★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

懐かしの詫びキャン

2023年07月18日 09時01分10秒 | 徒然(つれづれ)
 今でこそ通信販売と言えば、インターネット通販ということになるが、その昔は紙媒体のカタログ通販が主流だった。
 私も40年前に、そんなカタログ通販の会社に転職した。
 中途入社後、会社は時流に乗って急速に成長し、東証一部上場まで上り詰め、業界のトップランナーと持てはやされたものだ。

 当時の通販業界は、まだインターネットの入り込む余地はなく、アマゾンや楽天など影も形もなかった。
 百万単位でカタログを配布し、その注文を添付ハガキと東西の電話受注センターで受ける。
 それを配送センターから出荷する。

 私はカタログ掲載商品の仕入部門に所属していた。
 業務内容は、カタログ掲載商品の決定と取引先からの仕入れ、受注に応じた供給だ。

 掲載商品は受注予想数を設定し、取引先に確保させ、受注に応じて取引先に発注する。
 受注が予想数を上回れば追加発注、下回れば確保の解除だ。

 問題は受注が大幅に上回った時の供給だ。
 追加発注から納品までには時間がかかる。
 早ければ即納、生産からとなると1ヵ月前後、衣料品だと2ヵ月以上かかる場合もある。

 そんな時は顧客に納期を連絡して待ってもらう。
 待つのが無理な顧客はキャンセルだ。

 納期を連絡したにもかかわらず、なんらかの都合で供給できない場合もある。
 そんな時には、詫び状とともにハンカチなどの粗品を添えて、郵便でその旨を連絡する。

 それを我々は詫びキャンと言った。キャンはキャンセルだ。
 仕入担当者にとってはマイナスの査定ポイントだ。
 余談だが、私は『詫びキャンブルース』を自作して、飲み会の席などで自嘲的に披露していた。

 詫び状の原本は手書きで、文面はテンプレートを参考に、仕入担当者が考える。
 字の下手な担当者は、事務の女の子に代筆してもらっていた。
 下書きを顧客担当部署の課長クラスに添削してもらい、OKが出たらそれを必要数コピーして郵送するのだ。

 今にして思うと、アナログな対応だったが、当時はそれが心のこもった顧客対応だとされていた。
 ネット社会になった現在は、どのような対応をしているのだろう。
 

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