◎コリーニ事件(Der Fall Collini)
事件を担当した几帳面な新米弁護士エリヤス・エンバレクがむかし世話になった老人マンフレート・ツァパトカが、ワルサーで後頭部を射たれた被害者だったというのが味噌だね。
殺される理由がなく、殺したコリーニことフランコ・ネロも黙秘、しかも残された巨大企業の跡継ぎつまりマンフレートの孫が昔の親友で、その妻アレクサンドラ・マリア・ララとなにやら因縁ありげってのも、出だしとしては申し分ない。まあ、因縁ありげっていうより、抜き差しならない仲なんだけどね。
それはともかく、フリジェシュ・シャーンドル指揮の requiem in d minor, k. 626: iii. sequentia - f. lacrimosaとスロヴァキアの室内管弦楽団カペラ・イストロポリターナの Suite No. 3 in D major, BWV 1068 が効果的だね。
けど、ワルサーP38の登場が遅すぎるだろ。これが出てこないと過去に遡れないじゃないか。後半が始まるのと同時じゃちょっとなあ。イタリア語のできるピザ屋のアルバイトのおね~ちゃんピア・シュトゥッツェンシュタインをつれてトスカーナまで行くんだけど、通訳に連れてくんなら自分はまったく話せないって設定で、訪ねた先の老人もドイツ語が話せないって設定にした方が彼女の存在感が増すっておもうんだけどな。
いずれにしても、フランコ・ネロの幼い頃の家族を虐殺されたナチスへの憎悪が根底にあるのは徐々にわかってくるっていうか想像されていくわけで、それを認めてくれる筋をひたすら追いかけていくと、後頭部を射ち貫くところがなんとも理解して観終えることができるっていう構成は満足がいく。