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Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ゴシカ

2014年05月28日 02時19分03秒 | 洋画2003年

 ◎ゴシカ(Gothika 2003年 アメリカ)

 ペネロペ・クルスが大のご贔屓なぼくは、

 養父殺しで捕まり、精神病院に収監されながら、

 悪魔に毎晩レイプされ続けるのよ、なんて訴える彼女の登場で、

 これはもう凄い映画にちがいないとおもってしまった。

 たしかに、

 ペネロペ・クルスの担当医になってるハル・ベリーも決して嫌いじゃないし、

 その彼女が帰宅途中で白い少女の幻影に出くわして記憶を失い、

 自分の研究室でめざめたときには、

 すでに自分の夫を惨殺して逃げてきた後で、

 どれだけ自分が得体の知れない何者かに憑依されてると訴えたところで、

 ペネロペ・クルスと同じように精神病患者扱いされて、

 結局、自身のちからで悪魔なのか霊魂なのかわからないモノと交感しながら、

 夫殺しの真犯人とぺネロぺを犯し続ける悪魔の正体を究明していくなんて、

 しかも唯一の手掛かりが幻の少女が血糊で描いた、

「not alone」

 の文字だけだってのがなんともそそられるじゃん。

 中盤までの物凄さは後半になって失速する感は多少あるけど、

 すべてが陰湿なエロスに満ちてる感じは嫌いじゃないな。

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真珠の耳飾りの少女

2014年04月10日 01時18分32秒 | 洋画2003年

 ◎真珠の耳飾りの少女(Girl with a Pearl Earring 2003年 イギリス・ルクセンブルク)

 ヨハネス・フェルメールの人気は世界的なもののようで、

 ご多分にもれず、ぼくも好きだったりする。

 だから、スカーレット・ヨハンソンが演るというのを聞いたとき、

 ちょっとな~と、おもった。

 だって、肉づきがちょいと好すぎるし、

 なんといっても半開きになった唇がセクシーすぎるだろっておもったからだ。

 で、予想どおりだったんだけど、それについてはおいとこう。

 絵づくりに、度肝を抜かれた。

 だって、フェルメールの絵そのものなんだもん。

 窓から差し込む日の光について下女のヨハンソンも気にしてるとおり、

 照明の細部までもが、絵のとおりだ。

 このあたり、凄い。

 衣装も美術もそうで、1660年代のオランダが見事に定着してる。

 自然光のもたらす和やかさと、役者たちの迫真性とがあいまって、

 画面すべてにいいようのない緊張感が生まれてる。

 ま、そんなふうにべたぼめしちゃうのも無理のない映像だし、

 つむがれてる物語の理性的な美しさもまた褒められるべきかもしれないね。

 少女に自分を理解できる才能と心根を感じ取ったフェルメールの、

 触れたくても触れられない葛藤と、

 やがて、少女の耳たぶに耳飾りの穴を開けるときの緊迫感は、

 いや、ほんと、かなり官能的な世界だとおもうんだよね。

 誰の指先も触れることのなかった少女の肌に、

 妻子ある男が針を突き刺して血を滲ませるんだから。

 ま、そのへんのところをじっくりと堪能することで、

 芸術と官能がいかに表裏一体なものなのか、

 ため息が出るほどに感じ取れちゃうんだよな~。

 あ、だからヨハンソンだったんだろうか…。

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すべては愛のために

2013年10月31日 19時13分13秒 | 洋画2003年

 ◇すべては愛のために(2003年 アメリカ 127分)

 原題 Beyond Borders

 staff 監督/マーティン・キャンベル

     脚本/キャスピアン・トレッドウェル・オーウェン

     撮影/フィル・メヒュー 美術/ウォルフ・クレーガー

     衣裳デザイン/ノーマ・モリソー 音楽/ジェームズ・ホーナー

 cast アンジェリーナ・ジョリー クライヴ・オーウェン テリー・ポロ ライナス・ローチ

 

 ◇世界には今、この瞬間も死んでいく子供たちがいる

 アンジェリーナ・ジョリーが、UNHCRの親善大使を務めてることは周知のことだ。

 まあ、そういうこともあって、広報活動的な映画になっちゃってるのは、

 なんとなくわかるんだけど、

 でも、その主役が、

 難民救済活動に身を投じてゆくっていうだけじゃなくて、

 そこでNGO救援活動チームのリーダーと不倫の恋に身を焦がすって展開は、

 さすがにハリウッド的というか、アメリカならではだな~と。

 ただ、女の人がとんでもなく行動的な面を見せるのは、

 使命感ももちろんあるんだけど、そこに恋が介在してる方がなんとなくしっくりくる。

 つまり、すべては愛のためっていうところの「愛」は掛け言葉なんだよね。

 話を追うに従って、

 エチオピアからカンボジア、カンボジアからチェチェンって具合に、

 どんどん危険度が増していくのは、

 どんどん恋愛にのめりこんでいく危険度もまた増していくっていう理屈で、

 恋の最後は、やっぱり地雷を踏んじゃうのかしら?

 自分の死によって、相手の中に自分の面影を生涯とどめてもらうかわりに、

 好きな男の命を助けるだけじゃなく、使命も同時に果たしてもらうっていう、

 最後の最後まで二重構造になってるわけなんだけど、

 こうなってくると、

 でも、まあ、理解のあるようなないような夫の存在が、

 ちょっぴりどうでもよくなってくるし、

 そもそもいるのかいな?ってこともちょっぴりおもったりするんだけど、

 やっぱりあれだよね、

 道ならぬ恋の方が燃え度も強いだろってことかしら?

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コールド・クリーク 過去を持つ家

2013年09月02日 15時44分37秒 | 洋画2003年

 ◇コールド・クリーク 過去を持つ家(2003年 アメリカ、カナダ、イギリス 119分)

 原題 Cold Creek Manor

 staff 監督/マイク・フィギス 脚本/リチャード・ジェフリーズ

     撮影/デクラン・クイン 特撮/ドリュー・ロングランド

     美術/レスリー・ディリー 音楽/マイク・フィギス

 cast デニス・クエイド シャロン・ストーン クリステン・スチュワート クリストファー・プラマー

 

 ◇寒々しい入江の荘園

 Cold Creek Manorを直訳するとそうなる。

 もっとも、Manorは大邸宅という意味もあるから、

「冷たく、曲がりくねった小川の錯綜するほとりにある大邸宅」

 となるのかもしれない。

 けど、これは屋敷の置かれているところの情景を説明しただけで、

 題名がなにかを暗喩しているのかといえば、どうもそうじゃないらしい。

 もちろん、一家惨殺という過去を持った屋敷なんだから、

 何本もある小さな川は、もしかしたら、

 人間の体内を無数に流れている血管すなわち赤く細い川なのかもしれない。

 でも、だからといって、過去の暗喩にはならないし、

 息子の交通事故をきっかけにして引っ越してきた一家4人の運命を、

 なんとなく示しているというわけでもない。

 てなことから考えると、

「悪くしたら、なんのひねりもない映画なんじゃないか」

 という不安が脳裏をよぎったんだけど、案の定、そうだった。

 役者に費用をかけている分、つらいかもしれないね。

 クリステン・スチュワートはこのときまだまだ少女の面影をとどめていて、

 ビキニになってもその少女らしい貧相さが際立っちゃう。

 ちょっと、かわいそうかな。

 ただな~、一家惨殺の犯人が別な罪で服役していたから捕まらず、

 それで服役を終わって帰ってきたことで、ふたたび家が血に染まりそうなるって話は、

 作りようによってはもうすこし面白くできたんじゃないかって気もするんだけど、

 そんなことはないんだろか?

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チェルノブイリ・ハート

2013年08月29日 16時42分19秒 | 洋画2003年

 △チェルノブイリ・ハート(2003年 アメリカ 61分)

 原題 Chernobyl Heart

 staff 監督/マリアン・デレオ

     編集/ジョン・クストディオ 協力/アディ・ロッシュ 

 

 △1986年4月26日、チェルノブイリ原発事故

 アカデミー賞の短編ドキュメンタリー部門で受賞したってこともあって、

 ともかく、観た。

 とてもよくできた映画だった。

 けど、なんだか『コーヴ』と同じ匂いを感じた。

 チェルノブイリの事故はたしかに大変なものだった。

 大変というのは、周囲に対する放射能の影響のことだ。

 言葉では言いあらわせないほど悲惨だし、

 この映画の描いているとおりの状況ならば、

 どれだけ恐ろしい事故が引き起こされたのか、想像を絶するし、

 ぼくたちの棲んでいるこの国の将来について非常に懸念されるわけだけれど、

 ちょっと、違和感を持ったところがないでもない。

 チェルノブイリ・ハートというのは、

 チェルノブイリの事故により放射能が漏れ、その放射能による影響で、

 生まれついて心臓に重度の疾患をもってしまうことなんだけど、

 そうした子どもたち、あるいは放射能障害の人達の実数や正確なデータ、

 さらには病院関係者の数値をもってする証言や奇形や疾患の原因などが、

 この映画を観ているだけだと、いまひとつ、よく見えてこないってところだ。

 制作者側は、なるほど、明確な意思と意義をもって撮影している。

 それは、わかる。

 ただ、たとえば、この作品に併映されてた『ホワイト・ホース』もそうなんだけど、

 チェルノブイリで放射能を浴びてしまったとおもわれる主人公が、

 27歳の若さで他界したttことを知らされたとき、

 その原因が原発事故による放射能障害であるとは明確に断定されてないんだよね。

 こういうふうに映画を完成させてしまうのは、

 なんとなく「惜しいな~」とおもっちゃう。

 感情に訴えるんじゃなくて、

 もっと具体的な分析データみたいなものを、

 冷静に提示することが必要なんじゃないのかな~と。

 たとえば、チェルノブイリから放出された放射能について、

 広島の600倍だとかいうけど、それはどこまで信憑性があるのかとか、

 被災者は900万人で、移住を余儀なくされた人は40万人で、

 隣国ベラルーシの方が放射能の被害は大きく、

 そこで生まれてくる子どもの小児甲状腺ガンの発生率は、

 0.9%だったのが26%に跳ね上がったとかいうのは、

 たしかに数値ではあるんだけど、

 どこで誰がどのようにして調べて、どれだけ確実性のあるものなのかということを、

 いったいどれくらい検証されたかが、語られていない。

 だから、惜しいな~とおもうんだよね。

「汚染地域の新生児の85パーセントがなんらかの障害を持って生まれてくる」

 とかいわれると、そりゃあエライことじゃんっておもうし、

 チェルノブイリ・ハートの子どもを持った両親とかの証言は、

 たしかに身につまされるものはあるんだろうけど、

 病院に収容されてる新生児や幼児たちの全員が、

 放射能障害による患者なのかどうかも明確にされてないんだよね。

 ドキュメンタリは、膨大な量のフィルムを回した上で、

 撮影されたものに従って脚本を書き、編集していくものだ。

 当然、そこには制作者の主観は入れられるし、

 ほんのちょっとした編集で、意味合いは大きく変わる。

 そうしたことを踏まえた上で、自分なりの鑑賞眼をもって観ないといけない。

 だから、

 この作品は人道的な怒りをもった良心的な人達によって撮られたんだろうけど、

 そうであれば、なおさら、観客がぐうの音も出ないような数値が必要になる。

 そんなふうにおもってしまう僕は、

 ほんと、物事を斜めに見ちゃう性質なんだろか…。

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クロムウェル~英国王への挑戦~

2013年06月05日 20時28分46秒 | 洋画2003年

 ◇クロムウェル~英国王への挑戦~(2003年 イギリス、ドイツ 103分)

 原題 To Kill a King

 staff 監督/マイク・バーカー 脚本/ジェレミー・メイヒュー

     撮影/アイジル・ブリルド 美術/ソフィー・ベッカー

     衣装デザイン/ジョン・ブルームフィールド 音楽/リチャード・G・ミッチェル

 cast ティム・ロス ダグレイ・スコット オリヴィア・ウィリアムズ ルパート・エヴェレット

 

 ◇1649年3月19日、イングランド共和国樹立

 オリバー・クロムウェルといえば、

 清教徒革命の中心人物で、チャールズ1世を処刑した後に、

 イングランド共和国(コモンウェルス)をうちたて、

 やがて護国卿になって独裁政治をおこなったってことくらいしか知らなかった。

 だから、

 冒頭、どこかの城門に骸骨が吊るされてるんだけど、

 これがいったいどういう意味なのか、まるでわからなかった。

 でも、英国民はわかるんだよね。

 わかるっていうか、当然の知識として知ってるんだよね。

 この城門のあるのがウェストミンスター宮殿で、

 骸骨は墓場から掘り出されたクロムウェルで、

 さらにこの後、頭蓋骨は半世紀にわたって、

 ウェストミンスター・ホールの屋根の上に晒され続けたってことを。

 でも、世界史の知識の乏しいぼくには、まるでわからなかった。

 わかってようやく、こう納得した。

「ほほう、この映画は骸骨の回想だったのか~」

 ただ、おもってみれば、

 イギリスの長い歴史の中で、王が不在で、共和制が布かれたなんてのは、

 このイングランド共和国の時代しかないってことに気づかされる。

 いまさらなにをいってんだっていうくらい当たり前のことで、

 こんな話を歴史専門の学生や研究者とかが聞いたら、

 卒倒しそうになるほど無教養な話なんだろうけど、

 それくらい知識のないぼくでも、なんとか観られた。

 映画ってのは、なにも歴史を忠実に描く必要なんてさらさらなくて、

 その時代に死んじゃってる人間が出てたって、なんにもおかしくない。

 なぜって、

 映画は、監督の頭の中にある世界を映像にしただけなんだから。

 だから、ここでもクロムウェルの奥さんの父親が、

 ほんとうなら数年前に死んじゃってるはずなのに、堂々と生きてる。

 ま、そんなのは些細なことで、

 要は、

 クロムウェルとチャールズ1世の対立の構図と感情の交差がわかればいい。

 そのあたりは見事によくわかった。

 クロムウェルがある種の理想主義者であることもわかったし、

 なにより、冒頭から胸がときめくような映像だった。

 風にばたばたとはためく国旗のインサートで、いやほんと、鮮やかだった。

 こういう疾走感は、好いね。

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コールドマウンテン

2013年05月22日 18時59分47秒 | 洋画2003年

 ◎コールドマウンテン(2003年 アメリカ 155分)

 原題 Cold Mountain

 staff 原作/チャールズ・フレイジャー『コールドマウンテン』

     監督・脚本/アンソニー・ミンゲラ

     製作/シドニー・ポラック ウィリアム・ホーバーグ アルバート・バーガー ロン・ヤークサ

     撮影/ジョン・シール 美術/ダンテ・フェレッティ

     音楽/ガブリエル・ヤレド 衣装デザイン/アン・ロス

 cast ジュード・ロウ ニコール・キッドマン レニー・ゼルウィガー ナタリー・ポートマン

 

 ◎1864年7月30日、クレーターの戦い

 ぼろぼろに傷つきながらも故郷をめざしていくという話は、

 それがいつの時代のどんな人間を扱ったものでも、感動的だ。

 ましてや、故郷に許嫁がいて、

 それもたった一度だけ口づけを交わした彼女が待っててくれるとなったら、

 そりゃもう帰るしかないよね。

 で、この映画だ。

 南北戦争の中でも激戦地で知られる、バージニア州ピーターズバーグ。

 そこで起こったクレーターの戦いに参加したジュード・ロウが、

 故郷コールドマウンテンで待っているニコール・キッドマンのもとへ帰ろうとする。

 途中、ジュード・ロウは、ナタリー・ポートマンなどに出会い、そして別れるんだけど、

 それは、たった一度だけキスしたニコール・キッドマンが忘れられないからで、

 ニコール・キッドマンにしてもレニー・ゼルウィガーたちに励まされながら、

 ジュード・ロウに再会するまでは歯を食いしばって生きようとする。

 ただ、それだけの話だけど、どうやら実話らしい。

 ジュード・ロウが演じたのはW・P・インマンという青年で、

 実際に南北戦争中、アメリカ連合国軍の兵士で、2度脱走したんだと。

 で、この青年の兄弟の曾孫が、息子に話してきかせ、

 その息子がみずから筆をとって小説化したのが原作になったんだとか。

「へ~」

 てな話だ。

 映画の成立過程はさておき、ジョン・シールのカメラは見事だ。

 悲惨きわまりないはずのクレーターの戦いすら、流れるように美しい。

 戦いからしてそうなんだから、

 コールドマウンテンにいたる旅の風景や、故郷の自然が美しくないはずがない。

 くわえて、

 これでもかってくらい登場する豪華なキャストの演技と表情も見事に撮られてる。

 歴史を背景にした恋愛映画は、

 その筋立てが納得できるだけの映像がなくちゃ、やっぱり話になんないもんね。

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トスカーナの休日

2013年04月17日 19時42分59秒 | 洋画2003年

 ◇トスカーナの休日(2003年 アメリカ、イタリア 113分)

 原題 Under the Tuscan Sun

 staff 原作/フランシス・メイズ『イタリア・トスカーナの休日』 原案/オードリー・ウェルズ

     監督・脚本/オードリー・ウェルズ 製作/オードリー・ウェルズ トム・スターンバーグ

     撮影/ジェフリー・シンプソン 美術/スティーブン・マッケイブ 音楽/クリストフ・ベック

 cast ダイアン・レイン サンドラ・オー リンジー・ダンカン ラウル・ボヴァ マリオ・モニチェリ

 

 ◇花を捧げる老人が好い

 マリオ・モニチェリっていう映画監督なんだけど、これは話の要所に出てくるだけ。

 で、トスカーナ地方の町コルトーナでのおとなのおとぎ話。

 人って、恋愛や結婚にやぶれると、なんでか知らないけど旅に出ちゃいません?

 ていうか、そういう設定が多いかもしれないんだけど、

 古今東西、なんかそういう映画の多い気がする。

 そこで、この映画。

 作家にして評論家のダイアン・レインは、

 しこたま儲けたお金を、夫とその愛人と生まれてくる子供に譲り渡し、

 傷心のマンション暮らしをしていたところ、女友達から貰ったチケットで旅に出、

 売りに出ていた廃屋をひと目で気に入り、修復している内に、

 やっぱりアメリカから旅行に出てきた作家と恋に落ちて新たな生活を…、

 てな話なんだけど、まあ、ご都合主義かどうかは別にして、

 廃屋はダイアン・レインの見立てなんだよね。

 ぼろぼろになった築300年の洋館と、アラフィフの女、

 でも、磨けば、見違えるほど素敵になるんだから、

 人生、ため息ついてちゃダメなんだよって。

 そんなことわかってるし、トスカーナの綺麗なところで家がさっと買えて、

 しかも、近所の人達は言葉も通じるし、朗らかで好い人だし、

 なんていう設定だったら、ぼくだって旅に出ますがな。

 だけど、これは、廃墟の家の塀にいつも花を捧げる老人を観てもわかるように、

 おとなのおとぎ話なんだから、こまかいことを突っ込んだらいかんのです。

 ところで、

 この洋館は「ブラマソーレ・太陽に焦がれる者」っていう、

 いかにもイタリアらしい名前なんだけど、

 ここにかぎらず、

 廃墟と見まごうばかりの屋敷を改造するって、いいもんだよね。

 その屋敷が悲しく打ち沈んでいるのがわかるから、

 こんなにぼろぼろになるまで放っておくなんて、かわいそうじゃないかっておもうから、

 自分の暮らしを傾けても修復してやりたいっておもう。

 誰が喜んでくれるわけじゃない。

 自分が満足したいから修復する。

 道楽といわれればそれまでだけど、居ても立っても居られないから腰をあげる。

 現実から逃避していたダイアンは、屋敷と出会った瞬間、

 そういう気持ちになったんだろうね。

 でも、それで屋敷が蘇り、喜び、神様に通じて、新しい出会いがあったんだろうね。

 最後に、ちっとも出てくれなかった水道から水が流れ出すのは、

 ブラマソーレが喜んで、ダイアンにご褒美をくれたんだっておもいたいわ。

 あ、もちろん、屋敷がダイアンの見立てとするなら、

 ほとばしる水は、彼女の再生にほかならないよね。

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リクルート

2013年02月05日 20時23分55秒 | 洋画2003年

 ◎リクルート(2003年 アメリカ 115分)

 原題 The Recruit

 監督 ロジャー・ドナルドソン

 出演 アル・パチーノ、コリン・ファレル、ブリジット・モイナハン

 

 ◎人を欺くという事

 いつのまにか全員が二重スパイのように錯覚し始めるほど、つぎつぎに罠を仕掛けてくる筋立ては見事だ。

 ただ黒幕の存在があるとされた瞬間、ラストが見えてしまうのはハリウッドの欠点でもあるんだけど、アル・パチーノの演説と最後の「バイバイ」にいたるまでのスピード感は充分にある。

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マシニスト

2012年11月07日 12時17分51秒 | 洋画2003年

 ☆マシニスト(2003年 スペイン、アメリカ 102分)

 原題 The Machinist

 監督 ブラッド・アンダーソン

 出演 クリスチャン・ベイル、ジェニファー・ジェイソン・リー、アイタナ・サンチェス=ギヨン

 

 ☆自意識の幽体離脱

 それにしてもハリウッドという世界は、ときとして凄い役者を産み出す。

 クリスチャン・ベイルはこの睡眠障害者の役を演じるにあたり、毎日りんご一個とツナ缶一個だけで過ごして30キロ減量し、撮影が終わるや『バットマン・ビギンズ』のオーディションを受けるために32キロ太り、さらに『アメリカン・ハッスル』に出演するために激太りしたんだとか。すごいわ。ぼくにはできないわ。

 自己と他者の肯定の方法はさまざまあるけど、洋画はこの手の自分探しがよくあるね。ただ、お気に入りのウェイトレスの息子をひき逃げしてしまったという良心の呵責による余りのストレスと後悔と不安によって記憶が曖昧になるとき、つまり、罪の意識による自分が別人格として登場してきて自分を徹底的に追い込んでいくという自己否定の幻覚がいつから始まったのかが明確でないのと、警察の動きがほとんど見られないのが残念といえば残念ではあるものの、ものすごく必要かといえばそうでもないし、かえって視点が定まってていいともいえる。

 なんにしても、おもしろかったな~。

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ハウス・オブ・ザ・デッド

2010年02月21日 16時37分09秒 | 洋画2003年

 △ハウス・オブ・ザ・デッド(2003年 アメリカ、ドイツ、カナダ 90分)

 原題/House of the Dead

 監督/ウーヴェ・ボル 音楽/ラインハルト・ベッサー ピーター・リーズ

 出演/オナ・グローアー ソーニャ・サロマ エヌーカ・オークマ ジョナサン・チェリー

 

 △死の島

 ゲームの映画化だそうだけど、誰でも考えられる筋とかっていったらいけないだろうか?

 陳腐とくくっちゃったらかわいそうだし、お金もそれなりに懸ってるし、最初は悲鳴を上げて逃げ回っている内にゾンビをがんがん倒せる程経験値が上がってゆくお姉ちゃんとお兄ちゃんの美しい肢体を織り交ぜた成長譚と捉えて楽しむよりほかにないだろ。

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白いカラス

2010年01月22日 13時23分49秒 | 洋画2003年

 ◎白いカラス(2003年 アメリカ 106分)

 原題/The Human Stain

 監督/ロバート・ベントン 音楽/レイチェル・ポートマン

 出演/アンソニー・ホプキンス ニコール・キッドマン ジャシンダ・バレット

 

◎フィリップ・ロス『ヒューマン・ステイン』

 西暦1998年、アメリカ合衆国マサチューセッツ州。

 スプークなる隠語使用によって差別主義者とされる恐ろしさに加え、立身の為にアイデンティティを捨てる者と過去と夫の執拗な呪縛から逃れようとする煙草依存者の悲哀と辛酸が雪に閉ざされた景色の如く冷え冷えしみじみとしてる。

 それにしてもアンソニー・ホプキンスはうまいな。

「スプーク」

 といったときのアップは忘れがたい。

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キル・ビル Vol.1

2008年03月25日 17時13分17秒 | 洋画2003年

 ◇キル・ビル Vol.1(Kill Bill: Vol.1 2003年 アメリカ)

 原題/Kill Bill : Vol.1

 監督・脚本/クエンティン・タランティーノ 音楽/RZA ラーズ・ウルリッヒ

 出演/ユマ・サーマン ダリル・ハンナ 千葉真一 栗山千明 大葉健二 國村隼 風祭ゆき

 

 ◇挿入歌は『修羅の花』

 梶芽衣子の「やっちまいな!」という声が聞こえてきそうだ。

 ま、ともかく、無国籍な迫力は超一流だ。

 もちろん、作品中の日本は、タランティーノのオマージュに過ぎない。とはいえ、心象世界の中の日本として、十分に成立している。それと、冒頭のハードボイルドさは、尋常じゃないわ。さらにいえば、タランティーノの作品って、どうしてこんなに音楽がかっちょええんだろ?

 この作品も、例外じゃない。

 3日くらいは頭の中に響き続けるだろう。

 そういうこともおもうと、梶さん、出演するべきだったんじゃないかな~。

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トゥームレイダー2

2007年07月26日 16時28分04秒 | 洋画2003年

 ◇トゥームレイダー2(Lara Croft Tomb Raider: The Cradle of Life)

 

 イルミナティのつぎパンドラの匣で、つまりはムーの世界の少女活劇なんだけど、どうしてもハリウッドはセクシーさが際立つ。で、ダニエル・クレイグのつぎはジェラルド・バトラーになったわけね?っていう感想しかないのがつらいところだ。

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マトリックス リローデッド

2007年04月27日 01時04分50秒 | 洋画2003年

 ◇マトリックス リローデッド(2003年 アメリカ 138分)

 原題/The Matrix Reloaded

 監督・脚本・製作総指揮/ラリー・ウォシャウスキー アンディ・ウォシャウスキー

 音楽/ドン・デイヴィス

 出演/キアヌ・リーヴス ローレンス・フィッシュバーン キャリー=アン・モス

 

 ◇贅沢なつなぎ

 1作が成功して3部作を作ろうとすると、どうしても、2作目はつなぎになっちゃう。

 だけでなく、3作で完結させるための伏線やら、新世界観の構築やらで、どんどん難解になってくる。

 たいがい、3部作の中でいちばん難しいのが、2作目だ。それが裏目に出たんだろか、せっかく、モニカ・ベルッチを起用してるのに、ちょっと活かされてないのよ。

 でも、不満といえばそれくらいなもので、現実世界と仮想世界の設定をより進化発展させて、ようやく全体像が完成したっていう観は否めない。人工知能アーキテクト、プログラム・オラクル、地下世界ザイオン、ホバークラフトシップ・オシリス、漂流プログラム・エグザイル、反マトリックス勢力の心の支柱オラクルとセラフ、ロボット・センチネル…。

 もうありとあらゆるものが一気にぶちこまれて、観客はこうしたマトリックス世界を理解するだけで大変だったとおもうんだけど、現代の観客はすんなりと理解しちゃえるんだろうか?

 だとしたら、ぼくはもう年寄りだ。

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