「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

酉の市と切山椒

2006-11-04 05:49:48 | Weblog
今日は一の酉である。今年は16日が二の酉、28日が三の酉。東京では
三の酉まである年は火事が多いとされている。根拠のない話だが、用心に
こしたことはない。酉の市で売られる縁起物の熊手は”福を掻き寄せる”と
いう意味から商売筋に人気がある。昔は熊手と一緒に切山椒というお菓子
を売る店が多かったが、今はほとんどなくなった。

「切山椒(きりさんしょう)はなつかしい。東京の食べ物だ。山椒のにおいと味
がこどものの食べ物にはない一種の刺激があった。それが今に昔を思い出
させる」
東京の下町育ちの国文学者、池田弥三郎が「私の食物誌」(昭和50年刊
中公文庫)で書いている。下町育ちでない僕にとっても切山椒の味は懐か
しい。

切山椒はおもに酉の市だけにしか売られない。酉の市は関東ローカルの催
事だから切山椒もローカルなお菓子なのだろう。上新粉に生姜の粉を混ぜて
これに砂糖をいれ赤、緑、黄で着色,搗いたもの。これを短冊型に切り露天
の店頭で売られていたが、今は高級菓子に出世して江戸風の袋に納められて
売られているものもある。

三の酉を扱った文藝作品が多い。樋口一葉の「たけくらべ」、久保田万太郎
の「三の酉」など。昔は「年の瀬」があり「年の瀬」に近い「三の酉」の風景は
慌しくなんとはなく題材にするのが解る気がする。今年は明治時代を体験した
く鷲神社へでかけ、切山椒を買ってきたい。