を策定した。性交やわいせつ行為などは同意の有無を問わず禁止され、違反した教員は原則懲戒免職とした上で復職を厳しく制限した。
今回の発表で処分者のうち過去に性暴力の処分歴があった者は数%にとどまる。問題のあった者を再び教壇に立たせない仕組みが機能した面もあろう。
成績評価への影響などを恐れ声を出せぬ被害者は多いとみられ、つけ込む教員もいる。性的目的を隠し、優しく手なずけて近づく「グルーミング」の手法により生徒が被害に気づけぬ例もある。卑劣というほかない。
校内での定期的なアンケートに加え、匿名でも対応する第三者の相談窓口など、生徒が安心してSOSを出せる機会の拡充が不可欠だ。同時に校内で教員と子どもが2人だけになる死角をなくすなど、性暴力が起きない環境づくりが急がれる。
交流サイト(SNS)での教員と生徒のやりとりが問題の契機になる例は多い。生徒からの悩み相談で始まることもある。
SNSは不登校の支援などに有効な面もあるが、一対一の関係性が強まると性犯罪のリスクは高まりやすい。
文科省はSNSの私的なやりとりをしないよう求めており、北海道教育委員会は各学校に規則を設けるよう指導している。保護者への注意喚起も必要だ。
近年は児童生徒間でも性暴力を伴ういじめが目立つ。科学的で人権尊重の視点に立った包括的性教育を通じ、正しい知識を伝えることは性暴力の予防にもつながり、極めて大切だ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月23日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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