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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

コリーニ事件

2022年06月30日 21時10分47秒 | 洋画2019年

 ◎コリーニ事件(Der Fall Collini)

 

 事件を担当した几帳面な新米弁護士エリヤス・エンバレクがむかし世話になった老人マンフレート・ツァパトカが、ワルサーで後頭部を射たれた被害者だったというのが味噌だね。

 殺される理由がなく、殺したコリーニことフランコ・ネロも黙秘、しかも残された巨大企業の跡継ぎつまりマンフレートの孫が昔の親友で、その妻アレクサンドラ・マリア・ララとなにやら因縁ありげってのも、出だしとしては申し分ない。まあ、因縁ありげっていうより、抜き差しならない仲なんだけどね。

 それはともかく、フリジェシュ・シャーンドル指揮の requiem in d minor, k. 626: iii. sequentia - f. lacrimosaとスロヴァキアの室内管弦楽団カペラ・イストロポリターナの Suite No. 3 in D major, BWV 1068 が効果的だね。

 けど、ワルサーP38の登場が遅すぎるだろ。これが出てこないと過去に遡れないじゃないか。後半が始まるのと同時じゃちょっとなあ。イタリア語のできるピザ屋のアルバイトのおね~ちゃんピア・シュトゥッツェンシュタインをつれてトスカーナまで行くんだけど、通訳に連れてくんなら自分はまったく話せないって設定で、訪ねた先の老人もドイツ語が話せないって設定にした方が彼女の存在感が増すっておもうんだけどな。

 いずれにしても、フランコ・ネロの幼い頃の家族を虐殺されたナチスへの憎悪が根底にあるのは徐々にわかってくるっていうか想像されていくわけで、それを認めてくれる筋をひたすら追いかけていくと、後頭部を射ち貫くところがなんとも理解して観終えることができるっていう構成は満足がいく。

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ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

2022年06月29日 21時27分15秒 | 洋画2019年

 ◇ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(Godzilla : King of the Monsters)

 

 フォーチュンクッキーじゃなくて、おみくじっていってくれよ、ケン・ワタナベ。

 というより、ヴェラ・ファーミガ、綺麗なのになんかキワモノ女優みたいになってて、カイル・チャンドラーも高島忠夫みたいになってきてて、なんかね。

 つか、そんなことより、中身だ。おいおい、勝手なおもいこみかもしれないけど、おもわず『三大怪獣 地球最大の決戦』が浮かんできちゃったぞ。

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定められし運命

2022年06月28日 22時18分29秒 | 洋画2012年

 ◇定められし運命(Malgré-elles)

 

 レーベンスボルン(生命の泉 )をあつかうのはかなり珍しく、これはこれなりに興味深い。

 モロッコ人のマーシャ・メリルがアルザス人っていうのはちょっと無理があるような気がしないではないけど、まあ、ルイーズ・エレーロはまあなんとなくLebensbornに送られてアーリア人の子孫を産めって強要されそうな感じではあるかな。

 それはともかく、ナチスを悪者にしてしまえば物語もなんなく進行していくんだけど、でもどうなんだろうね、アルザスっていうドイツとフランスの国境紛争の地だからこそ、フランスがこういう映画をつくり、ただ、ドイツにも配慮するために爆弾製造工場の責任者として召集されたっていう設定の独法学者を登場させて、その妹の修道院に避難させるっていう苦肉の策に出るしかなかってっていうのはよくわかる。

 ただ、アーリア系の赤ん坊を産んじゃうルイーズ・エレーロがせっかく出産したのに自殺する理由がいまひとつ納得できないのと「黒い方は始末しろ」と命じられたのにマーシャ・メリルが掃除婦として雇われ続けるっていうのも、なんだか都合上のことにおもえて納得しづらいんだけど。

 それと、ちょっと予算が少なすぎるんじゃないかな。あまりにも現場と構図がおんなじで、単調すぎるかなあ。けど、たとえ嬰児のおしゃぶりのためとはいえヒロインの乳房をもろだしにするんだから、劇場公開された映画なのかなあ。

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Mr.ノーバディ

2022年06月27日 22時55分38秒 | 洋画2021年

 ◇Mr.ノーバディ(Nobody)

 

 いるかいないかわからないやつ、つまり、ノーバディっていう主人公の映画なら、たいがい、もともと銃撃戦に卓越した凄腕の調査官かスパイしかないわけで、そうなれば当然、あるささいなことがきっかけで、数十年間もつまらない男でいた日常をかなぐりすてて家族か正義か町か女かそれともおのれの名誉なのかわからないけどともかく破裂して戦っちゃうっていう筋立てになるのはわかりきってるんだけど、まあ、それなりに見せてくれた。

 ボブ・オデンカークはアメリカでは知られた芸人かもしれないんだけど、ぼくはまるで知らなくて、結局、映画を観終わってすぐに顔を忘れた。ところが、クリストファー・ロイドはそうじゃなかった。老人ホームで暮らす父親役を演じるとはおもわなかったけど、そうか、そういう歳なんだな~っておもったら、なんか人生の長さを感じてしまったぞ。でも、銃撃戦に堪えられるんだから、この父親もかつてはそれなりの「やつ」だったってことになるんだよね。

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ジャズ大名

2022年06月26日 22時41分50秒 | 邦画1981~1990年

 ◇ジャズ大名

 

 ま、これはどうしたところで大映の作品よね。この1986年当時、映画界はまだまだどん底にあって、まあちょっとだけ上向いたとはいえ、なにを作っていいのやら、混迷の極みみたいなところがあった。ことにこの作品の実際の制作にあたってた大映映像はフジテレビの3時間ドラマ『不帰水道』のあと『未完の大局』から『敦煌』と続いて、必死になってるあたりだった。でまあ、岡本喜八はどういうわけか大映とつかずはなれずで『ダイナマイトどんどん』以来の大映作品になった。

 加藤雄大さんとは連続した仕事だったみたいで、まあ、大映側の考えてることはわからないでもなくて、日本やらアメリカやら外交交渉をしている連中なんかすっとばして庶民の交流は音楽さえあれば始まるんだっていう、なんともひらきなおった作品だったんだけど、でもなあ、役者たちがちからをいれすぎで、喜八さんもやりたいことはわかるんだけどもうすこしわざとらしさをおさえられなかったんだろうかっていう気がするかなあ。

 やりたいことはとてもよくわかるんだけど、1986年の制作でしょ?20年遅かったんじゃないかなあ。せめて1970年代に撮ってれば面白かったかもしれないね。そしたらキャストも全員ちがってただろうし、ま、仕方ないか。

 ただ、タモリがセッションの部分でちょっとだけ出てたんだね、へ~。

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ガザの美容室

2022年06月25日 23時05分37秒 | 洋画2018年

 ◇ガザの美容室(Dégradé)

 

 退屈だな。

 離婚するために相談してる弁護士が独身でセクシーなもんだから還暦のお母さんヒアム・アッバスは美容室にいってガムテープで脹ら脛やら腋の下やらの脱毛に余念がない。ほかの客も似たようなもんなんだけど店主ヴィクトリア・バリツカと弟子マイサ・アブドゥ・エルハディがひとりしかいない美容室で待っている客が7人いて、客に混じって店主が宿題をするっていう密集度の中、戦争がおっぱじまるっていうのはいいんだけど、ここまでが長い。

 長すぎる。

 退屈すぎる。

 30分も掛かってる。

 しかもひとりの客も髪が仕上がらない。ありえない美容室だし、客同士マナル・アワド、ミルナ・サカラ、ダイナ・シバー、レーム・タルハミ、サミラ・アル・アシーラの話もとりとめがない。まあしかし仕事をしない弟子が別れ話の電話をしつづけるヒゲ野郎がライオンをつれて店の前に陣取ったり、弁護士に夢中になった客ヒアム・アッバスはもはや離婚の相談よりも情欲が勝ってきたりと、ちょっと面白くなる要素はあるのにこれだけつまらないっていうのはどういうわけだろう。

 こんな美容室はありえないぞ。

 ようやく客の妊婦サミラ・アル・アシーラが陣痛になって介抱しかけたとき銃声が起き、戦争が始まるんだけど、ここまでで50分。

 耐えられん退屈さだぞ、双子の監督タルザン&アラブ・ナサールよ。

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顔のないヒトラーたち

2022年06月24日 23時15分06秒 | 洋画2014年

 ☆顔のないヒトラーたち(Im Labyrinth des Schweigens)

 

 ちょっと驚きだ。半熟卵は頭をかるく叩き割ってスプーンでほじくりだすけど、かなり熱のとおったゆで卵も頭の方をスプーンの側面で叩き切り、まず切り取った上部の白身に塩をかけてほじって食べて、それから本体に挑む。これが1958年のフランクフルト・アム・マインの朝の風景だったんだろうか?

 それはさておきこの1950年代の末という時期、西ドイツの市民はほとんどアウシュヴィッツを知らず、名称を知っていても普通の保護収容所だと信じて疑わず、武装親衛隊員の生き残りはあらかた職を得、中には禁止されているはずの教職にまでついていたってのは、いやいやいやまじにかなり驚きだ。

 しかしこれは、検事総長フリッツ・バウアーと検事ヨハン・ラドマンによる1963年のフランクフルト・アウシュビッツ裁判をぼくたちがいかに知らずにきたかってことだよね。

 それだけでも、このジュリオ・リッチャレッリ作品は価値があるな。

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スペシャルズ! 〜政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話〜

2022年06月23日 23時23分32秒 | 洋画2019年

 ☆スペシャルズ! 〜政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話〜(Hors normes)

 

 ケア施設スタッフのひとりは特捜部Qの相棒ファレス・ファレスのカメオ出演かとおもうんだけど違うのかな?

 ヴァンサン・カッセルの『正義の声』ともうひとつのレダ・カテブの『寄港』に理解のある女医カトリーヌ・ムシェも聴覚障害の介護士リナ・クードリはどちらも美形すぎていかにも作り物めいて見えちゃうんだけど、それをおけばかなり現実味が感じられる。

 自閉症の若者たちを預かるのはどれだけ忍耐強さが要るものかってことをあらためて考えさせれるね。

 ヘッドギアをつけてないとヘッドバンキングで自分を傷つけてしまう自閉症の少年の面倒を看たのは団地で除け者にされて行き場を失っていた黒人なんだけど、彼の成長譚でもあるということは、つまり自閉症の若者に救われ、忍耐力を養われ、成長することができたという裏返しにもなってる。

 上手な映画だな。

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ちょっと今から仕事やめてくる

2022年06月22日 23時34分07秒 | 邦画2017年

 △ちょっと今から仕事やめてくる

 

 調布銀座がロケ地ってことはわかった。

 ていうよりもはやこの最初の現場で早くも福士蒼汰の正体が神仏か幽霊あたりだってことを匂わせようとするんだけどそれからあとが長いんだ。喜劇なのか感動させようってしてるのかわからない不安定な話はいいとして、どうにものろい。演技も編集ものろい。鈍すぎる。このテンポはきついぞ、成島出監督。

 ブログを見つけて、幽霊かもとおもって、対面して幽霊だよといわれ、自殺しかけたのを助けてくれたお礼をいってようやく会社を辞めて、blogのあるじにメールをいれるんだけど、話はここでようやく展開する。遅すぎるなあ。ここまでで1時間半。

 双子ってのはバスに乗ってるのを目撃したときなんとなく想像されるんだけどね。小池栄子だけが妙に上手に見える。これは演技力が足りんのか演出の狙いなのかよくわからん。バヌアツに行くことが人生の幸福につながるかどうかはわかんないけど、これって『天国にいちばん近い島』とどう違うんだ?

 そもそもバヌアツにさっさかさ~っていけるくらいブラック企業が給料くれてたんか?ふしぎだ。

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奥さまは魔女

2022年06月21日 23時55分18秒 | 洋画2005年

 △奥さまは魔女(Bewitched)

 

 これはあかん。つまらん。

 むかしなつかしテレビの『奥さまは魔女』に囚われてるのは仕方ないけど、その場しのぎの軽いおとぼけでお茶を濁す感じで観ていてつらくなってくる。ニコール・キッドマンだけが売りの映画でしかないな。ノーラ・エフロンもこの演出を任されたのはかなり辛かったろうなあ。

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シャトーブリアンからの手紙

2022年06月20日 00時00分39秒 | 洋画2011年

 ◇シャトーブリアンからの手紙(La mer a l'aube)

 

 意外性がないのはきつい。フランスに進駐していたドイツ軍のナント地区司令官が暗殺された報復にシャトーブリアン収容所の政治犯らが日に50人ずつ3日間で処刑されるのをさまざまな視点から淡々と点描するというのはいいんだけど、どうもね。男女が分けられてて、レオ=ポール・サルマンがその収容されてる女性ヴィクトアール・デュポアに恋心を抱くのはわかるとしても、だからどうなんだ、手紙を渡すだけかって。

 ドイツ軍に作家マルク・バルベが従軍してて傍観者にはなってるんだけどそれだけなんだよな~。

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007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

2022年06月19日 00時23分09秒 | 洋画2021年

 ◎007 ノー・タイム・トゥ・ダイ(No Time to Die)

 

 キャリー・ジョージ・フクナガ、演出力あるなあ。ただ、どうなんだろ。日本人の血を引いていることにかなり拘っているのかそれを自身を特徴づけるものとしているのかはよくわからないんだけど、能面はわかりやすいが箸拳を硬貨でやるとはおもわなんだ。石庭、畳、紬、そして北方領土。まあ彼なりの監督の日本贔屓の成せるものなんだろうけどね。

 それはそれとして、いや、ボンドの残ってる島にミサイルぶちこんでええんか?

 つか、最後の最後にボンドは帰ってくるとか字幕でいわれてもなあ。体内に生物化学兵器は組み込まれたままなわけで、これは生きているかぎり残留するっていうとんでもない代物で、いやとんだ十字架を背負わされたものだ。さらにいうと、青い目の娘は出てくるし、なんていうかもはや大河ドラマみたになっちゃった気もするよね。でももう続編はないわけで、これは次のボンドのシリーズが作りにくいだろうなあ。

 さて、ボンドの設定なんだけど、娘が出てくる手前もあって、レア・セドゥがヒロインとしての位置づけになるのは仕方のないこととして、やっぱりダニエル・クレイグとしてはエヴァ・グリーンがほんとに好きなわけね。わかるわ~。ただ、群を抜いて魅力的だったのは、なんといっても、アナ・デ・アルマスだ。もうずいぶん前に『カリブの白い薔薇』で初めて彼女を観たときから綺麗な子だな~とはおもっていたものの、うん、まちがいなかったな。ただ、彼女との濃厚な場面は作られなかったのね、まあかなり真剣な恋愛物になってるし、女たらしな面は無しになってる分、アナの魅力をそのまま衣裳に凝縮したような感じはあるな。それにしても、ダニエル・ボンドの濡れ場はどうしてこうも毎回、暴力的な焦りまくった感じで始まるんだろうね?

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雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

2022年06月18日 00時49分18秒 | 洋画2015年

 ◇雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(Demolition)

 

 アメリカの郵便事情は知らないし地区によって違うかもしれないが、ジェイク・ギレンホールはチャンピオン社に出す苦情の手紙を郵便受けに入れて付属してる赤い標示版を上げた。なるほど、これで郵便配達が来た時には持っていってくれるのか。配達が来ないとずっと郵送されずにいるんかな?

 しかし急ぎの手紙じゃなければ、これはこれで便利だ。

 けど、ふしぎな映画だな。ものごとに無関心で妻が目の前で事故死しても心を動かすこともなかった男がチョコレートの出てこない自販機の顧客係ナオミ・ワッツの常軌を逸したような接近の仕方に引っ掛けられるっていう、まるで現実感のない筋立てだわね。

 ジャン=マルク・ヴァレの演出上の狙いかどうかはわからないけど。

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ザ・ヘラクレス

2022年06月17日 00時56分58秒 | 洋画2014年

 ◇ザ・ヘラクレス(The Legend of Hercules)

 

 びっくりするほど『グラディエーター』で、レニー・ハーリンはこの映画をどんな気持ちで撮ったんだろう?

 そもそもケラン・ラッツじゃラッセル・クロウの対抗馬たりえないぞ。ぎりぎりなんとかギリシャ神話をもたせてるのはリアム・マッキンタイアで、もともとテレビの『スパルタカスⅡ』で評判を得たみたいだね。かれがいなかったら、もはや、作る意味のない映画だったかもしれないわ。

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リベンジ・マッチ

2022年06月16日 00時06分30秒 | 洋画2013年

 ◇リベンジ・マッチ(Grudge Match)

 

 評判は悪いが、それなりに楽しめた。

 まあこれはこれでハリウッドに貢献したボクサー俳優ロバート・デ・ニーロとシルベスター・スタローンのお疲れ様作品とおもって同窓会に出てる気分で観ればいいんじゃないかね。アラン・アーキンもキム・ベイシンガーもそのつもりでお付き合いしてるんだろうからさ。

 ぼくとしてはアラン・アーキンに生卵を五つ割られて差し出されたスタローンが「こんなもの呑むやつ、いまだにいるのか?」と返しながらも飲み干してしまうシーンは、あまりの定番ギャグに悲しさをおぼえながらも、まあそれしかないだろうなあと苦笑するしかなかったけど。

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