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☆=☆☆☆☆☆
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◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

時の面影

2021年12月31日 22時04分06秒 | 洋画2021年

 ☆時の面影(The Dig)

 

 なぜか『無法松の一生』をおもいだしちゃったんだけど、それはきわめて個人的な感想だ。

 ただこの作品のおもしろさはアングロサクソンがイギリスに住んでいて船を埋葬の副葬品にするほどの文化を持っていたという世紀の大発見というものではなくて、それを発見したときの大英博物館という国家の権力のいやったらしさもさることながら、弁膜症をわずらった未亡人が子供の将来を託せるような発掘者を見つけてほのかなおもいを抱きながらもそれが成就することはなくても周りがそうした真実の恋を成就させてゆくっていう、古代の船の物語を未来の船の物語に仕立て上げてゆく上手さにあるんだよね。

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サラの鍵

2021年12月30日 23時44分24秒 | 洋画2010年

 ☆サラの鍵(2010年 フランス 111分)

 原題 Elle s'appelait Sarah

 英題 Sarah's Key

 監督 ジル・パケ=ブランネール

 出演 クリスティン・スコット・トーマス、ニエル・アレストリュプ、ミシェル・デュショソワ

 

 ☆ヴェルディブ事件

 1942年7月16日。

 パリのマレ地区サントンジュで生起したヴェルディブ事件は、当時のフランスにおけるナチスの行為においてはかならず語られるユダヤ人に対する迫害で、屋内競輪場を舞台にした過酷な行為といえるんだけど、現代のパリとはほんと無縁なんだろうね。まあ、ぼくがどうこういうこともないんだけど、パリの人々はこうした事件があったことを後の世にどんなふうに伝えていこうとしてるんだろう?

 それにしても、二重構造の脚本はぼくの好みなものだからついつ入れ込んで観ちゃったのかもしれないけど、10歳のサラを演じたメリュジーヌ・マヤンスが好かったわ。いや、ほんと、光ってたわ。

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ガール・オン・ザ・トレイン

2021年12月29日 22時10分08秒 | 洋画2016年

 ◇ガール・オン・ザ・トレイン

 

 出だしで、ちょっと戸惑った。これってもしかしたらおもしろくないんじゃないかと。

 ま、そんな不安は途中で解消されたような気がしたんだけど、脚本が最後になってつまずいた。

 犯人の正体がわかってくるのがちょっと早いんだよね。

 まあ、エミリー・ブラントがいやまあこれでもかってくらい好演してて、アルコール依存症になっててそのせいで殺人を犯してしまったかもしれないっていう、もはやぼろぼろになった不安におののきはじめるあたりはけっこう気が入ってきたんだけど「あれれ、彼女の記憶が無くなってるときに暴力沙汰におよんでるって証言してるのってひとりしかいないじゃん」っておもったとき、謎が解けちゃう。

 レベッカ・ファーガソンとヘイリー・ベネッが絡んでるところで、謎が入り組んでる感じもしたけど「うん?ちょっと待って」って整理しはじめて、エミリー・ブランドが子供を産めないアル中女で元の妻、レベッカ・ファーガソンがエミリーの夫と浮気をして離婚に追い込んで子供を産んだ今の妻で、ヘイリー・ベネットがその二軒となりの子供の生まれない家のちょっと淫乱性の若妻で17歳のときに子供を産んだものの風呂で溺れさせちゃって亡くしてしまっていう過去を持ちながらもレベッカの赤ん坊の子守をしつつもしかしたらレベッカの夫と浮気をしているかもしれないっていう構造が見えてくると、結局のところ『悪魔の手毬唄』の恩田みたいなもんじゃないのかっておもっちゃう。

 こうなると、もうなにもかも見えてきちゃうんだよね。

 まあ、どうしようもない女好きのせいで、人生を翻弄されてしまう女たちの物語と捉えればいいんだけどね。たしかに、向こう三軒両隣のものすごく狭い世界の話で、せっかくエミリー・ブラントの世話をしているローラ・プレポンや、理解のありそうな女刑事のアリソン・ジャネイとかを配置してるんならもうすこし彼女たちを絡ませる脚本作りをすればよかったのにな~とはおもうよ。

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蜘蛛の巣を払う女

2021年12月28日 01時05分26秒 | 洋画2018年

 ◇蜘蛛の巣を払う女

 

 あまりにも普通の冒険アクションだった。主役が天才女性ハッカーのリスベット・サランデルっていうだけの話で、狂言回しだったはずの雑誌ミレニアムの編集者ミカエル・ブルムクヴィストは完全な脇に回されてるし、これまでの設定を踏襲しているだけって感じなんだよね。まあ、実は双子の妹がいて、とんでもないことに父親に16年間も近親相姦を強要されたことで逃げおおせた姉への憎悪が高まってるっていう設定にはなってるものの、なんだかなあ。

 画づくりは大したもので、ITを利用した車の遠隔操作やら監視カメラやら体温センサーやらまあありとあらゆるものがめまぐるしく登場してはくるんだけど、スピード感を増しているくらいの効果しかないように感じられちゃう。つらいな。

 リスベットを演じたクレア・エリザベス・フォイが上品すぎるってのもあるんだろうけど、もっと冷徹をとおりこした不感症気味ながらも熱血な感じが欲しかった気がしないでもない。彼女がそういう印象だからか、全体的におとなしい仕上がりで、もっと性的な異常さがあった方が『ミレニアム』のシリーズっぽいっておもうんだけどな。

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わが谷は緑なりき

2021年12月27日 23時47分13秒 | 洋画1941~1950年

 ◇わが谷は緑なりき

 

 美術が凄い。これだけのオープンは作れないよ。撮影もたいしたもんだし。

 リアリティってやつは、こういう画作りをいうんだろう。炭鉱の坑道も、昇降機の上がり下がりする縦穴も、もくもくと白煙を吐いていく煙突も、どれもみんな、現実味にあふれてる。当時のウェールズの炭鉱町ってこんな感じだったんだろうなあって気になってくる。もちろんセットはひと目でわかるんだけど、そういうことをいってるんじゃないんだよね。

 1941年の作品ってことに、なにより驚く。

 さすが、ジョン・フォードってことになるんだろうなあ。

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僕はイエス様が嫌い

2021年12月26日 00時50分09秒 | 邦画2019年

 △僕はイエス様が嫌い

 

 映画には映画祭向きのものと、儲けに徹しようとするもののふたつある。 これは前者かな。

 キリスト教の学校に転校してきた子供の前に現れた庶民的なちっこいキリストが、すべてに絶望した救いのなさそうな子に潰されるまで、そこにいたることを淡々すぎるほど淡白に撮ってる。 昔ながらの自主製作映画のひとつかなって気がした。

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エジソンズ・ゲーム

2021年12月25日 00時33分14秒 | 洋画2017年

 ◇エジソンズ・ゲーム

 

 なんだか期待してたものとはまるで違った。

 トーマス・エジソンとジョージ・ウェスティングハウスの繰り広げた直流と交流の電流戦争の物語で、ぼくは白熱電球や映画フィルムやらまあそのほかのものを扱ってるっておもってたんだけど、そうか、敵役が出てこない物語は話にならないもんね。電流戦争が主題になるのはわからないでもない。でも、ちょっとなあ。

 しかし、エジソンってもっと嫌な奴かとおもってたんだけど、こだわりがあってひとりよがりな陰謀好きっていう性格は残しつつもなんとなく好人物に見えちゃったり上品に見えちゃったりするのは、やっぱり、ベネディクト・カンバーバッチの起用によるんだろうなあ。ウェスティングハウス役のマイケル・シャノンはちょっとごつい観はあるけど、ま、いいか。

 ニコラス・ホルト演じるニコラ・テスラが、佳境、ナイアガラの巨大なホリゾントを背にして語るのはよかった。ただ、全体的に詰めすぎな感じがして、もうすこし分かりやすく編集できなかったんだろうかっていう不満は残るな。台詞もかなりの部分がひとりよがりな印象で意味しているところがわかりにくいしね。監督のアルフォンソ・ゴメス=レホンがまだ独立して三本目ってこともあるんだろうか。なんだかぎゅうぎゅうな印象だったな。

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ミッドサマー

2021年12月24日 00時57分16秒 | 洋画2019年

 ◇ミッドサマー

 

 171分のディレクターズカット版を観てしまったことにめちゃくちゃ後悔したわ。アリ・アスターのデビュー作を観てないからなんともいえないけど、才能あるんか?っていいたくなるくらい辛かったぞ。

 まあ、シンメトリックな構図がキューブリックを思い出させるし、ただならぬ雰囲気は『シャイニング』を思い出させる。けど、窓の外の雪の中に浮かぶ最初のメインタイトルは、字が小さすぎて読めない。フローレンス・ピューの実家の家族が双極性障害で無理心中したことでその心的障害を抱えたまま、ジャック・レイナーやウィル・ポールターたち大学仲間の下宿に行きスウェーデンに誘われるんだけど、この出だしまで長い。

 ただ、大学の仲間の下宿で家族を亡くした話をされ、変にきれいなトイレに入って泣き出したなとおもったらスウェーデンに向かう機内のトイレだったとかなんてのは、まあまあすてきな繋ぎだった。それと、ピューたち5人の乗り込んだ車が途中でドローン撮影で天地が逆転して、ヘルシングビレッジに入ったところで天地が元に戻るってのもよかった。なるほどここが世界の分かれ目なのねって感じの展開はちょっぴり才能を感じさせた。

 薬とマッシュルーム茶でトリップしたときの風景が加齢黄斑変性のとさほど変わらないのは愛嬌だけどね。

 あ、ちょっとハイキー気味に撮られた画は北欧の夏っぽく、なんとなく『ビレッジ』を思い出させるな。

 けど、物語全体は異様な退屈さなんだけど、妙な緊張感が続いてて異世界を見学してるみたいな気分にもなる。だるまさんが転んだ的な女王選びのゲームのさまを見てるうちに藤子・F・不二雄の短編も思い出したけどね。

 わからないのは、おそらくこの夏至の村は自給自足で、外から血を得て近親相姦を無くしてきたんだろうけど、文化がまるで入ってこないわけでもないのになんで中世的な暮らしをしてるのかってことだ。アーミッシュの村のような現実味もなくて、なんか生殖ばかりが前面に出てくる。

 異常な処女の貫通式もそうで、それを見守りながら歌をうたっている女たちが、自分の乳房を揉みしだきながら声をあげてゆくのは伝統的変態儀式といっていいんだろうけどね。

 ま、期待したほどの出来映えじゃなかったな。雰囲気だけ伝わってきた分、残念だわ。

 
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エクス・マキナ

2021年12月23日 01時09分15秒 | 洋画2015年

 ☆エクス・マキナ

 

 どきどきするわ~。

 退屈さはまるでなく、緊張感が継続してる。

 アリシア・ヴィキャンデル演じる機械仕掛けのエヴァの色気は凄いな。チューリング・テストのとき、停電中だけ真実のやりとりが為されるってのが味噌だけど、監視カメラが回ってるときに口をすべらせないか心配になる。してやられたとおもったら、透けて見えてた機械が服とカツラで隠されたとき、これはもはや人間以外のなにものでもない存在になってるっていう展開はすごい。しかしなるほど、AIが意志を持ってしまえば『愛しているフリ』をして純情男なんざ利用したら置いてきぼりにすればいいっていう無関心さこそが、テストが成功したってことなんだよね。

 台詞はいっさいなかったけど、存在感がたっぷりあったのはソノヤ・ミズノで、スタイルもいいし、エキゾチックだし、いやまじ、ええ感じに控え目な演技だった。

 いずれにせよ、スウェーデンのロケセットになってるホテルも現実感のない舞台設定にはちょうどよく、まったくあつらえたような作りだったし、たしかにロボットが意思をもって生みの親に叛乱するってのは使い古された内容なんだけど、おもしろかったわ~。

 アレックス・ガーランド、なかなかの演出じゃん。

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アイリッシュマン

2021年12月21日 00時36分34秒 | 洋画2019年

 ◇アイリッシュマン

 

 いくらなんでも210分は長すぎる。ジミー・ホッファを暗殺したと告白するフランク・シーランの回想記なんだけど、たしかに理詰めで丁寧に撮っていけばこれだけの長さになるのはわからないでもない。でも、やっぱり長い。脚本で調整するしか方法はないんだろうなあ、これは。

 いや、そりゃ、たしかにラストの60分ちかく、つまり、ロバート・デ・ニーロがジョー・ペシに因果を含められてアル・パチーノを殺しに行くところで、もともとその瞬間のために、デ・ニーロ夫妻がペシ夫妻を連れて旅行に出ているところで回想が展開し、それでアリバイを作るようにして飛行機で単身デトロイトに飛んだデ・ニーロが、山荘に待っているアル・パチーノを撃ち殺すっていう段どりなんだけど、それはわかっているのにどうしようもない緊張感が60分つづく。このあたりの演出は、さすが、マーチン・スコセッシだ。

 でもなあ、なんかだれるんだよね。要素が多すぎるのかもしれないけど、ひとつひとつのエピソードはどれも要るようにおもえちゃうしなあ。

 それにしても、アメリカのトラックの組合ってのは、こんなにマフィアと連動してたんだろうか?だとしたら、いやまじ、アメリカってところは政治と経済は切り離せないんだね。ただ、なんていうか、フランク・シーランの回想ってのが印象の薄くなっちゃう要因のひとつなのかもしれないね。

 なんにしても、長すぎたわ。

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ゴッホ 真実の手紙

2021年12月20日 00時23分52秒 | 洋画2010年

 ◇ゴッホ 真実の手紙

 

 生真面目ながらも偏執狂的な演技をさせれば天下一品のベネディクト・カンバーバッチならでは朗読劇だった。ただ、それ以上でもそれ以下でもないってところがなんだかね。アンドリュー・ハットンがどんな人かは知らないけど、可もなく不可もなしの手堅い演出だった。つまり、すべてが手堅く仕上がってた。

 ちょっとどうもなあっておもえたのは、出演者たちが画面を通して視聴者に語りかけているところで、演出のひとつとしてはいいんだけれど、それが続いている一方で、登場人物たちがいっさい向き合わない。つまり台詞のやりとりがないわけで、なるほど、朗読劇に徹してるのねとはおもうだけど、なんともいえない物足りなさはそのあたりから醸し出されてるのかもしれないね。

 ただまあ、カンバーバッチ、ゴッホによく似せてるわ。

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半世界

2021年12月19日 13時14分29秒 | 邦画2019年

 ◇半世界

 

 たらたらとあんまりもりあがることもなくおもしろくもないなあとおもいながらなんとなく目がそらせず見てしまった。

 同級生が飲みに行って海に行ったりするとなんか『駅』をおもいだすわ。

 部下を入水に追い込んでしまったとおもいこんで苦しむ長谷川博己が、稲垣吾郎の炭焼きを手伝うとき、おれもっとがんばるからというんだが、結局それは逃げでしかないと。稲垣吾郎が心筋梗塞で死んだときもおれが手伝いをやめなければと後悔するがそれもまた思い込みに過ぎない。

  稲垣吾郎のいじめられてた息子がボクサーになる希望するもって亡父の後を継ごうとするのはいいとして、長谷川博己は自衛隊に戻るしかないんだけど、どうするかね。タイムカプセルは取って付けたようで稲垣吾郎にいたっては話題にすらしてないし要るのかな?とも。

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アバウト・ア・ボーイ

2021年12月18日 12時39分52秒 | 洋画2002年

 ◇アバウト・ア・ボーイ

 

 途中まで、もう見たくないってほどつまらなかった。

 38歳で独身のヒュー・グラントの、母子家庭の母親をひっかけようという設定がなんともいやらしくて嫌だったし、虐められてる子供ニコラス・ホルトがいかにも変な感じだったからで、でも、その情緒不安定の母親の子と奇妙な友情で繋がってくあたりからなんとか観られるようになったかな。

 けど、やっぱり片親だっていう嘘はまたついてしまうわけで、まあその相手がレイチェル・ワイズだったから最後まで観る気にはなったけど。

 なんとなくおもったのは、このポール&クリス・ワイツ兄弟の監督した作品は、どれをとってもホンワカした青春物をひきずってる感じがするんだけど、そうしたものの延長って考えれば、ちょっと年を食ってきたのかしらって気にもなるかな。

 しかし、ほんと、ヒュー・グラントは情けない色男をやらせたら天下一品だな。

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レプリカズ

2021年12月17日 13時15分51秒 | 洋画2019年

 ◇レプリカズ

 

 批評家の評価は低いけど、それなりにおもしろかったとおもうんだけどな。

 まあ、結果的には、自分の脳の記憶をレプリカ・ロボットに転写することで、自分とロボットと意識が併存することになり、敵というか国家の手先に妥協する道を選んじゃうわけで、それがけっこう中途半端な結末におもえたりもする。いろいろと考えたあげく、その結末を選ぶしかなかったんだよっていう弁解が聴こえてきそうな気にはなったけどね。

 でも、途中でハラハラさせるためか、ご都合主義っていうか、レプリカがひとつ足りないからって娘のひとりを犠牲にしなくちゃならないっていう決断はありかっておもうし、そもそも、家族の記憶から娘をひとり失わせるってのは不可能だし、たとえそれができたにせよ、もうすこし愛憎の絡み合いに持っていく発想はなかったんだろうか。

 それと、証人保護プログラムの結末みたいに、南国の白浜がラストってのはなんともありがちな絵だったかな。

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ワンダーウーマン 1984

2021年12月16日 23時59分29秒 | 洋画2020年

 ◇ワンダーウーマン 1984

 

 なるほど、こういう特撮活劇の演出を女性がするのは珍しいのかあ。でも、パティ・ジェンキンスが監督で好かったんじゃないかな。なんとなくロマンチックだし、恋愛が主軸になってる特撮物もあんまりないかもしれないしね。でも、ガル・ガドットの睨みつけるところはちょっと怖い。

 ま、なんでもひとつだけ願いを叶えてくれるっていう「猿の手」をモチーフにした古代からの石の物語で、ガル・ガドットだけが、前作の『ワンダーウーマン』で恋をしたクリス・パインにもう一度逢いたいっていうやけに純情可憐な望みになって、ほかの連中はもう剥き出しの欲望ってのが、主人公だけに光をあてるっていう実にわかりやすいハリウッド映画になってるんだよなあ。

 最後の最後、リンダ・カーターが出てきたときは、いやほんと、なんだか嬉しかったけどね。

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