その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ベルリン/ハンブルグ訪問記 (その1)

2011-06-11 10:18:57 | 旅行 海外
 2週間前の連休にドイツのベルリン、ハンブルグを駆け足で訪れたので、その備忘録を残しておきたいと思います。ベルリンは2年前にベルリンフィルを聴きに来ましたので、今回が2回目です。前回、時間の関係で廻れなかったペルガモン博物館を初めとしたいくつかの博物館・美術館にどうしても行っておきたかったのです。

【ペルガモン博物館】



 スケールの大きさが想像以上で、本物の迫力が見るものを圧倒します。入場していきなり現れるペルガモンのゼウスの大祭壇(紀元前180~159)は、古代ギリシャのペルガモン(現トルコ)で発掘された遺跡がそのまま再現されています。まるごと展示してある壮大なスケールは大英博物館を凌ぐほどです。

(ゼウスの大祭壇)


 

 この他にも「ミレトスの市場門」や古代バビロニアの「イシュタール門」などの展示は、本物ならではの無言のオーラが漂っています。私は、特に「イシュタール門」の青い色のレンガに魅かれ、しばし立ちすくんでしまいました。あまりの美しさに溜息がでます。

(ミレトスの市場門)


(イシュタール門)


 

【絵画館】
 続いて、ベルリンフィルの本拠地フィルハーモニーの奥にある絵画館へ。




 イタリア、オランダ、ドイツものの近代以前の絵画を中心に非常に充実した展示です。ボッティチェッリ、ホルバイン、レンブラントなどが充実していたのが嬉しいです。フェルメールもありました。
 



 ペルガモン博物館の賑やかさに較べて、とても静かで空いているので、落ち着いて、ゆっくりすることができます。

 2011年5月28日
コメント (2)
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フランクフルト歌劇場  KULLERVO(Sallinen)/クレルヴォ Op. 61 (1988)

2011-06-10 00:50:52 | オペラ、バレエ (in 欧州)
Aulis Sallinen(アウリス・サッリネン)という北欧の音楽家が作曲した20世紀オペラ。どうしようもなく暗いオペラ(あらすじはこちら→)。救いようがない。これではどんな名演でも、あまり見に行きたいと思わせないだろう。そのせいか、3連休の谷間からかはわからないが、さほど大きいとは思えないホールも7割り程度の入りだった。休憩後はさらに減っていた。

しかし、舞台はとても熱った。歌、演奏、舞台がしっかり噛み合った名演だったと思う。

オーケストラが熱演。暗く重い上に緊張感あふれる音楽だった。スーパースターではなさそうだが、歌手陣もレベル高い。かなり高い演技力を求められる演出だったが、文句なしの熱演。特に主人公は悩める青年xxxを表情豊かな熱演。お母さんやくのソプラノが美しい。友達やくのテノールがいい。またコーラスの迫力が素晴らしく、舞台の緊張感をぐっと高めた。

演出もグレイを基調にした舞台(この歌劇場では初演のようだ)は、色彩も仕掛けも舞台は良くできており音楽とストーリーにしっかり噛み合っていた。

しかし重苦しい場面一辺倒のオペラが3時間半もあるのは、体に良くない。とても疲れる。集中力が続かない。残念だったのは台詞が全く解らなかったこと。ストーリーは事前に調べておいたので流れにはついていけたが、細かい場面描写がわからず、せっかくの名演がもったえなかった。

会場の入りは悪かったが、拍手は大きなものだった。やっぱり解る人には解るんだな。






 フランクフルト歌劇場のホールは近代的なオペラハウス。青を基調とした色合いは清潔感があって個人的には好み。中高年中心の聴衆は基本的に華美ではないがドレスアップしている。












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Premiere

KULLERVO
Aulis Sallinen
* 1935


Sonntag 05.06.2011

Musikalische Leitung : Hans Drewanz / Karsten Januschke
Regie : Christof Nel
Szenische Analyse ; Martina Jochem
Bühnenbild ; Jens Kilian
Kostüme ; Ilse Welter
Dramaturgie ; Malte Krasting
Licht : Olaf Winter
Chor ;Matthias Köhler

Kullervo
Ashley Holland
Mutter
Heidi Brunner
Kalervo
Alfred Reiter
Kimmo
Peter Marsh
Schwester
Barbara Zechmeister
Des Schmieds junge Frau
Jenny Carlstedt
Jäger
Frank van Aken
Unto
Franz Mayer
Untos Frau
Katharina Magiera
Tiera
Lukas Schmid
1. Mann
Sebastian Haake
2. Mann
Toby Girling *
Blinder Sänger
Christoph Pütthoff
Tote Frau
Barbara von Münchhausen

Chor der Oper Frankfurt
Frankfurter Opern- und Museumsorchester


* Mitglied des Opernstudios

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いったい日本はいつから言論統制の国になったのか?

2011-06-09 23:52:29 | ロンドン日記 (日常)
 せっかく一仕事を終え、良い気分で帰宅したのに、酔いを一気に覚ますような記事を目にして、一言書かずにはおられない。TwitterやFACEBOOKに載せるような、個人的怒りなのだが、これはあまりにも酷い(→asahi.comより


 いったい日本はいつから言論統制の国になったのか?この措置は情報の隠蔽よりも更に性質が悪いと思うのは私だけか?

 これでは完全に戦時中と同じではないか?そのうち、社会に不安を与えるような情報を流布したという理由で逮捕される風評防止条例や法案が真面目に提出されるんではないだろうか?

 世の中の情報にはいろいろあって、その中で、多様な主義主張が生まれ、社会は進歩していくのではないのか?

 外野席から野次を飛ばしている無力感にいつも捉われながらも、ホントに日本は大丈夫か?



放射性物質検出、静岡県が公表を制止 食品通販業者に

2011年6月10日4時15分

静岡県が、自主検査で国の基準を超える放射性物質が検出されたとホームページ(HP)で公表しようとした東京都内の食品通販業者に、公表を控えるよう求めていたことが分かった。

 有機野菜などの会員制宅配サービスを行う「らでぃっしゅぼーや」(東京都港区)。同社は自主検査で基準を超えたと6日に県に報告。この際、HPでの公表を県が控えるよう求めたという。同社は商品を購入した会員に、経緯と商品回収の意向を伝える手紙を郵送したという。

 県経済産業部は「消費者への連絡など最低限のことはやっている。HPで出すとかえって不安を広げかねない」と説明している。

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パウロ コエーリョ (著), 山川 紘矢、山川 亜希子 (翻訳), 『アルケミスト―夢を旅した少年』 (角川文庫)

2011-06-06 22:16:08 | 
 同僚のお薦めの本と言うことで、借りて読んだ。あとがきによると、作者のパウロ・コエーリョと言う人はブラジルの人気作家で、本書はブラジルを初めフランスやイタリアでもベストセラーリストの一位に何回も顔をだし、かつ各国で文学賞も獲得している有名作品らしい。物語は、童話風で、主人公の少年が夢を追い続けて、数々の危険にもあうが、最後には夢をかなえるという、まとめてしまえば、何のたわいもないお話である。ちなみに表題のアルケミストとは、少年を導く錬金術師を指す。

 童話風の物語であり、語り口は「星の王子様」を彷彿させる空想的な、宙に浮いたようなトーンであるが、童話の形をとった強いメッセージ文学と自分には読めた。つまり、「日常の忙しさやしがらみを言い訳にして、本当の夢を追いかけることを忘れるな」ということである。

 なので、いろいろと教訓めいた台詞が顔を出す。例えば・・・

 「まだ若い頃は、すべてがはっきりして、すべてが可能だ。夢を見ることも、自分の人生に起こってほしいすべてのことにあこがれることも、恐れない。ところが、時がたつうちに、不思議な力が、自分の運命を実現することは不可能だと、彼らに思い込ませ始めるのだ」・・・「自分の運命を実現することは、人間の唯一の責任なのだ。すべてのものは一つなんだよ。おまえが何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるのだよ」(pp28-29)

 この物語は、人によって好き嫌いがあると思う。私は物語としては楽しんだけども、どうも説教くささが鼻について、自分の好みとは違っていた。きっと私は、「自分の運命を実現することは不可能だと」思いこんだ人間になってしまったのだろう。
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キャンディード (バーンスタイン)/ロンドン交響楽団

2011-06-05 23:46:49 | コンサート (in 欧州)
ロンドン交響楽団によるキャンディード(演奏会方式)を聴きに行きました。序曲は良く耳にするし、組曲も一度演奏会で聴いたことがあるけど、お話付き、歌付きを全部通して聴くのは初めてです。

演奏会方式なので、ステージにオーケストラとその後ろに合唱団が陣取り。そして独唱陣がオーケストラの前で歌います。ナレーターが舞台向かって右手に陣取り、話を進行させます。演奏会方式ですが、歌手さんのちょっとした演技も入ります。

公演の方は、親しみやすい音楽を美しく聞かせてくれたLSOと歌手陣、迫力の合唱、軽妙なナレーションがうまく噛み合って、全編を通じてリラックスした雰囲気で、肩肘張らず、とっても楽しめました。ミュージカルを観るようなワクワクした気持ちで、物語を追うことが出来ました。

ちょっと残念だったのは、歌は、マイク、スピーカーを使っていたこと。今日は3階席だったので歌手のナマ声はほとんど聞こえませんでした。ただ、ミュージカルを見ていると思えば気になりません。

今回の発見は指揮のクリスチャン・ヤルヴィ。指揮ぶりが滅茶苦茶格好いい。ロスフィルでサロネンさんのアシスタントをやっていたせいか、棒の振り方もサロネンさんに似ている気もしないではないですが、体全体でリズミカルにリズムをとりながら、踊るがごとくの指揮ぶりは、キャンディードのリズムにも呼応して、音楽の一部になっているかのようでした。音楽も軽快かつおおらかで、美しいです。ちょっと今後マーク要。

帰り路では何人かの人が、ラストのサビのメロディを口ずさみながら、冷たい雨の中歩いていました。この夜の楽しい気分を共有している気がして、嬉しくなるものでした。








Bernstein Candide: London Symphony Orchestra
Concert performance
5 June 2011 / 19:00
Barbican Hall

Bernstein Candide
Kristjan Järvi conductor

Cast includes:
Andrew Staples Candide
Kiera Duffy Cunegonde
Kim Criswell Old Lady
Jeremy Huw Williams Pangloss, Martin
David Robinson Governer, Vanderdendur, Ragotski
Marcus Deloach Maximilan, Captain
Kristy Swift Paquette
Jeffrey Tucker Bear Keeper, Inquisitor, Tzar Ivan
Matthew Morris Cosmetic Merchant, Inquisitor, Charles Edward
Jason Switzer Doctor, King Stanislaus
Michael Scarcelle Junkman, Inquisitor, Hermann Augustus, Croupier
Peter Tantsits Alchemist, Inquisitor, Sultan Achmet, Crook
London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra
Thomas Kiemle Director / Producer

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ロイヤルオペラ/ マクベス

2011-06-04 23:46:36 | オペラ、バレエ (in 欧州)
緊張感がみなぎる血気あふれる迫力の舞台で、体が震える感動を覚えた。

今回の舞台の立役者はマクベスというよりマクベス夫人。夫人役のリュドミラ・モナスティルスカ(Liudmyla Monastyrska)はウクライナ出身のソプラノ。体格も横綱級だが、とにかくものすごい声量で、ロイヤルオペラハウスの隅々にまで声が響き渡る。4階席の前部に座った私にも空気の振動が直接ぶつかってきて、心臓がドキドキしてしまったほど。会場は彼女が歌う度に憑かれたように拍手、ブラボーが連発だった。難しそうな部分もうまく裁き、テクニックも素晴らしいとお見受けした。

マクベスのキーリンサイドをはじめ、他の歌手も良い出来だった。キーリンサイドという人は、いつも安定している。ちょっとインテリ風でかっこよすぎて、武骨な田舎武人という私の勝手なマクベスのイメージとは違うのだが、最後のソロなんぞは、泣きたくなるほど素晴らしい歌いっぷりだった。

音楽も素晴らしい。パッパーのが振ると、ロイヤルオペラのオケは、いつもとってもイキイキと生気溢れる演奏をしてくれる。今日もヴェルディの音楽を、時に勇壮に、時に深刻に、活気ある音楽を聞かせてくれた。

演出も文句なし。特に凝ったところはないが、音楽と歌を上手に引き立てる舞台だったと思う。

なかなか歌、演奏、舞台が全部まとめて大満足というような公演にはなかなか巡り会えないのだが、今回の公演はこのなかなか巡り会えない公演であったことは間違いない。5月は「ファウストの劫罰」「マクベス」ととっても当たり月だった。

(Lady Macbeth: Liudmyla Monastyrska)


(揃い踏み)


※以下ROHのFaceBookページから借用

(妖精たち。でも妖精って3人じゃなかったけ??)


(キーリンサイドとリュドミラ・モナスティルスカ)
 

(最後の決闘)






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Macbeth
May 27 7:30 PM

Credits
Composer: Giuseppe Verdi
Director: Phyllida Lloyd
Designs: Anthony Ward
Lighting design: Paule Constable

Performers

Conductor: Antonio Pappano

Macbeth: Simon Keenlyside
Lady Macbeth: Liudmyla Monastyrska
Macduff: Dimitri Pittas
Banquo: Raymond Aceto
Malcolm: Steven Ebel§
Lady-in-waiting: Elisabeth Meister§
Doctor: Lukas Jakobski§


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高くついたうっかり・・・

2011-06-03 23:46:51 | ロンドン日記 (日常)
 先日、ドイツに行ったのだが、帰り際にとんでもないうっかりをしてしまった。ハンブルグ空港のセキュリティゲートでカバンから取り出したプライベートのノートPCをそのまま、ベルトコンベアの上に置き忘れてきたのだ。何とアホな。

 家に帰って気付き、ショック・・・。あわてて、空港に電話するが、「そんな物は届いていない」というそっけない返事。一応、メールでも、紛失物の連絡をしておいた。旅行用のちっちゃなPCなのでハードディスクには正直大した情報は入っていないのだが、それでもメールとかブログにログインされたらどうしようとか、かなり心配だった。

 幸い、翌々日にメールにて、「ありました」の連絡。嬉しかった・・・。

 ただ、さすがに取りに行けないので、空港から案内された宅急便事業者にピックと梱包と郵送を手配。無事、本日、到着しました。よかった・・・。

 でも、なんと料金が205€。高い!!!たった350£のパソコンの郵送に205ユーロかよ。自分の不注意とはいえ、なんとも痛い。高い授業料だ。

 皆さんもくれぐれもお気お付けください。

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塩野 七生 『ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉』 (新潮文庫)

2011-06-01 22:51:26 | 
 筆者自身が「はじめに」で触れているように、この巻は、これまでのそして今後のどの巻とも異なっている。この巻だけは「ローマ人」の物語ではなく、ローマ人が築いた「インフラストラクチャー」が主人公だからである。そのためか、わざわざ、筆者は「読むのも困難であるはずで、・・・手に汗ににぎるたぐいの快感は、・・・期待しないでほしい」(p26)とはじめにで述べている。しかし、この前書きは一切不要であると思った。自分のとっては、ある意味、今まで読んだどの巻よりも興味深いものだった。

 「ローマ人の考えていたインフラには、街道、橋、港、神殿、公会堂、広場、劇場、円形闘技場、競技場、公共浴場、水道等のすべてがはいってくる。・・・ソフトなインフラとなると、安全保障、治安、税制に加え、医療、教育、郵便、通貨のシステムまでも入ってくるのだ」(p21)。今の我々の生活の基盤になっているインフラの原型が殆どローマ人の作った仕組みに拠っているというのは驚嘆すべきことであると思う。本巻は、その彼らがどう考え、どうやってこれらのインフラを整備していったのかが語られる。面白くないわけがない。

 上巻の本書はそのインフラの中でも、街道、橋、そしてそれを利用した人々に焦点をあてを扱っている。道路自体はローマ人の発明ではないが、それをネットワーク化したのはローマ人。「街道の弟」として街道との連関と調和の関係を持ちながら、耐久性、機能性、美観を考えて作られた橋。そして、その街道、橋を使っていた軍団は、兵站で勝つとまで言われ、一般人はモノ・ヒトの流通を促進し、そして郵便は帝国中に情報を流通させた。今の世の中ではあって当たり前になっているインフラの持つ意味あいを改めて考えることができる。

 加えて、本書の楽しさは、他巻と違ってふんだんにローマ遺跡の写真が掲載されていること。これを見れば、ローマを訪れ遺跡を廻りたくなること間違いなし。ローマを訪れる前には、本書に目を通すことをお勧めしたい。
コメント (2)
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