◎特別な一日(1977年 イタリア、カナダ 110分)
原題 Una giornata particolare
監督 エットーレ・スコラ
◎1938年5月4日
いまさら内容をおさらいするまでもないくらいによく知られた映画で、これをそのままリメイクしたところでどうにもつまらないものしか撮ることができないのは自明でもある名作だ。かといってなにも触れずにおくのも仕方がないので、簡単になぞる。
ところで、ヒトラーとヒットラーという書き方なんだけど、ぼくの小さなときはヒットラーだった。それがいつのまにやらヒトラーと書かれるようになってきたけど、洋画を観てると誰もがヒットラーっていってるような気がするんだけど、どうなんだろう?
ま、それはともかく、ムッソリーニがドイツを訪問して、その返礼にとヒットラーがイタリアを訪問したのは1938年の5月3日のことだ。で、ふたりが肩をならべてパレードをおこなったのが翌日の5月4日。つまり、当時のイタリア人にとってその日はまさしく特別な一日だったわけだけれども、ここでいう特別な日は主役のふたりにとっても個人的な特別な日なんだよね。
マルチェロ・マストロヤンニはファシスト党への抵抗活動を続けているような素振りではあるんだけど、それよりも彼の場合、男色家であることが先決される。この日、かれは連行され、サルディーニア島へ島流しにされちゃう。つまりはローマで生活を送れる最後の日ってわけだ。ただ、男色家とはいえ両刀使いだからソフィア・ローレンともできる。
一方、ソフィア・ローレンはどうかというと、大家族の母という位置で、もう疲れ切ってて籠の鳥に逃げられたらそれを追いかけるくらいしかできない籠の鳥だ。だから、逃げた鳥は捕まえるものの、自分だってほんとは逃げ出したいとおもって悶々と暮らしてる。そこへちょうど籠の鳥の逃げた先にいたのがマルチェロ・マストロヤンニだったってわけだ。で、マルチェロ・マストロヤンニの悪態を借りれば、発情しちゃう。夫との交渉はなく、身体が夜泣きするような軟禁状態からたった一日だけ連れ出して自由な身にしてくれ、快楽を味わわせてくれるのがマルチェロ・マストロヤンニなんだよね。つまりはそのたった一日、家族がパレードに出ているときだけ、おもいもよらない男との逢瀬をした特別な一日ってことになる。
これはたしかに不倫ではあるんだけど、誰も彼女を責められないんだよな~。人間ってのはこういうものなんだって、エットーレ・スコラは淡々とした展開なんだけど、見事な映像で見せてくれる。たいした映画だとおもうわ。