《社説②・10.23》:旧ジャニーズ起用再開 これで幕引きにはならぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・10.23》:旧ジャニーズ起用再開 これで幕引きにはならぬ
性被害を受けた心の傷は癒えないままだ。これを問題の幕引きにしてはならない。
旧ジャニーズ事務所を創業したジャニー喜多川氏による所属タレントらへの性加害である。
業務を引き継いだマネジメント会社に所属するタレントの起用を再開すると、NHKが発表した。
昨秋以来、新規起用を停止していたテレビ東京も再開を発表しており、これで主要局すべてで起用されることになる。
旧ジャニーズが性加害を認めて謝罪をしてから1年が過ぎた。
その間に旧ジャニーズは、被害者への補償にあたる「SMILE−UP.(スマイルアップ)」と、マネジメント会社に分離した。創業者一族でスマイル社代表取締役の藤島ジュリー景子氏は補償業務に専念し、マネジメントには関わっていないという。
NHKの稲葉延雄会長は記者会見で、「被害者への補償と再発防止の取り組み、(新旧会社の)経営分離が着実に進んでいる」と判断の根拠を説明した。
だが、被害者の救済は終わっていない。
スマイル社の救済委員会は、これまで1000人から被害申告を受け、うち510人と補償内容で合意したという。しかし、被害が認定されない人や、家族や職場への影響を考えて申告をためらう人もいるとみられる。
名乗り出た人へのネット交流サービス(SNS)での深刻な誹謗(ひぼう)中傷も続いている。スマイル社には、こうした被害を防ぐための積極的な情報発信が求められる。
事件を巡っては、番組へのタレント起用を優先し、見て見ぬふりをしたメディアの責任も指摘された。芸能事務所とテレビ局との関係の見直しは十分か。今後も検証する必要がある。
旧ジャニーズのタレントが出場しなかった昨年の紅白歌合戦は、視聴率が低迷した。稲葉会長は「紅白の制作に向けて判断したわけではない」と弁明する一方、「制作現場の判断で契約が可能になる」と述べた。現場に責任を押しつけるような姿勢は疑問だ。
旧ジャニーズに限らず、芸能界では性加害がまかり通ってきた。悪弊を排し、人権を守るための不断の取り組みが求められる。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月23日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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