「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

        ”無人”が”有人”になった自由が丘の野菜スタンド

2012-01-19 07:34:51 | Weblog
東京は暮の16日から連続34日雨がなくカラカラ天気が続いている。思わぬ帯状疱疹からスポーツクラブ通いができなくなった僕は、運動不足気味で体重がまたリバウンドする心配が出てきた。そこで昨日久しぶりに自転車で1㌔ほど離れた自由が丘の無人スタンドへ野菜を買いに行ったところ、スタンドが道端から消え、農家の敷地の軒下に移動していた。

農家の主人(90)に尋ねたところ、昨年3月の震災のあと急にスタンドの空き缶にカネを入れず野菜を持ち去る人間が増えてきたのだという。とても商売にならない額なので、思い切って家の敷地内に移したのだという。無人スタンドは世界に冠たる日本人の美徳の上にたつ商売だと思っていたのに残念でたまらない。震災を機に野菜をタダで持ち去るほど急に貧乏人が増えてきたとは思えない。一部にせよ、いつからここまで日本人はセコくなってしまったのであろうか。

店のあるあたりは戦前荏原郡碑衾(ひぶすま)村といった東京の郊外農村だったが、昭和15年の幻の東京五輪の頃から都市化されたが、電車の駅から遠いこともあって、今でも開発されず昔のような農家が散在し残っている。坪に換算すれば数百万円もする土地で農業してもと思うのだが、やはり先祖代々の土地を守るという思いもあるのだろう。もともと出来た新鮮な野菜を近所の人におすそ分けするつもりだったのかもしれないが、今の世の中、慈善事業をするほどゆとりはない。この農家のほかにも特製のコイン式のスタンドを作って野菜を売っている店もある。

自由が丘の駅から少し離れているとはいえ、目黒通りに近い都内でも高級住宅街である。百円や二百円が払えない住人が住む街ではない。無人スタンドは中学校の副読本にもなっているそうだが、先生も”汝盗むなかれ”の道徳の基本に立ち返って教えなくてはならない時代になってきたのかもしれない。