☆光の旅人 K-PAX(2001年 アメリカ 121分)
原題 K-Pax
staff 原作/ジーン・ブルーワー『K-パックス』
監督/イアン・ソフトリー 脚本/チャールズ・リーヴィット
撮影/ジョン・マシーソン 美術/ジョン・ベアード
衣装デザイン/ルイーズ・ミンゲンバック 音楽/エドワード・シェアマー
cast ケヴィン・スペイシー ジェフ・ブリッジス メアリー・マコーマック メラニー・マーレイ
☆K-パックスは星の名前
地球から1000光年離れた惑星のことだ。
で、ある日ひょっこり現れたケヴィン・スペイシーはその星の人間だと主張し、
数々の証言によって精神分析医ジェフ・ブリッジスらの度肝をぬく。
ところが、7月27日にK-パックスに帰ると言いだした頃から、
ケヴィンの過去が見えてくる。
5年前の7月27日にケヴィンが現れたことから、ジェフが調査し始めるからだ。
調査によれば、ケヴィンは妻と娘と3人でニューメキシコ州の農場に住み、
場に勤めるという、ごくありふれたアメリカ人だった。
そこへ流れ者が現れ、妻子を凌辱し、惨殺したんだけど、
追いかけたケヴィンはこの暴漢を殺し、行方をくらまし、
やがてニューヨークの中央駅に現れ、病院へ収容されることになる。
ここで、ぼくたちは「なるほどね~」という物語の全貌が見えてくる。
つまり、
K-pax星人は、魂あるいは光にとても近い存在だということだ。
光である以上、一瞬にして地球上のどこへだって見学に行けるし、
宇宙を旅してきたから、人類の知り得ない天体や惑星について、
地球の天文学者たちよりも遙かに高度な知識を備えている。
しかも、人間嫌いの犬とだって、仲良く会話もできたりする。
けれど、地球人じゃないから、バナナの食べ方は知らない。
だから地球にやってきたとき、
ちょうど心神喪失状態になっていたケヴィンに憑依して、
地球のいろんなものを見たり経験したりしようとしたんだけど、
脳髄はケヴィンのものだから、そこへK-pax星人の魂が上書きされたため、
ときおり、ケヴィンの深層心理が浮き上がってくる。
それらはすべて、
K-pax星における社会情況や心のありように変わって、
しかも、
まったく反対のありさまとなってケヴィンことK-pax星人の口から語られる。
要するに、こういうことだ。
家族という構成を愛していながらもそれを失ってしまった自分には、
もはや社会だの家族だのという単位はいらない、
つまり、K-pax星には、社会も家族も存在しない。
異性を愛する性行為とその結果によって妻と子を得た自分だが、
暴漢によって妻が凌辱され、さらに殺されてしまったことで、
自分がこれまで抱いていた性行為の魅惑は粉々になり、憎悪の対象になった、
つまり、K-pax星人は性行為を嫌悪するが子孫繁栄のために我慢する。
この地球は秩序が崩壊し、いたるところに犯罪が見られるため、
それを縛るための法律が政府によってつぎつぎに出されるが無駄な話だ、
つまり、K-pax星には、犯罪も紊乱も政府もなく、それでも平和だ。
しかし、
さっきもいったように脳髄はケヴィンのものだから、
あいまいな記憶が漂い続けてるんだけど、
それは催眠術によってやや明瞭なものとなってくる。
たとえば、場だ。
つまり、ケヴィンはK-pax星人でありながらも、
地球人のケヴィンとしての記憶を語ってしまうことになるわけだけど、
ケヴィンは、
過去の忌まわしい記憶をすべて洗い流してしまいたいとおもいながらも、
最愛の家族があったという記憶は忘れようにも忘れられず、
それが仕事場の場が象徴となって心の奥に残ってるんだけど、
自分の人生から逃げ出したいという欲求があるものだから、
野菜や果物しか食べられないようになってる。
また、
妻子が惨殺されたときに庭のシャワーの栓が開きっぱなしになっていたことが、
得体の知れない記憶の断片となってて、
そのため、ジェフの家の庭で似たような現象があると、
危険を察知したケヴィンは狂ったように駆け出し始めてしまう。
まあ、そのあたりはモザイクのようにいろいろと登場するんだけど、
ただ、
K-pax星人もいつまでも憑依し続けられるわけではなく、
ウルトラマンの地球滞在時間が3分であるように、
かれらの憑依時間はきっかり5年てことになってる。
だから、K-pax星人は去らないといけない。
こうしたあたりの設定と構成は実に見事で、
この映画はもっと評価されていい。
ちなみに、
この物語には原作があって、
それもシリーズ化されてるらしい。
ケヴィンの演じたProteことRobert Porterが登場してるのかどうかは知らないけど、
ちょっと読んでみたいなと、ほんの一瞬、おもった。