その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

イングランド北部の旅(その1) セトル・カーライル鉄道に乗ってヨークシャデイルズを縦断する

2011-05-15 01:10:34 | 旅行 海外
 4月末から5月頭のロイヤルウエディング連休では、我ながら、結構精力的に動いていて、1泊2日の北イングランドの旅行にも出かけました。天気にも恵まれ、印象的な旅行になりましたので、ご紹介します。今回の目玉は、ハドリニアヌス帝が築いたローマ帝国の北限ハドリニアヌスの城壁を見に行くことですが、このほかにもセトル・カーライル鉄道の乗車というのもありました。

 初日は、8:10キングスクロス発の長距離列車でイングランド北部のヨークシャー・デイルズ国立公園へ向かいます。ヨークシャー・デイルズは、「激しい自然と独特の文化で知られ・・・その面積は1769平方キロ(大阪府よりやや狭い)広さ」(地球の歩き方 イギリス)の20を超える谷(デイル)から成り立つエリアです。そして、セトル・カーライル鉄道とは、そのヨークシャー・デイルズをほぼ南端に沿って縦断する鉄道です(ヨークシャのセトルとカンブリアのカーライルを結ぶので、この名前がついています)。全長116キロの間に22の陸橋と14のトンネルがあり、イングランドでも有数の高地(とはいっても海抜350メートルぐらいですが)で、絶景が楽しめるローカル線と言われています。さしずめイングランドの小海線って感じでしょうか。

 北イングランド有数の商業都市リーズで乗り換え、いよいよセトル・カーライル鉄道のスタートです。車両は、ローカル線らしく外装はぼろいですが、車内は清潔で快適でした。



 列車は、眩いばかりの陽の光と緑のなかを快適に進みます。ローカル線と言っても結構スピードも速いです。しばらく乗ると、平地から低い山のような、広く広がる草原地帯の丘陵地帯に入ります。羊が見えますが、特に生まれたばかりのような小さな子羊を多く見かけます。ポーランドの車窓とちがい動物のいる風景は心がなごみます。

(車窓から)
  

(セトル駅)


途中、70歳は優に過ぎていると思われるおばあさんが、セトルカーライル鉄道のパンフレットの販売に来ました。イラストや写真を交えたとてもきれいなパンフレットでした。3ポンドということだったので、迷うことなく買いました。

(パンフレット売りのお婆さんと買ったパンフ)
 

 車窓から見える風景は素晴らしいです。草地が進むにしたがって荒涼とした大自然が迫ってくる。家々も見えなくなり、ただただ荒野だけが広がる。 こうした風景はイギリスでも余り見た覚えがありません。

 1時間半ほど乗って、リブルヘッドという大荒野のど真ん中にポッツリと立つ駅で途中下車下車しました。この先にある24本の柱で支えられるリブルヘッド陸橋を見るためです。駅舎は本当に小さいのだが、駅舎内はセトルカーライル鉄道の歴史を展示してあるミニ博物館になっています。

 

 外はすごい風です。宮沢賢治が「風の又三郎」でどんな擬音語を使って風を表現したかは忘れましたが、「風の又三郎」を思い出しました。ゴオー、ザーとでも言うようなどこからというより空気全体が風という感じです。体のバランスをとるのが難しいくらい。

(風は写真に写らないので残念。唯一見つけた風が分かるもの。でもこれでは伝えきってません)


 駅員さんに教えられた通り道を進むと、すぐに陸橋が見えてきました。何もない荒野の谷を結ぶ陸橋は何とも美しい。感動的でさえあります。高さは30メートルらしいのですが、こんな風の中、どうやってこんな橋をかけたのでしょうか。エンジニアの執念を感じます。

   

 この原野の中、この国立公園をWALKINGで楽しむ人たちをちらほら見かけます。日本には決してない風景だと思います。次の列車までまるまる2時間あったので、私もこの風景を1時間ほど歩いて満喫しました。



 しかしこんな民家は見渡す限りゼロで、WALKINGを楽しむような人しかいないところにもパブだけはあるからイギリスは不思議。丁度、昼時でもあったので中に入ってビールとミートパイを頂いた。中はハイカーばっかりで満員でした。

  

 再び、列車に乗って終点のカーライルまで1時間ちょっとの車窓を楽しみます。カーライルが近づくに従って家が現れ、人界に降りてきた感じがします。期待通りの2時間半の鉄道の旅でした。

 

 ちょっと私の写真ではヨークシャ・デイルズの広大さを写し切れていないのが残念です。

※セトル・カーライル鉄道のホームページはこちら→

 (2011年4月30日 旅行)
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グローブ座/ ハムレット

2011-05-13 06:36:24 | ミュージカル、演劇
 先日の連休最終日、グローブ座に「ハムレット」を見に行きました。

(グローブ座外観)


 グローブ座は昨年は初めて訪れ、昔ながらの芝居小屋的な雰囲気に魅了されました。まだ5月頭の半分野外の劇場はまだ肌寒さを感じさせるものでしたが、シーズンの幕開け間もないフレッシュな雰囲気が漂っていました。



(開始直前)


 「ハムレット」は一度は観たいと思っていたシェイクスピアの作品なので、とても楽しみにしました。一応、戯曲の方もこの間読み返してみたので、読んだ印象と芝居がどう違うのかも興味深いものでした。

 見終わってみて、今回の「ハムレット」は私がイメージしていたよりも随分ソフトタッチなハムレットでした。シェイクスピアノ悲劇の代表作でもありますから、冬に見た「リア王」のような、真っ暗やみの重厚な悲劇を予想していたので意表を突かれた感じです。

 衣装も地味目で、王や王妃も王族と言うより、農民のボスのような衣装でした。ハムレットに至っては途中でTシャツ姿になってしまったし。あたりまえですが、きっと、「ハムレット」にも重め、軽め、いろんな演出ががあるのでしょう。グローブ座は半分屋外で17世紀の劇場を再現しているので、大がかりな演出はできないのかもしれず、重くない軽めの演出の方が適しているのかもしれません。

 ハムレットはJoshua McGuireという若手の俳優さん。まさに悩める好青年と言う感じでしたが、演技の方はちょっと、一本調子な感じがしました。私の個人的な注目であったオーフェリアは、Jade Anoukaという若い黒人の俳優さんで、これまた意表をつかれましたが、気品ある演技で、とっても良かった。歌があんまり上手でなかったけど・・・。



(ハムレットのJoshua McGuire)



 やっぱり脚本を読んでいるだけでは分からない部分がいくつかあって、舞台を観て分かるところも多いことに気付きます。例えば、オーフェリアの歌なんかは、脚本では歌の歌詞しか書いてありませんが、芝居ではその歌のリズムとか、色彩、情感が良く分かります。(最も、その歌もイギリス人ならみんな知っている類の歌なのかもしれませんが)。

 また、違った演出の「ハムレット」も見てみたいです。





2011.5.2

Hamlet

Written by William Shakespeare

Creatives
Director Dominic Dromgoole
Designer Jonathan Fensom
Composer Laura Forrest-Hay

Cast
Jade Anouka/ Ophelia
Simon Armstrong Claudius / Ghost
John Bett Polonius
Amanda Hadingue/ Gertrude
Tom Lawrence Rosencrantz / Fortinbras / Osric
Joshua McGuire/ Hamlet
Ian Midlane/ Horatio
Alex Warren Laertes / Guildenstern

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ロンドン ラーメンシリーズ RAMEN SETO

2011-05-11 22:24:43 | レストラン・パブ (in 欧州)
 前回の夢幻に続く、ロンドンラーメン探検隊(隊員1名)によるロンドン旨いラーメン探し。この日はオックスフォードサーカス近くのRAMEN SETO(ラーメン瀬戸)に、職場の仲間多数で出撃。

 頼んだのは野菜ラーメン。結論から言うと、ブー。スープは薄い塩味で悪くは無いのですが、麺がびっくり。高校時代にクラブ帰りに毎日通った駄菓子屋兼パン屋で、いつも食べていた(たしか日清の)コーンラーメンのノンフライ麺に食感と味がそっくり。高校時代はカップ麺の傑作だと思っていましたが、流石に同じような麺がラーメン屋で出てくるのは、ちょっとねえ〜。値段はお手ごろでたしか6ポンドぐらいでしたが、多分、二度と頼まないと思います。

 逆に想定外の驚きは、餃子。これはいけます。酔っ払ってたので、良く覚えてませんが、具がしっかりモリモリ入った大きい餃子で、満足度高いです。

 おいしいラーメン屋さん発見の道は険しいですが、次は、Mikiさんにご紹介頂いたココロにチャレンジしてみたいと思います。
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塩野 七生 『ローマ人の物語〈26〉賢帝の世紀〈下〉』 (新潮文庫)

2011-05-10 21:58:07 | 
本巻では、前巻に引きつづき、ハドリアヌス帝の治世、そしてそれに続くアントニヌスの治世が描かれます。

ハドリアヌスの精力的な帝国辺境の視察と防衛体制の整備は前巻でも触れられていましたが、本巻で興味を引いたのは、132年から134年はじめに起こったエルサレム陥落に至るユダヤ戦役でした。

ハドリアヌスは、ローマ帝国内で反乱を起こすユダヤ人に対して強硬姿勢を取り続け、ユダヤ戦役で勝利を得ます。そして、この勝利により彼はユダヤ人のエルサレムからの全面追放を命じます。それが、ユダヤ人の「離散(ディアスポラ)」をもたらし、20世紀半ばのイスラエル建国まで続くのです。今そこにあるパレスティナやユダヤ人の問題が如何に長い歴史をもったものかに気付きます。

本書では、おさらいとして、ローマ人とユダヤ人の歴史を17ページも使って振り返ります(pp87-103)。当然のことながら、ローマの視点に立ったものですが、とても分かりやすい解説で、ユダヤ人の特性が良く分かります。一度、この当たりの歴史はユアヤ人サイドの文献も読んでみたいものです。

ハドリアヌスを引き継いだアントニヌスは、賢帝であった前帝たちの遺産の定着を図るのが彼のミッションでした。筆者の言葉を借りると、『ダキアを征服することでドナウ河防衛線の強化に成功したトライアヌスと、帝国全域を視察することで帝国の再構築を行ったハドリアヌスが、「改革」を担った人であった。この二人の後を継いだアントニヌスの責務は、「改革」ではなく、改革されたものの「定着」にあったのだ』(pp178-179)。筆者は、アントニヌスもまた、マキャベリの言うリーダーに不可欠の3条件である「力量」「幸運」「時代への適合性」を得た賢帝であったと評価します。

ローマの絶頂期を描いたこの巻以降、ローマがどう衰退していくのか、興味深いテーマが続きます。

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フィルハーモニア管/ マゼール:マーラー交響曲第3番 (マーラーサイクル 2011)

2011-05-09 23:02:30 | コンサート (in 欧州)
日曜日の夜、私自身2回目のマゼールさんのマーラーチクルスに足を運びました。今回は、100分を超える大曲の交響曲3番。昨年のプロムスで聞いたはずです。

しかし、この日は、私自身がダメでした。何故か、昼過ぎから眠くてたまらず、コンサートに備えて昼寝までしたのに、猛烈な睡魔との闘いに終始し、集中力は半分以下。平日は良くこういう時もあるのですが、休日にこういうのは珍しく、とっても不甲斐ない。

そんな状態だったのですが、素晴らしい熱演だったと思いました。初っ端から、ホルン、トロンボーンをはじめとする金管の活躍に痺れ、気合い十分の弦にもうっとりで、とっても緊張感のある演奏でした。第一楽章が終わった時点で、もうお腹一杯という感じ。

その後も、集中力を欠いた自分と全く反対の集中力一杯の熱演振りに、意識もうろうの中、感動してました(我ながら結構、器用)。時たま、首をかしげるところも無かったわけではないですが、この熱演の中では目立たないと思いました。 マゼールさんの指揮は変化球で有名なようですが、直球を知らない私には変化球もカーブなのか、シュートなのかも良くわからないのですが、今日は結構、素直な玉ではなかったかと。

終盤に入る独奏は、ストーティンさんから急遽、コノリーさんが代役でしたが、しっとりとした艶のあるメゾソプラノで奥行きが感じられる歌声でした。最終楽章はそのまま天にも昇るような気持ちになりました。

会場はものすごいブラボーの嵐で、比較的クールな反応が多いロンドンの聴衆としてはかなり熱狂的な拍手でした。マゼールさんも嬉しそうでした。それにしても80歳というのにお元気なことです。指揮台の上で、飛び跳ねていますからね。

マゼールさんには、当初あまりいい印象は無かったのですが、段々と好きになってきたような気がします。 もう手元に今後のチケットは無いのですが、もう少しチクルス、聴いてみようかと思い始めています。

(余談)
評判のフィオーナさんチェックだけは眠くてもやってきました。「なるほど」と理解。でも自分の参戦は控えよう。今回初めて気がついたのですが、フィルハーモニアって、随分、若手の女性奏者が居るんですね。それも、かなりハイレベルな。新しい発見でした。


※相変わらずピンボケですが何枚か。








Maazel: Mahler Cycle 2011
Royal Festival Hall
Sun 8 May 2011, 7:30pm

Lorin Maazel
conductor

Sarah Connolly
mezzo-soprano

Philharmonia Voices
Tiffin Boys Choir

Mahler
Symphony No. 3

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5月のハイドパーク

2011-05-08 22:37:23 | ロンドン日記 (日常)
 先月のパリマラソン以来、お休みしていた週末ジョギングを再開。今日は、風が強く、天気も晴れたり曇ったりの変りやすい天気でしたが、晴れているときはもう夏間近を感じさせるものでした。

 ハイドパーク、ケンジントンガーデンズのスナップです。

 花壇の花が綺麗です。


 芝や木々の緑、空の青、雲の白のコントラストが絵のようでした。


 乗馬も気持ちがよさそう。


 もう殆ど夏と言っていいかもしれません。


 2011年5月8日
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ロンドンのラーメン 夢源

2011-05-07 13:37:01 | レストラン・パブ (in 欧州)
 どうも最近、美味しいラーメンが無性に食べたくなる時がある。この間のパリのラーメンの記事(こちら→)のコメントでみきさんが夢源のラーメンが美味しいと聞いているという情報を得たので、退社時に職場の同僚を誘って出撃。

 事前に他の駐在者何人かに「夢源のラーメンが美味しいという話を聞いたんだけど食べたことある?」と聴いて廻った。2人ほど経験者がいたが、そのうちの一人は「ラ王(カップラーメン)の方が美味しいですよ」というコメントだったので、かなりくじけた。

 夢源は以前の記事で紹介(こちら→)したが、料理はとっても美味しく、私も何度か使わせてもらっている。いつもは残業セットという定食メニューなのだが、この日はメニューを吟味。今まで気付きもしなかったラーメンは、しょうゆと味噌の2種類がある。普通であれば、「基本はしょうゆ」ということで、醤油ラーメンを迷うことなく頼むのだが、同僚の「ラ王のが旨い」というコメントが蘇り、迷いに迷う。サービスのお姉さんに「しょうゆと味噌、どっちがお薦めですか?」と結局聞くことに。いつも感じのいいそのお姉さんは、「私は味噌がお薦めです」。そのお姉さんのキッパリとしたコメントが大いに気に入り、迷いは晴れた。「味噌ラーメンください!!」。味噌ラーメンに餃子とご飯を加え、自前ラーメン定食を注文した。

 15分ほど泡盛(久米島)をちびちびやりながらラーメンの登場を待った末に、味噌ラーメン登場。写真がないのだが、チャーシュー2枚、モヤシの炒め、なると、シナ竹がのっている。味噌は茶色のあわせ味噌風。早速、まずスープをレンゲですくって味わう。「これは、いける」そんな味。味は濃い目だが、スープ自体はこってり過ぎず、さっぱりすぎず、極めて中道。とっても美味しい。チャーシューも柔らかくしっかり味がついている。付け合わせのモヤシやシナ竹も良い感じ。

 残念なのは麺。細麺なのは構わないのだが、ポツリポツリの切れるようなフニャラ麺で、このスープと付け合わせに比べてなんとも貧弱。ちょっと、これはマイナスポイント。

 ただ、ここがロンドンであることを考えると、贅沢は言ってられない。全体としては、十分、美味しい味噌ラーメンと言えると思う。ご飯と餃子を一緒に、大切にスープの一すくい、一本一本の麺を頂いた。

 満足感一杯でお店を出た。お店はモニュメント駅から歩いて1分です。

※お店のHPはこちら→
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楠木 建 『ストーリーとしての競争戦略』 (東洋経済新社)

2011-05-05 22:56:59 | 
一橋大学の先生が書いた競争戦略の本ですが、分かりやすくて面白く、私の実務感覚にもフィットし、かつ新しい視点を投げかけてくれます。「これっだ!」と思わず膝を叩きたくなるような経営書です。

筆者の主張は、優れた競争戦略とは、個々の打ち手(「誰に」「何を」「どうやって」提供するのかという個別要素)ではなく、そうした要素の間にどのような因果関係や相互作用があるのかを重視し、打ち手をつなぐ「流れ」と「動き」をストーリーとして語ることのできる競争戦略です。ですので、要素にすぎないアクションリストでなければ、経営のテンプレート(フレームワーク)でもなく、成功事例の目立つ所だけ注目したベストプラクティスでもありません。更に、ビジネスの人・モノ・金の流れを示す「ビジネスモデル」を示すチャートとも少し違って、戦略ストーリーの絵には「動画的に」因果関係や時間軸の要素が入って行きます。

本書ではこのストーリーとしての競争戦略の概要を紹介したのち(第1章)、既存の競争戦略の基本論理である業界構造の分析、競争ポジショニング(Strategic Positioning)、組織能力(Organizational Capability)をおさらいします(第2章)。そして、戦略ストーリーを支える5C(Competitive advantage, Concept, Components, Critical core, Consistency)を(第3章)、特にそのキーとなるConcept(4章)とCritical core(5章)について詳細に胆を解説してくれます。一つ一つの指摘、解説が腑に落ちるもので、非常に納得感の高いものです。

特に、興味深かったのは、クリティカルコア(戦略ストーリーの一貫性の基盤となり、持続的な競争優位の源泉となる中核的な構成要素)の説明です。このクリティカルコアのポイントの一つとして「一見して非合理に見える」ということがあります。良く良く考えれば合理的な要素でも一見非合理に見えるがゆえに、競合他社は、真似しないし、クリティカルコア抜きのベストプラクティスとしての真似は他のアクションプランや組織能力との整合性が取れないので、上手くいかないわけです。スターバックスの直営方式での出店へのこだわり、アマゾンの物流センターへの投資などがその事例です。

一読して思うことは、当たりまえのことですが、後は如何に、本書を踏み台にして、どこまで自分や企業が考え抜けることができるか?です。ゴルフの教本を100冊読んでもゴルフは上達しません。本書を如何に自分で消化し、引き付け、応用するか?優れた経営戦略はなかなか真似できないものであるがゆえに、本書を読んで、優れた経営戦略が作れるようになるわけではないというのが、現実の難しさであり、面白さだと思います。
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ポーランド旅行 (最終回) メシ

2011-05-04 22:24:45 | 旅行 海外
 ポーランド旅行の締め括りとして、クラクフで食べた食事の一部をご紹介します。

 初日のお昼:ポーランド名物 ピエロギ(ポーランド風餃子)。日本の餃子ととっても似てます


 初日の夜:ポーランド風串焼き。ボリューム一杯です。


 はいったレストランは庶民的だけど、落ち着いた感じのよいお店でした。
 

 2日目 夜
 野菜不足になりがちなので、野菜の盛り合わせ(酢漬けの野菜が殆どですが、甘酸っぱい味つけがとってもいけます)


 これはポーランドのとんかつ(カツレツ)。白ご飯とキャベツと味噌汁が欲しくなります。ついでにとんかつソースも。


 田舎の民家風の雰囲気のあるお店でした。
  

 あと、写真を撮り漏れましたが、名物のスープ、ジューレックは毎回頂きました。店によって酸味とか具の量が違ったりして、面白いです。

 私としては異例の長い3泊4日の旅行でしたが、アウシュビッツの経験の他にもポーランドの豊かな文化に触れることができ、とっても充実した時間を過ごすことができました。 
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ポーランド旅行 (その5) イースターのワルシャワ

2011-05-03 23:02:30 | 旅行 海外
 アウシュビッツを訪ねた翌日、列車でポーランドの首都ワルシャワに向かいました。ワルシャワへは特急(IC)で3時間程です。普段は、周遊旅行をするほどには時間が取れないのですが、今回は連休を使っての旅行なので移動付き。(マニアではありませんが)鉄道に乗るのが好きな私には、こうした移動付き旅行は更に旅情が高まります。



 ユーロスターとかに較べると、列車は古ぼけていますが、客室は非常に清潔だし、座席もイギリスの鉄道よりずっと広くて快適でした。



 天気は曇りですが、車窓からは新緑が美しいです。ただ、何か、同じ田園風景でもイギリスの風景より殺風景だなあ~と思いました。何が違うのか?ずーっと観察してたどり着いた結論は、「家畜(牛、馬、羊)がいない!」。家畜がこれほど田園風景の中で重要なパーツを占めるとは初めて気がつきました。

 

 定刻にワルシャワ到着。ワルシャワは仕事で1度訪れたことがありますが、事務所を訪れたきりなので、殆ど初めてです。しかし・・・、駅を降りてびっくり。イースターのため、街は死んだようでした。駅の売店街もシャッターが閉まっていますし、マクドナルドもお休みです。

 

 ホテルに荷物を置いてとりあえず、ゴーストタウン化したワルシャワの街歩き。流石に旧市街の観光地近辺には人が集まっていました。それでもレストランとかは8割がたお休みです。



 無名戦士の墓。兵士が守っています。
 

 ワルシャワのオペラハウス。イースターのため、この週はまるまる公演はお休み。
 

 旧市街。王宮前の広場。
  

 王宮の城壁。
 

 ワルシャワ出身の偉人コペルニクスの像


 行きたかった歴史博物館も王宮も美術館も残念ながら全てお休みでした。

 教訓:イースターにワルシャワを訪れるべからず!!!
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ポーランド旅行(その4) アウシュビッツ訪問②

2011-05-02 23:21:01 | 旅行 海外
朝起きると、米軍によるタリバン指導者オサマビンラディン氏殺害のニュースで一杯でした。この一件が更なる負の連鎖にならないことを切に願うばかりです。

ポーランド旅行記が途中のままなので、連休最後の本日、アウシュビッツ強制収容所を見学したことで、感じたこと学んだことなどを備忘録としてまとめてみます。

※アウシュビッツ訪問①はこちら→

(アウシュビッツ強制収容所入口)


(1)傍観者にならないこと

ガイドの中谷さんが繰り返しお話しされていたのが、「ドイツ、ナチスが悪だったという視点だけで、アウシュビッツの問題を捉えないで欲しい」ということでした。

アウシュビッツは、多くの関係者によって形成されたシステムとして動いていました。アウシュビッツの収容者を労働力として組込んだドイツの一流企業、実状に気付きつつも声を上げなかったドイツ国民、ドイツの占領下にあったとはいえ自国のユダヤ人連行に手を貸した他欧州諸国政権など、多くの間接的協力者、傍観者が、このアウシュビッツというシステムを支えていました。

言葉を変えると「傍観者にならないで欲しい」。それが中谷さんからの最大のメッセージでした。「非常時に当事者として動くことができるか?」それがアウシュビッツを通じて歴史を学ぶことの意味だと気付きました。

ナチの一党独裁政権も、決して、突然降って湧いたわけではありません。当時の世界でも高度の民度を誇ったドイツという国で、合法的にかつ民主的に、形作られていったのです。

なので、今現在を生きる我々にも、歴史の逆コースを歩む種はいろんなところにある訳です。そうした芽を早いうちに気付き、小さくとも声を上げていき、行動を取っていくこと。それが大切なのですね。

これも中谷さんの受け売りですが、東北大震災に際して日本人が取った冷静で協力的な行動。これは世界から賞賛を浴びていますが、中谷さんの見方は、毎年行なってきた防災訓練の賜物なのではないかということでした。アウシュビッツを通じて歴史を学ぶ意味は、日本人の防災訓練のように、非常時に常識的で適正な判断と行動が取れるかどうかだということなのです。

(ビルケナウ収容所に引き込まれる鉄道線路)


(2)個人の組織行動の問題なのか?信条(宗教)なのか?それともマインドコントロールなのか?

施設を廻り、当時の建物、写真等を見て感じた疑問。当時のSS(ナチス親衛隊)のメンバーはどういう気持ちだったのだろうか?ということです。ここで100万人を超える人間をユダヤ人といった理由だけで殺していったのです。(前記事記載のように殺されたのはユダヤ人だけではありませんが・・・)

私には、これは「組織における個人」の問題に見えました。レベルは全然違いますが、会社組織で働いていれば、時として個人の考えとは違うことも、組織の論理として行動に移さねばならないこともでてきます。SSのメンバーも、自己の考えには逆らいながらも、組織の命令として行動せざるえなかったのか?ということです。そうであれば、組織における個々の人間行動のケーススタディとして、彼らの心理や葛藤について知りたいと思いました。

しかし、中谷さんは、「戦後、アウシュビッツの関係者でこの殺人に対して謝罪した人は、(中谷さんが知るかぎり)存在しない。収容所のメンバーは『ベルリンの本部の命令に従っただけだ』と言い、本部の人間は『現場が暴走した』と批判しあっているが、自己批判は聞いたことがない」と説明してくれました。

仮にそうだとすると、アウシュビッツ関係者は『この世からユダヤ人を絶滅させることが真にドイツのためになる』と信じて行動していたのでしょうか。無差別テロを行なうイスラム教徒と同様に、SS教に基づいた個人の信条に従った結果なのでしょうか。

しかし、その信条は、個人の良心や考えに基づいたものなのか、それともマインドコントロールされたものなのか?どう考えればいいのでしょう。例えば、現代のイスラム教徒のテロとオウム真理教のテロは同じなのか、違うのか?違うとしたら何が違うのか?

自問はループするばかりで、答えは未だ出てきません。しかし、アウシュビッツで行なわれた行為は「悪」であるはずにもかかわらず、その判断が高い教育を受けた人たちが自分自身でできなくなるというのは、どういう時なのか?同様な過ちを繰り返さないためにも、もう少し探って行きたいと思います。

(ビルケナウ収容所)


(3)被害者と加害者、歴史の中で

 私の不勉強もありますが、ユダヤ人の歴史というのは本当に複雑です。今読んでいる「ローマ人の物語」の中で、ユダヤ人離散の起こりが書かれています。ローマ時代に本格的に始まった離散や迫害の歴史ですが、アウシュビッツもその歴史の中、延長線にあり、更にその歴史は、現代のイスラエル、パレスチナ紛争へと繋がっていきます。まさに数千年の歴史を持った問題であるわけです。

そして、「被害者」であったユダヤ人は、今、パレスチナにおいて「自衛」の名の元、アラブ人に対しては「加害者」となっています。そして、そのアラブ人(の一部)も外部環境、立場によって、今度は被害者が加害者になります。それが、ユダヤ、パレスチナに限らず、人間や人間社会の複雑さ、難しさ、そのものだと思いました(かなりユダヤ、ユダヤ人、パレスチナ、アラブ、イスラムの言葉を区分けせず使っていますが、ご容赦ください)。この複雑な人間、社会を理解するには、こうしたアウシュビッツのような歴史を知ることが、感覚的にも一番良く理解できます。そして、まずは理解することが、進歩に向けての一歩になることだと、改めて感じた次第です。

以上、雑駁ですが、自分がアウシュビッツで感じたことをメモしてみました。正直、こうしたことを真面目に考える時間や機会は、日々の日常や仕事に追われる生活の中ではありません。こんな機会が与えられただけでも、ここに来て良かったと思いました。本を読むことはできても、当地で実感するこの生の迫力は何ものにも変えがたい迫力があります。そして、本で読んだことは忘れてしまいますが、この実感は、ずーっと自分の中に残り続けると思いました。できれば、今、学校で歴史を学んでいる子供と一緒に来たかったです。

(犠牲者の国際追悼記念碑)
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マゼール/ フィルハーモニア/ マーラー交響曲第4番ほか

2011-05-01 23:55:13 | コンサート (in 欧州)
 マゼールさんのマーラー・チクリスに初めて足を運びました。
 
 前半は「リュッケルト歌曲集」。バリトンはサイモン・キーンリサイドさん。登場してびっくり。何と左腕にギプスしてました。どうしたんでしょうか?もうすぐロイヤルオペラでマクベスも始まるのに大丈夫かと少し心配になりました。多少動きにくそうですが、力強く、抒情的な歌声は素晴らしいです。残念だったのは、カーテンコールが1回きり。1回のカーテンコールが終わったところで、すーっと拍手が引いてしまい、私は一生懸命拍手したのに、他の聴衆の皆さんはあまりお気に召さなかったのかな?

 後半は交響曲第4番。自分自身そんなに聴きこんでいる曲ではないのですが、マゼールさんの指揮は面白いですね。テンポ、強弱に変化があって、第1楽章は、コブシが効いた演歌の世界のようでした。第4楽章で登場したソプラノのSarah Foxさんも良かったです。高温が綺麗に伸びた美しい声でした。前列3列目に陣取ったので、とっても良く聴こえました。

 フィルハーモニアの演奏も、マゼールさんのタクトに的確にこたえる安定したものだったと思います。私の演奏会に行ったのは2か月弱ぶりなのですが、やっぱりコンサートは良いなあと思った次第です。

 ※今日のサプライズ。インターバルでMiklosさんと遭遇しました。

(サイモン・キーンリサイドとマゼールさん)


(Sarah Foxさん)



Royal Festival Hall

Philharmonia Orchestra
Resident at Southbank Centre

Gustav Mahler:

Rückert-Lieder
Interval
Gustav Mahler: Symphony No.4

Lorin Maazel conductor
Sarah Fox soprano
Simon Keenlyside baritone

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